チャップリンの独裁者

ちゃっぷりんのどくさいしゃ|The Great Dictator|The Great Dictator

チャップリンの独裁者

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レビューの数

115

平均評点

81.9(569人)

観たひと

902

観たいひと

81

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル コメディ / ドラマ
製作国 アメリカ
製作年 1940
公開年月日 1960/10/22
上映時間 126分
製作会社 ユナイテッド・アーチスツ映画
配給 東和
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

チャールズ・チャップリンの3大名作の1つといわれる「偉大なる独裁者」(原題)がついに日本で公開される。1940年、ヒットラーのナチスがドイツで、ムッソリーニのファシストがイタリアで、それぞれ独裁をなしとげ、その黒い手を世界にのばし始めた頃、そのファシスト独裁者を痛烈に批判し、全世界の人々に自由のために闘うことを呼びかけようと作られたのが、この作品であった。またチャップリンが始めて完全なトーキーを使った作品であり、山高帽・ドタ靴・ステッキ・アヒル歩きのチャップリン・スタイルの最後の作品である。例によって、製作・脚本・台詞・監督・主演はチャップリン自身。撮影はカール・ストラッスとローランド・トセロー。音楽監督はメレディス・ウィルソン。出演はチャップリンがトメニアの独裁者ヒンケルとユダヤ人の床屋との2役に扮するが、バクテリアの独裁者ナパロニにジャック・オーキー、ユダヤ人の美少女ハンナにポーレット・ゴダードが扮しし、そのほか、レジナルド・ガーディナー、ヘンリー・ダニエル、ビリー・ギルバートらの出演。チャップリンの永年の共演者チェスター・コンクリも姿を見せる。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

1918年――第1次世界大戦の末期、トメニア軍陣地では1兵卒であるユダヤ人の床屋(チャーリー・チャップリン)が奮戦していた。しかし、敗色は濃く、前線では敗退がつづき、上層部ではひそかに平和交渉が始められていた。何も知らぬ将兵は勝利を信じて戦った。トメニア軍の空軍将校シュルツ(レジナルド・ガーディナー)は敵に包囲され、危ないところを床屋に救われた。傷ついたシュルツを助けて2人はトメニアに命からがら逃げかえったが、その時すでに戦争には負けていた。床屋は戦傷のためすべての記憶を失い病院に収容された。数年の年月が流れ、トメニアに政変が起こった。その結果ヒンケル(チャーリー・チャップリン)という独裁者が現われ、国民の熱狂的な歓迎を受けた。彼はアーリアン民族の世界制覇を夢み、他民族ことにユダヤ人の迫害を行った。ユダヤ人街のジャッケル(モーリス・モスコヴィッチ)の家族やハンナ(ポーレット・ゴダート)らは、不安な毎日を送っていた。床屋は政変のあったのも知らず、このユダヤ人街の自分の店に戻って来ていた。突撃隊の隊員はユダヤ人街に来ては乱暴した。ハンナはくやしがった。臆病者の床屋も彼女と協力して彼等に抵抗した。ある時、突撃隊に逮捕されかかった床屋を、通りかかった今は突撃隊指揮官になったシュルツが救った。おかげでユダヤ人街にも平和な日々が戻った。ヒンケルは自分の独裁政治をかくすため、国民の関心を外に向けようとオスタリッチ進駐を考え、軍資金をユダヤ人財閥に借款を申し入れたが拒絶された。ユダヤ人迫害が再開された。シュルツはヒンケルの政策の非を進言し、そのせいで失脚した。彼はジャッケルの家に隠れていたが、突撃隊に発見され床屋とともに逮捕された。床屋を慕うハンナは身の危険をさけるためジャッケル氏らとオスタリッチに逃げた。独裁者ナパロニ(ジャック・オーキー)指揮のバクテリア軍もオスタリッチに侵入した。ヒンケルはバクテリア軍を撤退させようと、ナパロニを招き、お互いにオスタリッチの主権を尊重する誓約書に署名させ、撤退に成功した。そのスキに自軍進駐の準備をした。床屋とシュルツは軍服を盗んで収容所を脱出した。国境で進駐準備の軍隊がヒンケルと間違え、進軍を開始した。その頃、ヒンケルは鴨狩中を床屋と間違えられ、警備兵に逮捕された。数万のヒンケル軍はオスタリッチに到着、床屋は演説をしなければならなくなった。壇上に立った床屋は狼狽したが、気持ちを落着けて話しはじめた。“独裁者の奴隷になるな!民主主義を守れ!”彼の声はしだいに熱をおび自由と平和を守ろうと叫んだ。それはオスタリッチのハンナたちにも語りかけているようだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2020年7月下旬号

