近松物語

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近松物語

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レビューの数

86

平均評点

83.7(372人)

観たひと

487

観たいひと

42

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 時代劇
製作国 日本
製作年 1954
公開年月日 1954/11/23
上映時間 102分
製作会社 大映京都
配給 大映
レイティング 一般映画
カラー モノクロ
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督溝口健二 
劇化川口松太郎 
脚色依田義賢 
原作近松門左衛門 
企画辻久一 
製作永田雅一 
撮影宮川一夫 
美術水谷浩 
音楽早坂文雄 
録音大谷巌 
照明岡本健一 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演長谷川一夫 茂兵衛
香川京子 おさん
進藤英太郎 大経師以春
小沢栄 助右衛門
南田洋子 お玉
田中春男 岐阜屋道喜
浪花千栄子 おこう
菅井一郎 源兵衛
石黒達也 院の経師以三
水野浩 黒木大納言
十朱久雄 鞠小路侍従
玉置一恵 梅垣重四郎
橘公子 赤松梅龍
小柳圭子 おかや
仲上小夜子 おその
小林加奈枝 おたつ
三浦志郎 手代
種井信子 少女
芝田総二 職人
三上哲 職人
篠原隆 職人
岩田正 忠七
天野一郎 検校
葛木香一 僧侶
荒木忍 公卿の諸太夫
原聖四郎 船着場の役人
堀北幸夫 船着場の役人
金剛麗子 船宿の女中
伊達三郎 堅田の役人
石原須磨男 宿の番頭
大崎四郎 栗売り
小松みどり 茶店の老婆
藤川準 切戸の村役人
横山文彦 切戸の庄屋

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

近松門左衛門作の『大経師昔暦』を川口松太郎が劇化(オール読物所載「おさん茂兵衛」)し、それをもととして「忠臣蔵(1954)」の依田義賢が脚本を執筆、「噂の女」の溝口健二が監督に当る。撮影も同じく宮川一夫で、音楽は「千姫(1954)」の早坂文雄の担当。出演者は「銭形平次捕物控 幽霊大名」の長谷川一夫、「母の初恋」の香川京子、「君待船」の南田洋子、「新しき天」の小沢栄のほか、進藤英太郎、田中春男など。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

京烏丸四条の大経師内匠は、宮中の経巻表装を職とし、町人ながら名字帯刀も許され、御所の役人と同じ格式を持っていた。傍ら毎年の暦の刊行権を持ちその収入も大きかった。当代の以春はその地位格式財力を鼻にかけて傲岸不遜の振舞が多かった。その二度目の若い妻おさんは、外見幸福そうだったが何とか物足らぬ気持で日を送っていた。おさんの兄道喜は借金の利子の支払いに困って、遂にその始末をおさんに泣きついた。金銭に関してはきびしい以春には冷く断わられ、止むなくおさんは手代茂兵衛に相談した。彼の目当ては内証で主人の印判を用い、取引先から暫く借りておこうというのであった。だがそれが主手代の助右衛門に見つかった。彼はいさぎよく以春にわびたが、以春の厳しい追及にもおさんのことは口に出さなかった。ところがかねがね茂兵衛に思いを寄せていた女中のお玉が心中立に罪を買って出た。だが以前からお玉を口説いていた以春の怒りは倍加して、茂兵衛を空屋に檻禁した。お玉はおさんに以春が夜になると屋根伝いに寝所へ通ってくることを打明けた。憤慨したおさんは、一策を案じて、その夜お玉と寝所をとりかえてねた。ところが意外にもその夜その部屋にやって来たのは茂兵衛であった。彼はお玉へ一言礼を云いにきたのだが、思いも寄らずそこにおさんを見出し、しかも運悪く助右衛門に見つけられて不義よ密通よと騒がれた。遂に二人はそこを逃げ出した。琵琶湖畔で茂兵衛はおさんに激しい思慕を打明けここに二人は強く結ばれ、以後役人の手を逃れつつも愛情を深めて行った。以春は大経師の家を傷つけることを恐れて懸命におさんを求めた。だがおさんにはもう決して彼の家へ戻る気持はなかった。大経師の家は、こうして不義者を出したかどで取りつぶしになった。だが一方、罪に問われて刑場へと連れられるおさんと茂兵衛、しかしその表情の何と幸福そうなこと--。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2024年2月号

