観ている私自身が作品内の一人になった感覚、いつまでも浸っていたい
ネタバレ
こんなにも入り込める作品は滅多にない、という経験をした。登場人物の気持ちに強く共感して泣いた、という感覚ならまぁまぁあるが、それとは違う感覚。まさに、自分が、その場に居る感覚。かもめ食堂の日本かぶれ若者の様な存在、日本人常連みたいな感じで一緒に居た感覚だ。何故だろう、画面に余裕があるからかな、ストーリー展開や迫力で観る側に圧をかけてこないから、かな。程よい隙間があって、そこに、観ている自分が浮遊出来る感覚だ。あ~、サチエにまた「いらっしゃい」言ってもらいたい~
サチエの「ダメなら、その時」という、一見、いい加減、一見、覚悟を決めてる様な心の座り方が心地よい。また、程よく頑固(ガイドブックを見て来るお客は、うちの雰囲気ではない。うちはレストランではなく、食堂。ふらっと入る処)でいて、ちょっと柔軟(フィンランド人が好きな具材でお握りの作ってみよう、との提案に、一瞬躊躇うも、やってみようというリーダー気質)は、見習うべきこと満載。でも、やっぱり、ザリガニ、トナカイは無いよなぁ、鰊は想像ではいけるかなぁと思ったが、生臭さが強調されちゃうんだね。親しき仲にも礼儀あり、も表現されていた、そんなバランス感覚の良さが、とても魅力的だった。
とは言え、それぞれの人生があるので、いずれは離れ離れになるだろう3人、そんな予感を醸し出しながら、スーツケースの件で、いきなりファンタジー的な演出をするのが、とても良いアクセントに感じた。これが、ラストに効いてくる。そう、かもめ食堂がとうとう満員になった!観ている私も、とっても嬉しかった。それに呼応する様に、プールの皆からの拍手。画面は、日常の仕込み作業に戻る。でも、雰囲気は何となく祭りの後を私は感じた。でも、会話は日常的。そして、あの一言、あ~素敵だなぁ。そんなに派手なストーリー展開は無いけど、よく練られた演出・脚本だと感じた。
地道に丁寧に自分の信念を実践していく姿に心を打たれた。3人のバランスも良いよねぇ。
当作品内で日本人登場人物が語っているフィンランド人に対する思い込みは「人生をゆったり生きている」です。私も「幸福度 世界一」等で憧れていますが、当作品内では、自分の店を閉じて無職?になった中年男性や、夫が急に家出して酒に溺れる中年女性が登場して、決してイメージ通りじゃなくて、どの国の人も「辛い時は辛い」ということに改めて気付かされるし、それを受け止め合うことにより、一歩先に進めることも描いている。かもめ食堂が満席になったのも、そんなこんなが有ったからなんでしょうね。その結果だけを見ると、「サチエって、悠然と構えていて、素敵~」とかになるんだろうなぁ。
ちなみに、フィンランドと言えば「森」と日本かぶれが言ってた。
港街から海をじっと眺める4人の女性は絵になってたなぁ。