読者の映画評:「グレート・ウォー」吉田伴内/「チャップリンの独裁者」原田隆司/「よこがお」関根和俊

2011年1月上旬号

午前十時の映画祭:「ライムライト」「チャップリンの独裁者」「フォロー・ミー」

1973年9月上旬号

グラビア:「チャップリンの独裁者」

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分析研究:チャップリンの独裁者

特別対談 「チャップリンの独裁者」研究2:民衆的な政治人間としてのチャップリン

1960年12月下旬号

「チャップリンの独裁者」ヒットの要因:各界アンケート

1960年11月下旬号

外国映画批評:チャップリンの独裁者

1960年10月上旬秋の特別号

外国映画紹介:チャップリンの独裁者

シナリオ:チャップリンの独裁者

1960年9月下旬号

新作グラビア:チャップリンの独裁者

2025/09/04

2025/09/28

100点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 
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80年以上前の言葉は今も生きている

ネタバレ

トメニア国のユダヤ人理髪師が、第一世界大戦後に政権を取った独裁者ヒンケルのユダヤ人抑圧に遭いながらも自由を追う中で思わぬところで演説することになる。
1940年の作品(内容から言って当然かもしれないが日本公開は戦後の1960年)。有名すぎるぐらい有名なチャップリンの傑作。
中高生のころ毎週楽しみだった淀川長治さんのラジオ番組※で聞いた記憶によれば、チャップリンが本作品を撮るきっかけになったのは「(容貌が)ヒトラーに似てますね」と言われたからだそう。当時といえば、ドイツで政権を取ったヒトラーがユダヤ人を迫害し、ポーランドへの侵攻を皮切りにヨーロッパ各地へ手を伸ばそうとしていたころだ。その“独裁者”のありさまを皮肉って笑いの中に自身の思いを込めている。
巨大な地球儀の風船を文字通り手玉にとって酔いしれる独裁者、突然その風船が破裂して野望の果てを暗示する場面や容貌がそっくりで独裁者と勘違いされたユダヤ人理髪師が大観衆の前で演説するラストが有名で、以前見たときの僕の記憶にもこの2つの場面が強烈に残っている。
今回、上とは別の場面が記憶に残った。
隣国オストリッチに侵攻をもくろむヒンケルだが、先にバクテリア国がオストリッチ国境線に来たため、同国の独裁者ナパロニと会談する。オストリッチ不可侵を約した協定を結ぶことになるが、ナパロニの軍の撤退が先か、ヒンケルが協定に署名するのが先かで両者が大いにもめる。そのときヒンケルに側近がささやく。“先に協定に署名してください。どうせただの紙きれです。彼らが引き上げたら侵攻しましょう”。
最近、似たような話を聞かなかったか。協定を結んだのに反故(ほご)にして侵攻し、今も攻撃を仕掛ける大国を思い出す。
21世紀になっても世界は全然変わっていないじゃないか。為政者は世界をあの風船のようにもてあそびたいのか。そんな思いにとらわれた。
そんなとき、最後の演説が訴える。
「国の違いを超え、欲望を捨て、憎しみを捨て、寛容さを持って自由な世界のために闘おう。理性のある世界、科学と進歩が全人類を幸せにする世界を目指そう」※2
80年以上前の言葉は今も生きている。

※番組名は「淀川長治ラジオ名画劇場」(TBS 放送時間は時期によって違いがあるみたいですが、僕が聞いていたときは月曜日の20時~21時でした。)
※2 拙訳。原文は下記を参照しました。
https://www.charliechaplin.com/en/articles/29-the-final-speech-from-the-great-dictator-
引用部分は演説の最後のほう。
「Let us fight to free the world - to do away with national barriers - to do away with greed, with hate and intolerance. Let us fight for a world of reason, a world where science and progress will lead to all men’s happiness.」
このあと、「Soldiers! in the name of democracy, let us all unite!」(戦士たちよ、民主主義の名の下(もと)に一つになろう)と続いて演説が終わり、大歓声が上がります。

2025/08/10

2025/08/10

79点

その他/録画BSプレミアム 
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ヒトラーに似ているチャップリン

 ヒトラーをもじったヒンケル(チャールズ・チャップリン)を徹底的に皮肉り、迫害を受けるユダヤ人の床屋(チャールズ・チャップリン)と交錯する話。

 ヒンケルが、地球儀をもてあそぶ所は、美しくも皮肉たっぷりで絶品かと。また、最後、ヒンケルに成り代わった床屋の演説で、反戦と平和と多様性を訴えるのが圧巻。

 床屋のブラームスの音楽に乗せたコントも凄い。

 チャップリンは、ヒトラーを批判するのはいいが、戦争に反対するのは、共産主義と見られ、その後、アメリカから追放されることになる。命がけで作ったとも言える映画と。

 チャップリンのヒンケルはヒトラーに似ている、ヒロインのポーレット・ゴダードが美しい。ヒロインとしては、彼女が一番では。

 改めて観ると、今でも色あせない主張かと。 

2025/04/10

2025/05/30

100点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕

チャップリンが長い間入院していた病院をこっそり抜け出して、久しぶりに自分の家に戻ってきてドアを開けると...あれは何匹だったかな、10匹ちょっとくらいだったかなぁ...、中から次々と猫が飛び出してきて、大猫、子猫、白猫、黒猫、モタモタしているのも居れば、小回りを効かせるのもいて、猫背を更に膨らませて怒っているのもいる。
芸で見せるギャグ満載の中で、唯一、動物を使ったギャグだった。録画を巻き戻して何回も観てしまった。

