金閣寺放火事件をモチーフにした別の話。女郎の純情と愛を描く。
ヒロイン夕子(佐久間良子)は家族のため遊郭へ身を売る。もう一つは幼なじみの正順(河原崎長一郎)が京都の寺へ修行に出ていることから正順に会えるかもしれないという期待もあった。正順はどもりでみんなから馬鹿にされていたが夕子には心を開く仲だった。
遊郭の物語と言うより、女学校の仲間の物語のようで、ぎすぎすしたところがない。もちろん女将(木暮実千代)は旦那の世話もするし、欲得ずくの所もあるが、女将は優しく、朋輩(丹阿弥谷津子、岩崎加根子ら)も優しい人たちばかりだった。
転機は旦那に夕子の所へ正順が通ってくるところを見られ、寺に告げ口されたことである。このため正順は寺から出られなくなり、夕子もまた結核で入院することになったことである。
女将が親切心から正順に入院のことを話したため、彼は絶望して寺に放火する。夕子もまた故郷へ帰り自殺する。
佐久間良子の抑えた演技が良い。また、木暮実千代の女将もこれまた絶品。
余談だが、着物の展示会の会場は大徳寺らしい。大仙院の有名な枯山水などにも帯が飾ってあったが、今なら文化庁が許可しないだろうなあ。