『河童のクゥと夏休み』Summer Days with Coo (2007)
「おら、おめえらに見つけてもらってよかっただ」
「偶然だよ、偶然」
「偶然なんかじゃねぇ。ずっと前から決まってたに違いねェよ」
「とうちゃん、ごめん。おら人間の友達ができたよ」
これからこの映画を観ようか迷ってる方、その気持ちわかります。男の子も女の子も可愛くも凛々しくもないキャラクターデザインだし河童のクゥはやけにリアルでグロテスクだし。
でもね。思い出してほしい「E.T.」を。あの異星人もシワシワでグロテスクでした。しかし映画を見終わる頃には愛おしく見えて仕方がなかったのでは?
「河童のクゥ」も同じ。最後にはあなたはボロボロ泣いていると思う。クゥは可愛くけなげで少年は凛々しく見えるはずだ。
現代日本の平均的な家庭に人間と異なる生物や猫型ロボットやお化けが転がり込んで起きる物語は私たちにはお馴染みだ。
スピルバーグの映画の場合異星人が現れると政府の人間が動き出す。「未知との遭遇」では異星人が指示した着陸地点を「毒ガス事故」と偽って封鎖する。「ET」の場合は異星人を捉えて研究しようとする。
しかし日本の場合は政府は介入してこない。おばQもドラえもんも政府や地方自治体から追われることもなく日常生活を送ってる。
クゥの場合も政府は追いかけてこないがマスコミが殺到する。追い詰められたクゥは東京タワーに逃げ込んで上へ上へと逃げる。これは「キングコング」みたいだ。でも安心して。悲劇は起きない。起きるのは奇跡だ。
この映画では異生物との交流というストーリーにイジメやマスコミ批判、開発批判などいろんな問題をうまく絡めてある。
特にイジメのリアルさ。というより主人公の少年も初めて登場してきた時に無口な女子に暴言をはく「残念なガキ」として現れる。その残念なガキがクゥとの交流を通していじめを跳ね返していくのもとてもスカッとする。
観た後の爽やかな気持ちは3日間持続しますよ(個人の体験です)
東村山市(行ったことある)をリアルに再現した背景がとても素晴らしくアニメーティングもちゃんとしていて変な動き、デッサンの狂いとかがなくてとても丁寧でエネルギッシュだ。
主人公がクゥを連れて遠野を訪れる場面もとても美しい。遠野の川に飛び込んだクゥの鮮やかな泳ぎっぷり。「水を得た河童」とはこのことか!
いつか河童と人間が共存できる世界がおとずれますように。