近未来のロンドンを舞台に、何不自由無い若者達によって繰り返される退屈しのぎの暴力、レイプを描いた前半に戦慄。「雨に唄えば」を口づさみながらの暴力シーンは喜びに満ち溢れた表現としてゾッとする。だが、嫌悪しながらも目が離せない。観客としての自分も、どこか楽しんでいるのだ。これもキューブリックの狙いだとしたら、人間の本質を承知しての事だろう。こういう人間の本能を国家が管理したらどうなるかというのが後半で、マルコム・マクダウェルがすっかり人畜無害になり、今まで怨みを持った者達から復讐されていく。その様子が可哀想ではあるが観客の自分には痛快だった。これもキューブリックの狙いだろう。その後、再び元に戻り暴力に快楽を求めていく暗示で終わるが、なんとも自分も含めて人間の嫌な面を見せつけられて暗澹たる気持ちで劇場を後にした。恐るべし、キューブリック。