ヘヴィメタルロックはハードさが売り物、曲調よりもサウンドで勝負になりがちでヒットパレードには縁が
ない。しかしライブでは迫力満点で熱烈なファンを獲得したようだ。バンドものの映画は数多いが、ヘヴィ
メタに寄った作品で毒気たっぷり、熱さが良く伝わった。
80年代の設定。主人公のクリス(マーク・ウォールバーグ)は、ヘヴィメタバンドのスティール・ドラゴンの
熱狂的なファンで、地元ピッツバーグではトリビュート・バンドを結成、リードボーカルのボビー・ビアーズ
そっくりのハイトーンのシャウトで人気を博していた。しかしバンドはオリジナル曲で勝負したい。ついに
新ボーカルをスカウトして、クリスは追い出されてしまう。マンージャーのエミリー(ジェニファー・アニストン)
は、あくまでも才能重視で、バンドを離れクリスについて行く。昼はコピー機のセールスマンで糊口をしの
いでいるが不安は隠せない。そこにスティール・ドラゴンのメンバーのカークから電話が入った。ボーカル
のボビー・ビアーズは気まぐれでサボりが目立つ。ついにバンドと溝が出来て脱退となった。バンドはクリス
を新ボーカルとして再出発したいという。
ついにクリスは一流バンドでリードボーカルとなる。初日のライブではステージから落ちるアクシデントが
あったが、額から血を流しながら熱唱、観客を総立ちにさせた。新たなロックスターの誕生。
バンドメンバーにはグルーピーが群がる。女性関係が乱れ、メンバーには家庭的な平和はない。クリスは
エミリーを大事にして固い絆が出来ていた。しかしそれもツアーのハードスケジュールでクリスの生活も
乱れる。エミリーは友人とシアトルで事業を始めることになり、クリスを別れる…。
クリスは自作の曲を集めたテープとジャケットデザインを持ち込んだ。しかし新曲はスティール・ドラゴン
には必要がなかった。カークらが書く、いかにもヘヴィメタサウンドで十分だった。冒険する必要はない。
クリスの気持ちは冷えていく。自分の目指すロックとエミリーとの愛を復活させることが使命となった。
ツボを押さえた演出で、ヘヴィメタ世界を楽しめる作品となった。