撮り方はこの前に観た「ロゼッタ」と同じ撮り方だ。クレジットの出方から映画の入り方、カメラの使い方、音楽の無さなど同じだ。やっぱり手持ちカメラでアップで移動は疲れるなあ。
主人公オリヴィエ(オリヴィエ・グルメ)は職業訓練校で木工作業の教官をやっている。職業訓練校に来る生徒達は、過去に何かやって更生するために通っているのか。日本の場合には、少年院なり、刑務所なりで職業訓練をしているが、ベルギーの場合は出所してから訓練するのかな。一つは訓練校に通うと賃金がもらえるとかあるのかな?
オリヴィエが新しく入ってきた生徒のリストを見て何かしきりと気にしている。それがその後、離婚した妻との話で判ってくる。16歳の新入生は、過去にオリヴィエの子供を殺した少年だったのだ。そこからオリヴィエはその少年とどのように接すれば良いのか、オリヴィエの心の動きを描いている。
やっぱり日本との違いを教えられる。日本でも、小さい子供による殺害事件はあることはあるが、殆ど特殊事例で例えば神戸児童殺傷事件なんかは、犯人の少年は精神的な問題があったように思う。日本ではむしろ思春期、中学後半から高校生くらいの年齢、あるいは20歳前後で凶悪犯罪を犯す事例が多い。一方、ベルギーではカーステレオを盗もうとして車に乗っていた子供を殺したという。あやめた側の少年は11歳。年端もいかない少年が窃盗のために簡単(ではないかもしれないが)に人をあやめるようなことがあるのか。これはベルギーだけの問題ではなく、西ヨーロッパ全体にある問題なのか。日本も問題だけど。凶悪犯罪の年齢の違いが興味深い。
そしてゆっくりと話が進んでいく。ラストのオリヴィエは彼を許したのだろうか。いや 、あれは許したと言うのとは違う心情だ。それは少年を傷つけることによって復讐を成し遂げるのではなく、被害者の父親として、少年の心に罪の意識を植え付けることが目的だったのでは。私がオリヴィエだったら、絶体少年に一生罪の意識を持たせるようにするだろう。だって少年が「5年間も少年院に入って、罪を償った。」のような台詞を言ったが、5年で人殺しの罪が消えるわけはないよね。
オリヴィエ役をやったオリヴィエ・グルメと言う役者、この映画でカンヌで男優賞を取っている。この顔観たなと思ったら、ダルデンヌ兄弟の映画の常連なんだ。「イゴールの約束」のろくでもない父親、「ロゼッタ」のトレーラーハウスの大家だ。今回は、主役で良い役でした。良かったね。良い役やれて、カンヌで賞をもらえて。