鶏は餌を嘴で啄む。その絶え間ない所作。聞けば、土も食べるそうな。産まれて育った場所の味。それ自体を食べ尽くせれる喜び?無心に「日常」を二足歩行しながら、生まれた場所の感触を確かめること。主人公トメは、身売りでこの街で暮らす。餌をついばむ鶏になれるか?翔べない鳥なのは似てなくはない。咥えた餌の欠片喉に詰まらせる声もあるか?歓びのあれと苦痛のそれ区別はつかない。旅から旅をすることを止めること?そういう鳥だっている。というか、生来出来ないこと。高く翔ぶことを仕事にしない、本能に溶けた知恵?私たちにもあったら、な。翔べない鳥の知恵。その啓示、私たちが欲しがるみえない卵の殻を割る音を囁くのでは?高翔びの双六遊びいつかは飽きる日が来る。みえてたのにみえなかたことが、みえる、みえる。食べ尽くせ、この街の土。・・・ピエロは光を集め、色を放つ。・・・トメの弟実夫。彼は鶏を友に外の世界を往く。大阪城、通天閣。この街は元来高楼揃い。サーカス。飛べない鶏を飛ばして見せることで魅せること。誰の為に?光をくれた姉に弟は色を塗って礼をしたかったのでは?ふたりだけの色着きの世界。翔べない日常を高楼から飛躍させたかったのだが、鶏は空を翔べない摂理を彼は知らない。姉さん、外の世界には往けたけど望みには遠かった。知っている?・・・彼は死んだ。いや、生きた。その最期がどうだったではなく、その際際まで本能を屹立させた。ありがとう。空気人形は消費社会のシンボル?ふわふわでも中身が空気ならぬガスを詰めれば、それはもう爆弾だ。負のスパイラルの果ての身売り。切り裂きたい想い、日常の裂け目を探す。やがて破滅ならぬ破裂。原因はジェラシー。この街に来た転落の男女のこと。死の直前、煙草の火が嫉妬の炎にみえたのでは?何が起きてもわからないほど深く沈殿する負また負。死はまるでじゃがいものようにゴロゴロだ。でも勘違いしてはならない。この街は死に場所ではない。生き場所である。くるくるとスカートを旋回させる、トメ。未だみぬ母の何処の誰ともわからない赤子。弟か?妹か?日常は回る、回る。変わりながら変わらないこと。やがて消えて二度とあえなくなること。こんにちはとさようなら。鶏さんの知恵、みえたか?