血煙高田の馬場(1937)

ちけむりたかだのばば|----|----

血煙高田の馬場(1937)

レビューの数

27

平均評点

76.6(81人)

観たひと

114

観たいひと

5

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 時代劇 / アクション
製作国 日本
製作年 1937
公開年月日 1937/12/31
上映時間 57分
製作会社 日活(京都撮影所)
配給
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/スタンダード
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督マキノ正博 
稲垣浩 
脚本牧陶三 
原作牧陶三 
撮影三井六三郎 
石本秀雄 
音楽高橋半 
録音海原幸夫 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演阪東妻三郎 中山安兵衛
市川百々之助 大工・熊公
瀬川路三郎 中津川祐範
香川良介 菅野六郎左衛門
尾上華丈 村上庄左衛門
原駒子 熊公女房・お才
志村喬 楽々亭貞山
市川正二郎 若党・武助
磯川勝彦 伊勢屋の主人
藤川三之祐 堀部彌兵衛
久米譲 小野寺十内
片岡松燕 松平左京太夫
仁礼功太郎 村上次郎太
伊庭駿三郎 天眼先生
湊武男 乾分・八五郎
葉山富之輔 河童勘左衛門
石川秀道 仲間・甲
志茂山剛 仲間・乙
大倉多一郎 酒屋の亭主
若松文男 鐘鬼の庄太郎
加藤弘郎 弥八
島田照夫 羽賀甚介
瀬戸一司 乾分・清吉

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

赤穂浪士・堀部安兵衛の若い頃の逸話を元に、牧陶三(マキノ正博)が書き下ろした痛快時代劇。監督はマキノ正博と稲垣浩の共同。出演は阪東妻三郎、市川百々之助、香川良介ほか。(7巻)戦後1952年に51分の短縮版が「決闘高田の馬場」に改題の上公開されている。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2023/09/10

2023/09/11

91点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル/PC 


これは面白い。というか傑作だ。

37年に公開された「血煙高田の馬場」という映画を戦後の52年になって「決闘高田の馬場」として短縮再公開されたものらしいが、短縮版といってもオリジナル57分を51分にしたものらしいので、どこをどう短縮したものかよく判らない。先日観た「堀部安兵衛」という映画の前半部に似ている気もするがその辺のところもゼンゼン判らない。ただこの短い作品の後半、安兵衛の叔父が逆恨みの果たし合いを申し込まれたあたりからフィルムの回転スピードがグングン上がり、突如として一気呵成に走りはじめた安兵衛が八丁堀から高田馬場まで駆け抜け、対手とその助っ人計18人を文字通り一気に斬り伏せるさまは阿鼻叫喚、言語道断の殺陣であれよあれよと魅せられてしまう。この空前絶後のスピード感は恐ろしくさえある。なんでもジャズダンスのリズムという説もあるが……。残念ながら安兵衛が到着する前に叔父は斬られてしまいハッピーエンドとはならないが、映画はそのまま終了。このような速度でのエンドマークもまた私は知らないのである。

2021/07/25

2023/09/03

76点

映画館/東京都/神保町シアター 


阪妻はやはりスター

ネタバレ

時間も短め、話も複雑でもなく、娯楽としてさらっと見れる。

最後の走るシーンの疾走感、斬新さ。
阪妻の殺陣は、蝶のように舞い、演舞のように斬っていく。トーキーで声が高いとかで人気が下がったとか言われるが、阪妻はスター性は、堀部安兵衛の豪快キャラからすごく感じられる。

飲んだくれでも、暗闇でも圧倒的に強い堀部安兵衛(阪妻)、唯一の親戚であるお堅い叔父上には頭が上がらない。
叔父上は、殿の御前での試合後、負けた側から因縁つけられ決闘となる。

最後のシーン皆が盛り上がる中、叔父の死に立ち尽くす姿が対比的で、より安兵衛の悲しさが際立つ。

2010/02/02

2023/06/17

95点

選択しない 


躍動するバンツマがとにかく素晴らしい

 元元は「血煙高田の馬場」として1937年に製作・公開されたものを、戦後の1952年に「決闘高田の馬場」と改題し再公開したものです。その際にオリジナルが57分だつたのを51分に短縮してをります。中途半端な短縮ですね。監督はマキノ正博。同時に片岡千恵蔵主演の「自来也」も公開してゐて、早撮り監督と思はれるのを心配して、稲垣浩の名を借りたさうです。故に稲垣浩は名前だけ。
 原作・脚色の牧陶三とは、マキノ監督のペンネーム。史実に基づく物語なのに、「原作」を名乗つて良いんですかね。音楽は高橋半であります。

 江戸・八丁堀で長屋暮しをしてゐる浪人者・中山安兵衛(阪東妻三郎)は、呑兵衛で喧嘩が大好きの暴れ者ですが、その気風の良さから長屋では先生と呼ばれてゐます。喧嘩の仲裁をしたかと思へば、夫婦喧嘩も解決し、偉さうに説教までしてゐます。ところが其処へ現れたのが、安兵衛が唯一頭が上らぬ人物・叔父の菅野六郎左衛門(香川良介)で、普段の生活態度に関して説教されてしまふ。これも叔父一人甥一人で他に身寄りがない関係だからこそ心配しての事。

 サテ菅野は恒例の御前試合で、若いライヷル村上庄左衛門(尾上華丈)に勝利しますが、村上は逆恨みから果し合ひを申し込みます。場所は高田の馬場。菅野はこの件を安兵衛に知らせに行きますが、安兵衛は飲んだくれてまだ長屋に帰つてゐません。帰宅を待つ菅野でしたが、果し合ひの時間が迫り、書置きを長屋の住人に託して出かけるのです。その眼には涙が光つてゐました。

 菅野と入れ違ふやうに漸く帰つて来た安兵衛は、書置きを渡されますが「どうせ説教だ」と寝てしまふ。長屋の住人たちがせかし、渋渋読み始めます。すると事の重大さに気付いた安兵衛、決戦場の高田の馬場へ走り出す!

