『未知との遭遇』では『ピノキオ』が、『E.T.』では『ピーターパン』が語られる。前者は“星に願いを”で、後者は少年の心、復活、そして空を飛ぶ、などの共通点を見出せる。本作はディズニー制作ではないディズニー映画と例えられたほどで、家族みんなで楽しめる映画として、世界中で大絶賛された。子供には夢を、そして生き物を大切にする気持ちを、大人には子供の心を取り戻す手助けをしてくれた。スピルバーグ映画を象徴する、初期の名作だ。
主人公のエリオット(ヘンリー・トーマス)には、少年時代のスピルバーグ自身の境遇が反映されている。父親の不在、のけ者にされている孤独、仮病…。そんな少年が、守るべき存在と出逢うことによって、成長していく物語だ。
E.T.の造形はグロテスクで、見慣れるまでに時間がかかる。しかし、交流を重ねていくうちに、愛おしい存在にまで気持ちが変化していく。まず、知的な異星人であった。エリオットとE.T.のコンタクトは、物まねから始まる。同じ身振り手振りをすることによって、敵対心がないことを伝える。とても素晴らしい発想だ。そして異星人が見知らぬ地で生きていくには、誰かの手助けが必要だ。大人たちはどうやら、研究材料にしか見ていないようだ。何とかして助けてあげたいという気持ちが芽生える。それは、カエル救出シーンが象徴していて、これまた巧い演出だ。ここで『静かなる男』の模倣をエリオットがするお遊びも面白い。E.T.とエリオットは、共鳴しているのだ。二人の心は、既に通じ合っている。ちなみに、スピルバーグ自身も、子供の頃実際にカエルを解剖実験から逃がしたことがある。
本作は子供たちとE.T.目線で描かれているので、母親以外の大人たちは、しばらく顔を画面には見せない。これがまた不気味に感じられて、現時点では大人たちは、子供には理解できない、恐い存在であることが表現されている。夜E.T.を追いかけるシーンでは、キーホルダーの音と、懐中電灯の光だけが印象に残る。エリオットの家に侵入してくる時は宇宙服姿で、こっちの方が余程宇宙人ぽい。
妹のガーティ(ドリュー・バリモアが可愛い)が母メアリー(ディー・ウォレス)にE.T.を紹介しようとしても、全然視界に入って来ないという演出には笑った。こんな愉快なシーンも結構多くて楽しい。E.T.と子供たちの初遭遇での叫び合い、人形に紛れるE.T.、ハロウィンでの仮装…。ハロウィンといえば、あのキャラクターの登場に、ニンマリ。これを観たジョージ・ルーカスも気に入ってくれたよーだ。
E.T.は、地球人にはない能力を持っている。それは子供にとっては魔法だ。そして、有名な自転車によるチェイスシーン。アンブリンのマークにもなっているので、もうネタバレでもなんでもないと思うが、粘りに粘って、ギリギリでそれを見せる憎らしさ。観客はその能力を知っているので、そのシーンを心待ちにしている。前半の月と、後半の太陽。この対比も美しく、拍手喝采となる。そして感動の涙…。半世紀近くたっても、良いものは、いつまでも良い。
続編を作ってほしいという声が多かったが、スピルバーグはそれに応えない。私もそれが正解だと思う。これ以上の傑作は、スピルバーグ自身も作れないことが、解っていたのだ。
1982年キネマ旬報ベストテン第1位。同読者選出第1位。ついでに私のベストテンでも第1位。