平和な小庶民の微笑ましい生活をベースにした笑いは「街の灯」や多くの短編でチャップリンの独壇場になっているが、この映画では毒のある人間像を風刺するギャグが冴える。
独裁者を暗殺する実行者を「民主的に」選抜する場面が可笑しい。
仲間5人のうちから実行者を選ぶことにする。「選ばれた者の犠牲的な行為は讃えられるべきである」とリーダーが説くと、チャップリンを含む仲間たちはみんなもっともらしく深くうなずく。でも、自分だけは命を失いたくない思いも強い。5人の仲間はくじ引きをする。コインの入っているケーキを引き当てた者が暗殺実行者に選ばれることにする。
早々とチャップリンがコイン入りのケーキを引き当てるが、咄嗟にさり気なく左隣の仲間のケーキと入れ替える。ところが右隣の男もコインを引き当てており、素早くチャップリンのケーキとすり替える。チャップリンにしてみれば、せっかく左隣へ移し替えてホッと安心したのも束の間、間髪を入れず右隣からコイン入りを差し入れられて驚愕に変わる。こうして、さり気なく仲間の間でケーキの入れ替えが繰り返されるうちにチャップリンの所にコイン入りが集まって、その都度、気取られぬようにそっとコインをケーキと一緒に頬張る。何とか飲み込もうと試みるが巧くいかない。口の中にどんどんコインが増えて、しゃっくりをするとその振動でチャラチャラと音がする。
建前としては選ばれることの崇高さを賛美しながら、本音は自分だけは選ばれたくない。本音と建前のズレを映像で見せて、その狭間に起きる自己欺瞞を笑いの素材にしたアイデアはお見事。
ところが、コントはこの繰り返しだけで終わらない。笑いのギャグが新たな次元に転調する。
最初に自己犠牲の尊さを説明したリーダーだけは正直に、自分の手元にあったケーキに(実際は隣の男によって差し替えられていた物なのだが)、コイン入りを引き当てたことを仲間たちに告げる。
そこへこれらのケーキを運んだヒロイン(ポーレット・ゴダート)が飛んできて、「馬鹿馬鹿しいことと思って、全部のケーキにコインを入れたわ」と暴露する。みんなが驚いている隙にチャップリンは口から何枚ものコインを吐き出して周りを横目で窺いながら素早くポケットに仕舞い込む。
これでもか、これでもかと、新たなギャグへの転調に笑ってしまいます。
いじましく小狡い男たちを笑いの素材にしているブラックコメディが見事だ。

然も、このコントに使われたコインを忍ばせたケーキというのはフランスのガレット・デ・ロワの伝統をもじっているのも念が入っている。ガレット・デ・ロワはフランスの正月に食べるケーキで、切り分けられたケーキに「フェーブ」(陶器製の置物)が入っていたら幸福が訪れるというならわしがある。映画は「幸福探し」の故事を「暗殺者探し」に差し替えて、見事なコントに仕上げる。

完全な防弾着を発明したというので、それを着用した被験者を独裁者が気軽に撃った一発でドタッと倒れて即死する。シンプルかつブラックなショートコントもある。

制作当時のリアルタイムでのヒットラー批判は多くの方が語っているようにチャップリンはすごいことをやってのけたと驚きを超えて感動すらある。ナチのロゴマークである鉤十字がバツ印になっているだけでも大変な風刺ではないか(バツでなくクルスにも見えるところが、十字軍旗との連想もあってスレスレの綱渡りでもある)。確かに最後の演説にはお仕着せがましいとか賛否両論あるのは分かる。私の場合、プロパガンダに走った作品は、この一点において減点してきたのだが、この映画での演説はそんな批評を寄せ付けない肉薄したものがある。
現役の政治家(それも独裁者)を批判する映画を作るのは、我が身の安全を考えれば簡単にできることではない。ときには命がけだ。

2025/05/10

2025/05/27

80点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
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神の声

◎ 5回目の鑑賞だが、チャップリン作品は久しぶり。名シーンの数々と、ラストの大演説がマッチしているとみるかどうかは人による。
◎ ラジオから流れるチャップリンの演説を聞くポーレット・ゴダードの表情は、神の声を聞くマリアのよう。

2025/04/27

2025/04/27

82点

選択しない 
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独裁政治への痛烈な批判。戦争や独裁の愚かさがよくわかる。ラストシーンの演説の内容は今でも通じる。

民主主義、自由を全肯定する素晴らしい作品でした。印象的なシーンも多い。風船の地球儀と戯れるシーン、床屋の椅子をどんどん上げていくシーン、コインをお菓子に入れたルーレットのシーン、動きがコミカルで見事としか言いようがない。

この映画がww2の前に作られていたことに驚愕。差別にノーを突きつけるチャップリンはまさにアーティストだった(^^;;

2025/04/10

2025/04/11

90点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
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また観た

高校時代にラストの英文を暗唱させられた。いまだにところどころ覚えている。あの時代にこれを製作した勇気に感動する。それだけでなく喜劇としても風刺としても素晴らしい。