何度も見た映画のことを深堀りする意味などないかもしれないが、ふとこの映画を見て小津安二郎がよぎった。
1、頻繁に使われる赤
2、ローアングルカメラ
これらはあくまでも偶然ではあるが、上記1は「シンドラーのリスト」でも印象深い。この映画では、エリオットがチェーンソーの刃で指を切って地が出るシーンからやたらと赤が目に付く。花の赤、赤いサングラス、そして極めつけは最後、エリオットが来ているパーカーの赤。小津安二郎のカラー作品にも必ず印象的な赤が使われている。
それは子ども目線を意識したローアングルも同じだ。低い位置からのカメラは子供を大人っぽく見せて、母親以外の大人の足元しか見せないシーンとからまりあう。その中に鍵の男が頻繁に登場するが、スピルバーグ曰く「大人になった自分」を鍵の男に重ねているという。
E.T.がエリオットに「一緒に行こう」と誘うのは、自分の体から発する命の赤いサインとエリオットの赤いパーカーが示すように、ふたりが重なり合う存在となったからだろうか。「未知との遭遇」で主人公は宇宙へ旅立つが、エリオットは行かない。
お互いが違う世界で生きることを決意するふたりは血の通った生命体であることを確信して終わる。ラストシーンのエリオットの少し大人びた表情は彼の強い意思を示している。