見んでええかも言うてたけど、やっぱ見て良かったわ。陽炎座よりわかりやすく感じたのは、陽炎座で楽しみ方がわかったからかな。しかしこの監督の映画に出てくる小豆洗いみたいなSEはほんと印象に残るなー。
破滅型の粗暴漢、中砂と、生真面目なドイツ語教授の青池の友情と、彼らを取り巻く女の絡んだ不思議な関係。この中砂、本当にまともに付き合っちゃいけない人間なんだけど魅力的なんでしょうねえ。皆が彼に惹かれて壊れていく。そして彼は壊すだけ壊して先に消えてしまう。
残された皆が少しずつ崩れるように中砂の幻影に振り回されて壊れていく中で、青池の妻周子だけひとりびくともしないのつえーなー……。彼女は彼女で奔放で、どの男にも執着してないというか刹那的に楽しんでいる感はありますが。「アンダーグラウンド」のナタリヤみたいな女。
ナタリヤと違ってやりおおせて、報いは受けないからさらに強いのだけど…。
彼女は出てくるたびひたすら豪華な何かを食べているのが印象的ですね。ある種の野性味というか、理性や良識に囚われてない印象を受ける。
そして中砂の娘の豊子が…演技が、美味いな~! 絶妙に不気味な子供を体現してる…。中砂パパは多分きっと君のこと、全然微塵も興味を持っていなかったろうに、夢に見てのめり込むほど浸食されてかわいそうだね…。大人は皆、君の後ろのパパの影法師しか見てないしね…。
でも、その不気味さはもうちょっと味わいたかったなあ。ラストが結構呆気なかったので寂しい。あと、盲人の門付け3人組が悲惨なのにコミカルでちょっと清涼感あった。輪廻したっぽい子供の3人は痛々しかったけど…。
大分迷ってたけどやっぱり見ておいて良かったなあ。面白かった。陽炎座より入りやすかったかもしれん。でもほんとにこれで満足したから、もう三部作の最後の「夢二」は行かんでいいでしょ。
中砂のおうちがめちゃくちゃ素敵な場所にあったので、叶うなら聖地巡礼したい。