1980年の作品。4Kデジタル修復版を「SEIJUN RETURNS in 4K」で鑑賞。内田百閒の短編小説「サラサーテの盤」を原案とした作品。士官学校独逸語教授の青地は海辺の町への旅で友人で元学者の中砂と合流する。そこで芸者小稲と出会い3人連れの盲目の旅芸人たちを眺める。中砂はそのまま旅芸人たちを追っかけ青地と別れる。後日中砂が結婚したという知らせを受け青地が訪れると妻の園は小稲と瓜二つだった。中砂が持っているサラサーテのツィゴイネルワイゼンのレコードを聴かされ、途中に入っているサラサーテ自身の声の聞き取りを頼まれるが青地にも聞き取れなかった。中砂は結婚後も気ままに旅を繰り返し小稲との関係も続けていた。中砂夫妻の間に娘の豊子が生まれるが園はスペイン風邪で亡くなってしまう。青地が中砂を訪れると豊子の乳母として中砂と再婚した小稲がいた。また青地は妻周子の妹妙子から、周子と中砂が見舞いに来た際の二人の様子から二人が関係していると聞かされる。その後中砂は旅先で麻酔薬の過剰投与で死んでしまう。それから5年、小稲は豊子を連れて青地の家を訪れては、中砂が貸して忘れていた本を返すよう求める。普通の人ならわからないようなドイツ語のタイトルは、豊子が中砂の霊と会話から青地のところへあると語ったという。青地は豊子から中砂が生前約束していた骨をくれといい、生きている者は本当は死んでいて、死んでいるものが生きているのだというのだった。青地逃げ出すが、その先の海辺で白菊を飾った船で豊子が待っているのだった。
昔々に観た時よりはちょっとはわかりやすかったかな。小稲とそっくりの園と結婚し、園の死後小稲と結婚するとか、三人の盲旅芸人の話とかコメディかと思う部分もあれば、中砂と周子のエロチックな描写もあり、さらには豊子と中砂の霊との会話のようなオカルトもあるかなり盛沢山なお話なんだけど、現実と非現実の境目がないまるで絵のような映像で見せてくる鈴木清順の映画でした。でもちょっと長い。