まず驚いたことは、1968年にこれだけの特撮ができていたことです。木星に向けた宇宙船のアームが動き繊細な操作をおこなう。スターウォーズ誕生9年前にキューブリックはやってのけたのです。ルーカスほどのスピードや動きはありませんが、機械類や操作盤など当時見た人は驚愕したでしょう。2001年まで33年前です。2025年の今見ても1968年にこの映画を作ったという驚きしかありません。
難解な映画といわれています。そうですあの「黒壁」が何を意味するのか。この映画は人類の祖先、サルの時代から始まります。サルが群れをなして縄張り争いをしています。そこに「黒壁」が出現します。サルたちは何をしたか。「武器」を発明し敵対する群れを駆逐します。
シーンは切り替わり月に向けた宇宙船の中の描写になります。月に行くことが日常茶飯事になっている状況です。異常な事態がおこります。月になにか不明な物体がある、人類に危機を及ぼす恐れがあると研究者は危惧します。月のその場に行ってみると、あったのは「黒壁」でした。またしても黒壁です。
それから8カ月後、木星に向けた宇宙船の船内の描写に切り替わります。乗組員は5人ですが3人はいわゆる冬眠中で船内では2名が仕事に従事しています。しかも宇宙船を実質動かしているのは人工知能であるHALです。このHALが宇宙船すべてをコントルールしています。
しかしある日HALは暴走します。人間の命令に背くのです。そこで乗組員2名はどうなったか。ラストシーンにあらわれるのはまた「黒壁」です。
「黒壁」はなにを意味するのか。そこにこの映画最大のテーマが隠されています。
サルの時代「武器」を持った時点で「進化」しているのです。「進化」はなぜ必要か、それは生存のためです。生存するためには、戦いに勝たねばならない。つまり人類の「進化」は戦い、戦争の繰り返しを意味するのです。まさに人類は戦争を繰り返し「進化」していきましたよね。それをキューブリックは描写しているのでしょう。
次に月にあらわれた「黒壁」です。人類に危機をおよぼす恐れがあるもの。キューブリックの「予言」を解釈するのならまさに「コロナウイルス」の発生です。人類が「進化」し人間が創りだしてはいけないことに手をだした。この警告は数年前に全世 界で人類が経験したことに直結します。
そして最後のHALの暴走。キューブリックはAIの誕生を1968年には「予言」していたのです。それも人間の知能をはるかに超えるAIの出現を。
その結果どうなったか。最後にまたしても「黒壁」です。人類の「進化」のために作りだしたAIに人間がコントールされる。はたして人類の「進化」はこれほど必要であったのか。今、2025年に再度見て深く考えさせられました。
キューブリックが1968年に「予言」した2001年。その「予言」は戦争の繰り返しはあたりまえのように続き、2001年まで人類は「進化」を止めませんでした。そして2025年。2020年コロナウイルスが世界を席巻し今まさにAIの開発に投資、研究戦争が進められています。
人類はまだ「進化」と「黒壁」が必要でしょうか。充分人類は進化してきたのに。まさにサブタイトルの「a space odyssey」「長い冒険旅行」をしてきたのです。
キューブリックが「予言」したHALの暴走だけは止めないといけません。
キューブリックは人類とはいつまでも「進化」し続ける存在であり、その「進化」に人類が人間をみずから失うことを「長い冒険旅行」と捉えたのです。
1968年のキューブリックの「予言」とおりに人類は生きている。HALが支配する宇宙船の中にあらわれた最後の「黒壁」は人類の「死」を「予言」しています。それでいいのか、今改めて考える最後の時ではないでしょうか。