COMING Old Pictures 旧作紹介:「近松物語」

1955年新年特別号

日本映画批評:近松物語

1954年増刊 名作シナリオ集(冬)

グラフィック:近松物語

近松物語:脚本・依田義賢 溝口健二監督作品

1954年11月下旬号

グラフィック:近松物語

日本映画紹介:近松物語

2025/06/02

2025/06/03

100点

映画館/東京都/早稲田松竹 


史上最高の映画のひとつ

夜行バス時間待ちに、早稲田松竹の「文楽・人形浄瑠璃から生まれた映画」特集にて、何度か見ていた本作の4Kデジタル修復版を鑑賞。
徹底して人間性が抑圧されて、特に女性・妻の立場が弱かった時代の中で人間らしくいきいきと生きるには死ぬしかない、という矛盾した情況をここまで完成度高く説得力を持って描き出した映画は他に思いつかない。
そう言いたくなるくらいに、映画としての絵の見事さ、役者たちが醸す深い情感、逃れようのない悲劇に向かってまるで機械仕掛けのように精巧にすすむ筋運びが圧倒的なのだ。
今回の鑑賞では効果をふくめた音楽に大きな魅力を感じた。彼らの運命に裁断を下す拍子木の音の鋭さが、心にまで響く。
歳をとるにつれ、溝口監督に魅かれてきた自分。人におすすめするなら、まず本作だと再確認。マイ・ベスト・ムービーも変えさせていただきました。

2025/04/28

2025/04/29

96点

選択しない 


まごうことなき大傑作

脚本、撮影、美術、照明、編集、演者の演技などなど全てにおいて完成度が高く、それ等全てを演出した溝口健二監督はやはり大監督でした。
 私は溝口監督のねちっこくヒロインの不幸を描き続ける映画群が嫌いで、特に『西鶴一代女』の救いのなさには完全に落ち込んでしまい、しばらく鬱になった。(それだけ作品にパワーがあるという事)だから、今作も観る前から、(また、鬱になるんだろうなぁ、嫌だなぁ。)と思いつつ、観賞したのだけど、溝口作品にしては意外に救いがあってホッとした。結局は香川京子、長谷川一夫の二人とも捕まって死罪になって市中引き回しになるけれど、ヒロインは愛する人と最後まで一緒で、笑みまで浮かべているし、今作では、不幸にする側の男(遠藤英太郎)もお家取り潰しで不幸に落とされるから両者痛み分けで、これが溝口作品で精一杯のハッピーエンドではないか。大傑作。

2025/01/08

2025/01/08

70点

VOD/YouTube 


香川京子に惹かれて見た。不倫は磔の時代。大店の手代が御内儀の実家のお金に困っているのを聞いて店のお金を都合しようとするが番頭に見つかって・・・。貪欲な店の主人。別の店の主人に誘惑されていた番頭。借金ばかりで何もしない御内儀の兄などなど人物模様が描かれていく。あまりにも生真面目な手代と追いつめられていった御内儀の逃避行・・・。凝った話で見入ってしまった。

2024/12/12

2024/12/13

80点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル/PC 


邦楽のBGMによって煽られる緊張感がすごい。
封建社会の圧力の怖さがリアルに伝わる。
全く男女の仲になるはずのなかった二人が、運命の皮肉でどんどん近づいていく。
二人で逃走を始めても、まだ使用人とその主人の妻の関係で進展はない。
しかし、琵琶湖で死を覚悟した時、つい茂兵衛が密かな想いを告白したために一気に二人の愛情が燃え上がる。
その燃焼力は凄まじく、栄華を極めた老舗の店を消滅させて、自らも死に至るが、市中引き回しの馬の上で清々しいおさんの表情が全てを物語る。

