職業訓練校で講師を務める木工職人オリヴィエのところに、かつて息子を殺した犯人の少年が生徒として入校してくる事で、主人公のギリギリの感情を切り取るような作品になっているが、とにかく一言では表現出来ない複雑な心情が全編に漂っている。
音楽が一切なく、セリフも少ない。
主人公のオリヴィエも職人気質で、愛想も良くなければ口数も少なく、辛い過去のせいもあるかもしれないが、喜怒哀楽が表に殆ど出ない。
前科があったり、身寄りがなかったりするような少年達に仕事を教え、真面目で素っ気なく面白みこそないが、生徒達との関係も悪くはない。
息子を殺された事で離婚した妻には、再婚相手との間に赤ちゃんが出来たようで、犯人の少年と鉢合わせた日にたまたまその報告に来た妻に、思惑があってのことか、と詰め寄るくらいの感情的な部分は持ち合わせている。
物語は終始、オリヴィエが腹の底で何を考えているかわからないまま進んでいく。
最初に少年が犯人な事に気が付き関わらないでおこうと拒否するが、、気になって様子を伺いにいったり、妻の妊娠を聞いて、突如何故か彼を自分のクラスに編入させたり、何がしたいか想像するのが難しい。
恨んでいるのか、赦しているのか、復讐したいのか、受け入れたいのか、その複雑な感情は、仕事を教える淡々とした様子からは察するのが難しい。
わざわざ妊娠中の妻にそれを伝えに行きながら、関わっていないとうそぶいたり、何がしたいのか、本人にもわかってないようなぐちゃぐちゃな感情の中にいながら、理性を保って接している。
だが、仕事を教えたりする様子に裏や嘘があるようにも思えない。
常に葛藤が見え隠れするオリヴィエだが、それでも息子を殺された犯人を相手にあれだけ平静を保てることが驚きだ。
再婚して再出発しようとしている妻のほうが遺恨が激しい。
少年がどんな人物かを吟味し、それ次第では復讐しようと目論んでいるわけでもないのだが、それでも真実や犯人の感情を知りたい気持ちを抑える事も出来ず、絶妙な関係で進んでいく。
犯人側の少年の目線で見てみるととてつもなく恐ろしく驚異の存在にも見える。
後見人にまでなってもらいたいと信用した先生が自分が殺した子供の親だと知った時の動揺は最もだったとは思うが、個人的には少年がまともに反省してるようにも思えず…。
ただただ少年院に5年いたから、自分は十分罪を償った、これ以上辛い思いをするのはごめんだ、みたいに子供の人生を奪っておいて開き直ってるような態度は、オリヴィエの立場からしたら我慢ならなくて当たり前だっただろうと思うのですが、むしろあの本心を目の当たりにしてよくあそこで耐えて冷静さを取り戻したなと。
逆に、少年もあれだけ逃げ回っておきながら、何もされないとわかったからなのかなんなのか、普通に手伝いに戻って淡々と2人で作業をこなすラストがなんともいえない気持ちになりました。
自分がオリヴィエだったら、いくら殺意がなくてもあの感じだと許せなくなっちゃいそう。