とりあえず、テレビの前に座って動画をスタートさせると、4時間半超という数字が目に入りました。このところキネ旬ベストテン作品を見ていると、名作とは長い映画のことなのかと思ってしまいます(笑)。この作品は9つのパートに分かれていて、登場人物が交錯していく、群像劇スタイルになっていました。家族を殺された2人の男女が出会い、新たな殺人につながっていくという悲劇が語られています。テーマ的には第8話あたりの題にも見られるように、復讐が復讐を呼んでいく物語です。そして、新たな生命の誕生で、未来へつながる明るさや輪廻を示していました。
山崎ハコさんが感動的です。しみじみと素晴らしいパフォーマンスでした。廃墟の街の場面では、雰囲気がぴったり合っています。他にもたくさんの俳優さんたちが出てきますが、それぞれ一人ひとりの表現が充実して素晴らしいと感じました。そして、節目ででてくる芸能パフォーマンスは、人形を使った劇なのですかね。これも良かった。シュールでありながら、所作による表現がとても豊かでした。ラスト近くの場面は、ヨーロッパ映画的な雰囲気があり、周囲に立つ黒い人々や、美しい紅葉のある構図を見ながら、ベルイマンの雰囲気とか思い出していました。
舞台となる住宅街が面白いと思いました。炭鉱跡の廃墟、丘の上の新しいマンション群、海辺の住宅街などなど、大きな団地がいつも背景にあります。その部屋の一つ一つでそれぞれの物語が紡がれていそうです。一連の出来事から広がる復讐の連鎖の背景に広がりを持たせている感じです。海辺の団地はちょっと日本離れした印象を持ちました。最近はメジャーな作品を製作することも多い瀬々敬久監督ですが、こういった、撮りたいことを撮りきった作品は、思いが溢れていて、素晴らしいと思います。4時間半の鑑賞のかいがありました。