近松物語

ちかまつものがたり|----|----

近松物語

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レビューの数

90

平均評点

83.6(377人)

観たひと

490

観たいひと

42

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 時代劇
製作国 日本
製作年 1954
公開年月日 1954/11/23
上映時間 102分
製作会社 大映京都
配給 大映
レイティング 一般映画
カラー モノクロ
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督溝口健二 
劇化川口松太郎 
脚色依田義賢 
原作近松門左衛門 
企画辻久一 
製作永田雅一 
撮影宮川一夫 
美術水谷浩 
音楽早坂文雄 
録音大谷巌 
照明岡本健一 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演長谷川一夫 茂兵衛
香川京子 おさん
進藤英太郎 大経師以春
小沢栄 助右衛門
南田洋子 お玉
田中春男 岐阜屋道喜
浪花千栄子 おこう
菅井一郎 源兵衛
石黒達也 院の経師以三
水野浩 黒木大納言
十朱久雄 鞠小路侍従
玉置一恵 梅垣重四郎
橘公子 赤松梅龍
小柳圭子 おかや
仲上小夜子 おその
小林加奈枝 おたつ
三浦志郎 手代
種井信子 少女
芝田総二 職人
三上哲 職人
篠原隆 職人
岩田正 忠七
天野一郎 検校
葛木香一 僧侶
荒木忍 公卿の諸太夫
原聖四郎 船着場の役人
堀北幸夫 船着場の役人
金剛麗子 船宿の女中
伊達三郎 堅田の役人
石原須磨男 宿の番頭
大崎四郎 栗売り
小松みどり 茶店の老婆
藤川準 切戸の村役人
横山文彦 切戸の庄屋

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

近松門左衛門作の『大経師昔暦』を川口松太郎が劇化(オール読物所載「おさん茂兵衛」)し、それをもととして「忠臣蔵(1954)」の依田義賢が脚本を執筆、「噂の女」の溝口健二が監督に当る。撮影も同じく宮川一夫で、音楽は「千姫(1954)」の早坂文雄の担当。出演者は「銭形平次捕物控 幽霊大名」の長谷川一夫、「母の初恋」の香川京子、「君待船」の南田洋子、「新しき天」の小沢栄のほか、進藤英太郎、田中春男など。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

京烏丸四条の大経師内匠は、宮中の経巻表装を職とし、町人ながら名字帯刀も許され、御所の役人と同じ格式を持っていた。傍ら毎年の暦の刊行権を持ちその収入も大きかった。当代の以春はその地位格式財力を鼻にかけて傲岸不遜の振舞が多かった。その二度目の若い妻おさんは、外見幸福そうだったが何とか物足らぬ気持で日を送っていた。おさんの兄道喜は借金の利子の支払いに困って、遂にその始末をおさんに泣きついた。金銭に関してはきびしい以春には冷く断わられ、止むなくおさんは手代茂兵衛に相談した。彼の目当ては内証で主人の印判を用い、取引先から暫く借りておこうというのであった。だがそれが主手代の助右衛門に見つかった。彼はいさぎよく以春にわびたが、以春の厳しい追及にもおさんのことは口に出さなかった。ところがかねがね茂兵衛に思いを寄せていた女中のお玉が心中立に罪を買って出た。だが以前からお玉を口説いていた以春の怒りは倍加して、茂兵衛を空屋に檻禁した。お玉はおさんに以春が夜になると屋根伝いに寝所へ通ってくることを打明けた。憤慨したおさんは、一策を案じて、その夜お玉と寝所をとりかえてねた。ところが意外にもその夜その部屋にやって来たのは茂兵衛であった。彼はお玉へ一言礼を云いにきたのだが、思いも寄らずそこにおさんを見出し、しかも運悪く助右衛門に見つけられて不義よ密通よと騒がれた。遂に二人はそこを逃げ出した。琵琶湖畔で茂兵衛はおさんに激しい思慕を打明けここに二人は強く結ばれ、以後役人の手を逃れつつも愛情を深めて行った。以春は大経師の家を傷つけることを恐れて懸命におさんを求めた。だがおさんにはもう決して彼の家へ戻る気持はなかった。大経師の家は、こうして不義者を出したかどで取りつぶしになった。だが一方、罪に問われて刑場へと連れられるおさんと茂兵衛、しかしその表情の何と幸福そうなこと--。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2024年2月号

COMING Old Pictures 旧作紹介:「近松物語」

1955年新年特別号

日本映画批評:近松物語

1954年増刊 名作シナリオ集(冬)

