まるでヤクザのような傲慢な態度のスター俳優スタ(カン・ジファン)と、俳優になりたかったヤクザ、ガンペ(ソ・ジソブ)-ちなみに韓国語でヤクザのことを“カンペ”と呼ぶそうだ。シャレ?-。この交差するはずのない二人の人生が、映画という舞台の中で交わることによって、迫真の映画が生まれた。
ヤクザ役のソ・ジソブは、男が見ても見惚れるくらいカッコいい。本当にこういう男がいたなら、やはり俳優になるべきだろう。いや、もうなってるんだけど…。いつも黒ずくめの衣装で、冷めた目線で物事を見据えているような、このヤクザ。スタ主演の映画を観ながら何を考えていたのか。一方、俳優のスタはすぐカッとなってしまう癖があり、今制作している映画でも、二人の共演者を病院送りにしてしまっている。相手になってくれる役者は見つからず、こうなりゃ、ヤクザにでも頼むしかないか。
どっちもまるで本物のヤクザみたいな二人がサインのやり取りでぶつかった時、お互いに言い放った言葉が、どうやら双方の胸に刺さってしまったようだ。「短い人生、無駄にするな」。「だからお前はクズと言われるんだ」。
ヤクザは役者になりたかった。しかし、今は明日死ぬかもしれないような、危険な仕事をしている。心もさぞかし荒んでいたことだろう。そこへ舞い込んだ、映画出演の話。自分の昔の希望が叶うのだ。願ってもいない僥倖だろう。
スター俳優でありながら、付き合っている彼女は、自分の都合のいいときしか呼ばない。共演者にもケガをさせ、態度が傲慢な自分。クズだと言われても仕方ないとて心の隅では思っていただろう。しかし、スターにそんなこと言える人間などいない。それをズバリと言われて、考えるところはあっただろう。
お互いのプライドと人生を賭けて、ガチンコの映画撮影が始まる。ヤクザが出した条件は、本物の殴り合いをすること。クライマックスでの二人の殴り合いは、迫力がある。いつも白いシャツのスタ。いつも黒いシャツのガンペ。この泥まみれで、お互い顔の見分けもつかない灰色に塗れた時、その真実の拳で何かを掴み取ったに違いない。