"GO"
"Stay"
午前十時の映画祭15にて鑑賞。
地球に取り残された地球外生命体と、10歳の少年との交流を描いたSFファンタジー。
言うまでもなく、スティーヴン・スピルバーグ監督の代表作のひとつである。
「フェイブルマンズ」(2023)を観て以来、最もチェックしないといけないと思っていた作品。しかしながら、自分はどちらかというと「プライベート・ライアン」や「シンドラーのリスト」、「インディ・ジョーンズ」の方が管轄だと思っているフシがあり、SF系のスピルバーグ作品はあまり手を出していない。本作も25年前に一度観たきりで、「フェイブルマンズ」鑑賞後、エラそうに「E.T.は重要だ」などと宣いながらずっとほっぽらかしてきた。
そして2年の月日が流れ去り、ようやく残課題に取り組むことに。「フェイブルマンズ」の話を持ち出したことから「あっ...」と思われただろうが、気にしたのは「地平線」である。
「地平線が上にくれば画は面白くなる。下にきても画は面白い。しかし真ん中に持ってくるとその画はつまらなくなる」と、サミュエル・フェイブルマン少年はジョン・フォードから教えられた。ではどの作品が地平線の位置によって最も出来を左右されるかと言われれば、当然「E.T.」だろう。
結論、相当地平線の位置には神経を使っていたように思える。人間側の主人公はエリオットを含む子供達であるため、スピルバーグ監督は撮影時に目線を極端に下げた。子供目線を表現する目的でである。となれば、基本的に地平線の位置は高くなる。そしてE.T.も含め子供達の脅威となる存在の大人達は下半身しか見えない。そして見上げれば太陽を背にした影として顔がほとんど見えない。この時地平線は極端に下がる。そして(ヒッチコック「めまい」を意識したらしいが)節目で丘の森から街を見下ろすシーンが入る。見下ろすからまた地平線は高い。そして閑静な住宅街にも関わらず、エリオットの家の庭の草は異様に背丈が大きいから自然と目線が上にいく。この地平線の上げ下げで目線を巧みに操り、子供目線の大人の怖さがよく伝わってくるのである。
「フェイブルマンズ」ネタでいうともうひとつ、やはりエリオットの部屋には鉄道模型があった。スピルバーグ監督自身と同じくエリオットの両親も別居中である。E.T.の造形は10歳で両親の離婚を経験したスピルバーグ監督の想像上の友達だというから、SFとはいえ監督自身の原風景なのだろう。
自分はエリオットほど柔軟ではないので、E.T.は今でも不気味だと感じてしまう。なので序盤はあまり入り込めなかったが、最初に自転車で空を飛んだあたりから徐々に良さが分かってきた。「未知との遭遇」(1977)もそうだが、それまで侵略者としてしか描かれなかった地球外生命体をひとつの生物として再定義し、人類とのコミュニケーションに転換した点に、SFにおけるスピルバーグ監督の功績はある。