グラフィック:近松物語

近松物語:脚本・依田義賢 溝口健二監督作品

1954年11月下旬号

グラフィック:近松物語

日本映画紹介:近松物語

2025/08/06

2025/08/11

75点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 


姦通罪

2度目の視聴であるが、京都が舞台の近松物の浄瑠璃とは改めで知った。
1683年に実際に起こった姦通事件で当人たちは磔の死罪、妻を姦通された大店の大経師屋も店の取つぶしと言う厳しい時代。
これを井原西鶴は「好色五人女」で、近松門左衛門は「大経師昔暦(通称おさん茂兵衛)」と浄瑠璃仕立てとしたようだ。
監督の溝口健二と撮影の宮川一夫で全編暗い演出効果。

2025/08/06

2025/08/09

82点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 


心中からめばえる恋

 前日に観た「山椒大夫」同様、溝口健二監督、香川京子主演、1954年の大映作品だ。前日、香川京子の顔が別人のようだと書いたが、本作でも別人に見えた。別人に見えたのは彼女だけでなく、南田洋子もそうだ。女優は時代劇ではかつらをかぶり、和服を着るので、現代劇と雰囲気ががらりと変わるから、別人に見えるのかもしれない。
 本作の原作は近松門左衛門で、近松といえば心中ものだ。本作もまた、京都の大店のおかみのおせん(香川京子)と手代の茂兵衛(長谷川一夫)のかけおちを描いている。おもしろいのはおせんと茂兵衛に当初は恋愛感情のみじんもなく、不義密通などなかったことだ。
 そもそもの発端はだんな(進藤英太郎)の助平心だ。だんなが使用人のお玉(南田洋子)の寝間に夜な夜な忍び込むということを聞いたおせんは、だんなをこらしめるためにお玉の寝間で待つ。一方のお玉はおせんと入れ替わって、おせんの寝間にいるのだが、そうとは知らぬ茂兵衛がお玉の寝間にやって来る。そこへ手代の助右衛門(小沢栄)が現れて、茂兵衛とおせんの不義を疑う。まるでコントだ。
 おせんと茂兵衛は勘ぐられて追われる身になり、このままでは死んだ方がまし、いざ心中という時に、茂兵衛がそれまでのおせんに対する想いを告げたとたん、おせんが心変わりして、茂兵衛と一緒に生きたいと決意する。何とひょうたんから駒ならぬ、心中から恋だ。
 今でこそ警察は民事不介入だが、江戸時代は不義密通はお縄がかかる。また当事者だけでなく、不義密通を出した家もお上に届けなければならない。おせんのだんなは大店の主人でもある。家の恥をさらしたくないので、何とか穏便にすませ、体面を取り繕うとする。
 ひとつのシーンが終わると、フェイドアウトし、画面が真っ暗になる。これがまるで、舞台劇の幕が降りるような効果を発揮する。加えて早坂文雄による音楽が歌舞伎情緒をかもし出す。この様式美こそ、溝口の美学だろう。

2025/08/07

2025/08/07

60点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 


香川京子の講演

神戸の長田でした。長谷川一夫の背が低いので香川京子の足元を掘ってバランスを取ったそうです。暦が天下の一大事でした。

2025/08/06

2025/08/06

80点

テレビ/無料放送/その他 


溝口健二の世界にハマってしまう。映画に色はいらないのではないかと思ってしまう程の美しい映像。香川京子目当てに見ている筈が登場人物それぞれの動きに見惚れてしまう。映画の力を痛感する。

2001/01/24

2025/07/31

95点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 


2001年の鑑賞時の採点

採点のみで、レビューはありません。失礼。

2025/06/02

2025/06/03

100点

映画館/東京都/早稲田松竹 


史上最高の映画のひとつ

夜行バス時間待ちに、早稲田松竹の「文楽・人形浄瑠璃から生まれた映画」特集にて、何度か見ていた本作の4Kデジタル修復版を鑑賞。
徹底して人間性が抑圧されて、特に女性・妻の立場が弱かった時代の中で人間らしくいきいきと生きるには死ぬしかない、という矛盾した情況をここまで完成度高く説得力を持って描き出した映画は他に思いつかない。
そう言いたくなるくらいに、映画としての絵の見事さ、役者たちが醸す深い情感、逃れようのない悲劇に向かってまるで機械仕掛けのように精巧にすすむ筋運びが圧倒的なのだ。
今回の鑑賞では効果をふくめた音楽に大きな魅力を感じた。彼らの運命に裁断を下す拍子木の音の鋭さが、心にまで響く。
歳をとるにつれ、溝口監督に魅かれてきた自分。人におすすめするなら、まず本作だと再確認。マイ・ベスト・ムービーも変えさせていただきました。