主人公の通称サード(永島敏行)をはじめ、
犯罪を犯して少年院に入った人達を描き、
時々サードの逮捕の前や後の回想シーンが挿入される。
少年院での日頃の作業や運動や更生のための講義などが描かれるが、
どれも誰かの心を動かして更生に繋がる事とは感じられず、
特にサードは、現在と未来に対して何も希望や目標を持っていないように思われるので、
出口の見えない日常が続く。
サードの犯行に至る動機は、
「(親から離れるために)町を出るためのお金が欲しい」なのだが、
何のために出るかの目的がそもそもなく、
出ること自体が目的になっていると思われ、
以前から今に至るまで生きる目的を持てずにいるように見える。
生きる目的を持てない人は、10代や他の年代でも多いと思うが、
グラウンドを走り続ける主人公を見て、
人間って結局、「目的がないと何もできない」ではなく、
「目的がなくても、とにかく何でもいいから何かをやり続けて生きていくしかない」
だと思わせるような作品だった。
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外部から少年院に来て講義をする講師がカミカミだったりするのだが、
実際にそんな活動をしている人が、
芝居でなく、いつも通りのことをやっている感じが出ていて良かった。
そういえば、ちょうど1978年頃、
ラジオで、少年院だか鑑別所だかに行って、
少年たちにインタビューをした録音を流す番組があって、
彼らは静かにボソボソと話していたので、
そんな印象が表現されていたのも良かった。
少年院をリアルに描いていると思ったが、
気になるのは、刑務所だと私語が禁止される場面が多かったり、
監視も厳しかったり、
監視の目が届かない「学校のトイレ」みたいな物がなかったりしたはずだが、
そうではなかったことで、
実際、「少年院は刑務所ほど厳しくない」という事なのだろうか?
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【スタッフの追加】
撮影助手は、小林達比古に加えて、篠田昇がクレジットされていた。