シネマヴェーラ渋谷の石井輝男特集、「異常性愛記録 ハレンチ」を観るのは、10年前の2007年、やはりシネマヴェーラでの異形妄執の人々特集以来で、若杉英二がゲイボーイらと繰り広げる性の饗宴部分は忘れていたものの、ヒロイン橘ますみに対し“愛しているんだヨーン”などと異常な執着を示す若杉の目、鼻の穴、咽頭といった細部の異様な迫力は、忘れたくても忘れられないものでした。
若杉英二は、かつては松竹や新東宝で天城竜太郎の芸名で時代劇スターとして活躍した事があるだけに、女性用下着を着て口紅を塗り、女言葉を操りながらゲイボーイ相手に“もっといじめて”などとマゾヒスティック行為に浸る姿は、完全に針を振り切った異様な迫力に満ちています。
それにしてもヒロイン役の橘ますみは、「徳川女刑罰史」や「徳川いれずみ師 責め地獄」などでは巧妙に乳首を画面に出すことを回避していたのに、この映画では豊かに実った乳房も、滑らかそうな尻も、キャメラの前に惜しげもなく晒しており、橘ますみファンとしては有難いと思いながらも、もっと出し惜しみしてくれても良いのだが、という思いにさせます。