 元禄七年に起きた「高田馬場の決闘」(映画では「高田の馬場」で「の」が入る)。お馴染みの決戦をバンツマ×マキノの黄金コムビで映画化しました。日活の惹句(?)は「巨星・阪妻が待望の堀部安兵衛!砂塵を蹴って宙を飛ぶ血戰・高田の馬場に展開する一世一代の剣陣一瞬十八人斬の壮絶!」。

 兎に角バンツマの中山安兵衛(後の堀部安兵衛、忠臣蔵の四十七士の一人としても有名)が素晴らしい。向ふところ敵なしの豪快なキャラクタアながら、香川良介の叔父には頭が上らないと云ふのがポイント。説教された後、叔父のセリフを一字一句繰り返すところなんかは可愛いではありませんか。
 その叔父の書置きを読む前と読んだ直後の変貌ぶりも注目。まさに「スイッチが入つた」状態になり、八丁堀から高田の馬場まで全速力で駈け出す高揚感! 走る走る! 長屋の連中も幟を掲げて安兵衛を追つて走る!

 漸く辿り着いた現場では、既に叔父は傷ついてゐます。卑怯なる村上庄左衛門は、予想通り助太刀を多数手配してゐたのです。相手の頭数を勘定し、十八人だなと確認してから戦闘開始! ここからバンツマの独り舞台、リヅムに乗つて踊るやうに小気味よく相手を斬りまくります。マキノ監督がこの動きに取り入れたのは、何とジャズダンス。成程現在の目で見ても眞に斬新な動きで、観てゐるだけでウキウキしてきます。

 バンツマを取り巻く長屋の人々も魅力的。呑み仲間ゲンテキの団徳麿、講釈師の志村喬(名調子)、大工の熊公の市川百々之助、その女房で夫婦喧嘩ばかりしてゐる原駒子、「のり」売りのお勘婆さん・滝沢静子等等......

 後に義父となる堀部弥兵衛(藤川三之祐)と、娘のお妙(大倉千代子)も忘れ難いですな。お妙が花婿探しに街へ出るなんて、さう云ふ行動は当時珍しくなかつたのでせうか。弥兵衛が偶々飲んだくれてゐる安兵衛を見かけ、「娘の選んだ男なら信用するが、あゝ云ふのだけはダメだ」みたいな事を呟いてゐたら、お妙が選んだのがまさに安兵衛だつたのは可笑しかつた。
 安兵衛が出陣する際に、お妙が自らのしごき帯を提供するのが印象的でした。

 一時間足らずの間に、面白い映画の要素を詰め込んだ傑作と存じます。チャンバラつてこんなに面白いんだ、と改めて思はせます。これをマキノ監督は僅か一週間で撮り上げてしまつたと云ふから驚きです。時間とカネをかけた割には凡作......と云ふのが山ほどある中、日本映画史上にキラリと光る一本ではないでせうか。

2023/04/09

2023/05/15

80点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル 


飲んだくれては喧嘩に明け暮れる、浪人の中山安兵衛(堀部安兵衛)。安兵衛演じる阪東妻三郎が普通に男前で、やたらと明るく見ているだけで楽しくなる。が、酔っ払っても剣の腕は確かで、陽気に刺客を倒していく様が痛快。そして極め付けは、おじの危急に駆け付けるシーンと、その後の大立ち回りである。前者は安兵衛が笑ってしまうほどに速く、後を追う長屋の住人たちに混ざりたいくらい。後者は軽快な動きが素晴らしく、あまりの小気味好さに惚れ惚れする。全体的なテンポは勿論、1時間に満たないコンパクトさも良い感じ。戦後に「決闘高田の馬場」に改題。

2023/01/31

2023/01/31

75点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/購入/PC 


阪妻の殺陣の動き。

一時間弱の尺もあるがテンポ良く最期まで飽きさせない。高田馬場に向かって走る阪妻を捉えるカメラが鋭く疾走感がある。ただ、前に観た時より短い印象。
阪妻の殺陣が素早く、ジャズのダンスの動きを取り入れたとの事。凄い。どうでもいいけど自分の観る戦前の時代劇の大半に志村喬が出ている。つくづく長い芸歴だと感心。

2022/07/01

2022/07/01

60点

VOD/YouTube 


ダイナミック、スピード感

 ダイナミックでオーバーな芝居が後年の黒澤明を、クライマックスの猛ダッシュで阪妻が決闘場へ向かう様子を幾多もの横移動のカットで見せるスピード感ある場面は沢島忠監督を思わせる。見せ場のチャンバラはいかにも早回しな感じで笑えてくる。