中学生の頃、淀川長治さんが解説をしていた日曜洋画劇場が初見。この時とても感動して当時のマイベストムービーとなり、ぴあで名画座にかかるのを調べては何度も劇場に足を運んだ。自分にとって確実に感動を得られるという保証があったからだろう。
何に魅かれたか?愛に友情に生き方に不器用な男たちに独特な美学を感じたんだと思う。
どちらかと言うとマックスに自分を被せて見ていたかも知れない。刑務所で臭いメシを食ってきたくらいだから人間不信になる体験があったのだろう。人を容易には信用しない、そんな周囲にトゲトゲしいマックスがライオンを唯一心許せる友人と自分が認めるようになる。「最後の一本のマッチをくれたから」。こんな何気なさをすくいとる繊細さが心のどこかにある。そしてこの時交わした友情を様々な障害も乗り越えながら深めていくさまを丁寧に丁寧に描いているところに大いに心動かされた。
強い絆で結ばれた二人の男。マックス・ミラン(マックス)とフランシス・ライオネル(ライオン)。キャラクターとしては、どちらかと言えばアル・パチーノ演じるライオンの方がわかりやすい。そして自分の懐を狙う他人に目を光らせたかと思えば缶ビールをあおって周りを気にせずゲップをする超偏屈で、粗野でそれでいて繊細なマックスを、プライベートではイリノイ大学出身、俳優業の果てには小説家にもなったインテリ、ジーン・ハックマンが演技の程を振り絞って見せる。いいではないか。感動しないわけにはいかない。
ヴィルモス・ジグモンドの撮影もたまらなくいい。だだっ広い芝の斜面の俯瞰ショット。その前を横切る街道を挟んでじっくりと二人の出会いを見せる冒頭から引き込まれる。風で飛んでいくあの根無草がいい。そして内心おそるおそるか?渋々か?苦虫を噛み潰したような態度と表情でライオンにマッチの火を借りるに至るやりとりから旅を重ねていくショット。それにあのとぼけたような劇伴が被さるオープニングは何度見てもいい。
映画におけるエンターテインメント性が極端に肥大化した現代からするとこの作品などは小品なのだろう。しかし当時にしてみると小品には変わらないがこれは実に贅沢なキャスティングだった。久しぶりにスクリーンで観賞してしみじみと「昔はいい映画があったな」と懐かしく当時を振り返る時間が持てたことに感謝の気持ちを捧げたい。