モノローグによって自らが殺し屋であることを明かしている.かといって彼(レオン・ライ)は饒舌というほどではない.彼がバスに乗り込むと,饒舌な同級生が保健の勧誘とともに,披露宴のことなどもベラベラとしゃべりかけてくる.殺し屋に過去が割り込んでくる.殺し屋はひやついている.クールなヒップホップとともに彼は言葉ではなく銃を乱射し,その場の人々「友人」を撃ち殺している.
彼女(ミシェル・リー)は誰だというのだろうか.キャメラは彼女に寄り添う.広角のレンズ,ソフトにみせるフィルター,タイムラプス,スローモーションなどの効果がこの街をいっそう幻想的に見せている,黄色,赤,青,ネオンや照明,モニター,ガラスケース,水槽,そして鏡に映った姿などが夜に怪しく,そして静かに光っているように見える.彼女はタバコを吸い,喘いでいる.笑っているようでもあり,泣いているようでもある.タバコを手にする,彼女のその手はわずかに震えている.
アイスを食べさせ,野菜を押し付けている男(金城武)もいる.彼は無口である,喋ることができないらしい.父(チャン・マンルイ)と暮らし,父をトイレに閉じ込め,父に髪を洗わせ,その髪は金髪にもなり黒髪にもなる.
マクドナルド,サッカースタジアム,雀荘,食堂.焼き鳥屋雨が降る.乱闘が始まると,派手な音楽が流れ出す.1818のナンバーでムードのある歌謡曲も流れ出す.ブルースも聞こえている.モニターにはさまざまな映像が映し出される.メッセージビデオや自撮り生映像,無口な男はビデオカメラを回し父の撮影も始めている.
地下道ですれ違う女と女は,香水で男を介した互いの存在を意識する.女(カレン・モク)は髪を金髪に染めており,相手の記憶に残るようにと思っている.
記憶と残像,あるいは残り香,そしてそこに誰かがいるということ,そこに誰かがいたということが人と人を際どく繋いでいく.逆に殺し屋の銃弾は,人と人を突き放し,「友人」という皮肉な言い様もしっくりくる.人と人が色や音を共有し,印象派とも言えるような映像体験を観客が共有したとき,言葉にならない情感が通じ合うのであろう.