改めてリドリー・スコット監督のパワーに驚く。製作当時50代なかば。寡作ながら「エイリアン」「ブレードランナー」と快作を放ち、油が乗り切っている。
平凡な主婦のテルマと友人のルイーズの二人が週末にささやかなドライブ旅行に出るが、それが大事件に発展し、いつしか凶悪犯として指名手配されてしまう。その展開があざやかなロードムービーだ。
おもしろいのはどちらかというと人から指示されなきゃ動けないタイプのテルマがどんどん大胆になり、姉貴分だったルイーズとの立場が逆転していくことだ。イケイケ姉ちゃんに見えたルイーズはむしろ冷静なところを見せる。
作品ではテルマが1956年生れ、ルイーズが1955年生れの設定だから、共に30代なかばだ。テルマを演じるジーナ・デイビスは1957年生れだから、実年齢に近いが、ルイーズを演じるスーザン・サランドンは1946年生れと実年齢の方が10歳近く上だ。若く見せることも演技力のひとつだろう。
平凡な主婦生活に飽き飽きしていたテルマがはめをはずし、夕食のレストランバーで知り合った男にあやうくレイプされそうになる。テルマが護身用に持って来たピストルをルイーズが男に突きつけ、難を逃れるが、男の捨てぜりふに逆上したルイーズは男を撃ち殺してしまう。レイプされそうになったのだから警察に行こうというテルマを無視して、ルイーズは車を走らせる。1990年代初頭という時代背景のせいか、アメリカ中南部という土地柄のせいかわからぬが、レイプで男を訴えるのは難しいようだ。まして殺してしまっている。楽しいはずの週末旅行が一転、逃避行となる。
道中、知り合った若者(若き日のブラッド・ピットの怪演が見もの)から金を盗まれたり、スーパーマーケットで強盗したり、警官をパトカーのトランクに閉じ込めたりと、遊び感覚で犯行を重ね、ついにFBIのお出ましとなる。
ボニー&クライドの女性二人版でもあり、ラストのスローモーションは「明日に向かって撃て!」をほうふつさせた。