2024/07/15

2024/07/14

70点

VOD/YouTube 


地獄から生まれてきた男が足に絡みつく

画面の中に闇がある.その暗がりに消え,また暗がりから現れる男として茂兵衛(長谷川一夫)がいる.彼の声はどこまでも甘ったるい.それゆえか,おさん(香川京子)やおたま(南田洋子)という大経師の家にいる二人に好かれてしまう.そして彼と,彼女の道行が始まろうとしている.
茂兵衛は布団にもぐっていて,布団の中から映画に登場する.誕生するという感じもある.彼は赤子のように泣くかわりに咳をしている.その風邪も道行の途次でいつの間にか治っている.
それにしても画面の中断ぐらいを右往左往する,男たちの月代や禿頭が眩しくも感じられる.照明のせいなのだろうか.照明といえば,暗い室内を行燈がぼんやりと照らすことがある.画面の中央付近に当てられた照明がスポットライトのように人物を照らすこともある.障子から入る光も美しく,照明は白い建具に人影を浮かび上がらせる.襖には相当な絵が浮かび上がる.茂兵衛はこの大経師に暦を描く職人としていて,その腕も見込まれつつある.そうした矢先に逃げ出さなければならない.また,人物たちの背景に見えている植え込み,箪笥,石灯籠などにも格が感じられる.家の旦那様(進藤英太郎)はこの職と商いを大きくし,役人たちと結託して,手広く事業を広げようとしている.番頭の助右衛門(小沢栄) のずる賢さも役立っているのだろう.
その広がりの中で,おさんが後添えとして家に入り,お玉が奉公をしている.「おいえさま」と呼ばれている,おさんは実家の方が経済的に困窮してきている.実家は,岐阜屋という屋号で,兄の道喜(田中春男)と母のおこう(浪花千栄子)が切り盛りしているが,兄の気楽で得な人な振る舞いが家産を傾けているようにも見える.極楽と地獄についてこの母と息子は語り始める.
それにしても,奇妙な音が始終聞こえている.雑巾掛けの音が聞こえる.鼓や鉦の音や三味線の音も聞こえ,能か歌舞伎の舞台のようでもある.足袋の汚れが見えているが,それも不吉なのだろうか.茂兵衛は,白紙という光を十全に反射する面に,隠れて印判をつくところから転落を開始する. 
磔にされる男と女が馬の背に乗せられていくのは,まさしくフラグと言える.彼は夜通しで仕上げいるので,寝坊をしてしまい,風邪をこじらせてしまうのかもしれない.「茂兵衛」と呼ぶ声が細くもあり,怖くもある.一旦は,屋根裏のような暗がりに幽閉されている茂兵衛であるが彼は逃げる.居たくない家として,おさんも逃げる.水面に二人の倒景が映っている.揺れる小舟の上に二人だけがいる.世界は二人だけの世界のようにも見える.その周りには闇が侵食している.場面替わりには溶暗も効果的に使われている.京からの離脱があり,伏見稲荷より先へ行ったことのなかったおさんであるが,琵琶湖へ,さらには嵯峨の奥へと道行く.二人が面白いのは,おさんの足を揉み,足を洗い,いよいよ足に噛み付く茂兵衛がいて,それでもおさんは「楽しい旅」などと口走っているところである.
初暦が売り出され正月のようなお祝いも終えており,栗売り(大崎四郎)や茶屋の婆(小松みどり)とも出会いながら,二人は,竹藪と格子の奥に見えている.茂兵衛の父の源兵衛(菅井一郎)が二人を匿いつつも,耐えきれずチクってしまう.磔へと向かう茂兵衛は町中で晒されているが,その晴れがましい顔が街の人に囁かれている.しかし,それほど晴れがましくも見えない.彼はただ,おさんを母の代理としつつ,闇の方へ帰還するのだろう.

2024/02/12

2024/02/12

90点

映画館/東京都/神保町シアター 


美しい

香川京子さん、、

そして、ストーリーの流れの自然さ、、

不条理の世界