祭りの準備

まつりのじゅんび|Preparations for the Festival|Preparations for the Festival

祭りの準備

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レビューの数

28

平均評点

80.8(177人)

観たひと

242

観たいひと

25

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1975
公開年月日 1975/11/8
上映時間 117分
製作会社 綜映社=映画同人社=ATG
配給 ATG
レイティング 一般映画
カラー カラー/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督黒木和雄 
脚本中島丈博 
原作中島丈博 
企画多賀祥介 
製作大塚和 
三浦波夫 
撮影鈴木達夫 
美術木村威夫 
丸山裕司 
音楽松村禎三 
録音久保田幸雄 
照明伴野功 
編集浅井弘 
助監督石山昭信 
スチル三浦波夫 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演江藤潤 沖楯男
馬渕晴子 沖ときよ
ハナ肇 沖清馬
浜村純 沖茂義
竹下景子 上岡涼子
原田芳雄 中島利広
石山雄大 中島貞一
杉本美樹 中島美代子
桂木梨江 中島タマミ
三戸部スエ 中島やす
湯沢勉 服部菊男
原知佐子 服部サカエ
絵沢萠子 徳原市枝
真山知子 島村ノシ子
阿藤海 良介
森本レオ 駐在
斉藤真 オルグの男
芹明香 娼婦ミユキ
犬塚弘 信用金庫所長

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

南国土佐の自然を背景に、一人の少年が複雑な人間関係に圧迫されながらも巣立っていく姿を描く。原作は脚本も執筆している中島丈博の同名小説、監督は「竜馬暗殺」の黒木和雄、撮影は「田園に死す」の鈴木達夫がそれぞれ担当。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

昭和30年代初め、高知県中村市。沖楯男(20歳)は、この町の信用金庫の外勤係であるが、毎日、東京へ出てシナリオ作家として身を立てることを夢みている。だが、母のときよは女狂いの夫・清馬と別居していて、一人息子の楯男を溺愛するあまり離そうとしない。楯男には心の恋人涼子がいるが、彼女は政治運動に熱を上げており、シナリオを書く楯男にとっては常に片思いの存在であった。楯男の隣の中島一家は、暴れ者の利広と、兄の貞一・美代子夫婦との奇妙な三角関係で成立している。利広が家にいる時は、貞一が刑務所に、貞一が家にいる時は利広が刑務所に、という具合の泥棒一家である。ある日、中島家の末娘タマミがヒロポン中毒の影響で気がふれて大阪から帰って来た。そんなタマミは町中の男たちセックスの対象となる。楯男は涼子へのかなわぬ恋の失意から、浜辺でタマミと寝てしまう。しかしあろうことか、そこへ楯男の祖父茂義が現れタマミを寝取られてしまう。数カ月後、タマミが妊娠した。父親として名乗り出たのは孫ほど年の離れた茂義だった。タマミは子供を産むと同時に正気に返った。だがその時からタマミは茂義を激しく嫌悪し、ついに老人は首を吊った。政治運動家の男に捨てられた涼子は、意外にも楯男を誘惑する。涼子への夢が破れた楯男は、一人、東京へ旅立つことを決心した。駅の待合室で楯男は、殺人容疑で追われている利広に出会った。金を無心する利広だったが、楯男の決心を聞くと途端に楯男を応援する側に回る。「バンザイ!バンザイ!」利広の歓声に送られて、楯男は故郷を旅立っていった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2024年8月号

COMING Old Pictures 旧作紹介:「祭りの準備」

1975年12月下旬号

今号の問題作:祭りの準備

1975年12月上旬号

日本映画紹介:祭りの準備

1975年11月上旬号

グラビア:黒木和雄監督 「祭りの準備」

2024/08/02

80点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


中島丈博の自伝的作品

中島丈博の自伝的作品と言われている本作。劇中のセリフで新藤兼人の言葉として語られるが「人は誰しも傑作が書ける。自身の周囲のことを書けばいい」といった意味のもの。まさしく本作はその言葉通りの映画である。高知の浜辺を歩きながら語る兄弟の窃盗から逮捕や、性の妄想など、本当にある嘘のようなお話と、その滑稽な面白さ。全編を通してその調子で描かれていて、とても面白い。

学生の頃にVHSで観て以来、10年ぶりぐらいの鑑賞、しかも初めてスクリーンで観れて嬉しい。この時代の日本映画はスクリーンに限る。スクリーンから溢れるバイタリティーに圧倒される。また、この時代の青春映画といえば、どこか鬱屈とした感情が強めの印象だが、本作はカラっとした印象である。南国土佐の気候というか高知の空の青さというか、シナリオライターの夢の為に東京へゆく将来への明るい展望が感じられるせいか、観ていて気持ちいい。列車で故郷を離れる結末といえば海外ならフェリーニ『青春群像』などが思い浮かぶが、本作のように「バンザーイ!」と追い出してくれると「完」の後に続く彼の人生の成功を信じれるというか、信じたいというか、夢を叶えたからこそ生まれた本作を実感するというか。とにかくシナリオライターによる自伝的な映画の中でも、本作は傑作だろうと思う。

青春映画は世界各国にあるが、この時代の日本映画ほど性を自由自在に活写するのはない気がする。その意味で性への興味や妄想、滑稽さ。これも本作の魅力だな、と改めて。

2021/08/02

2021/08/02

70点

VOD/U-NEXT/レンタル/テレビ 


離れるべくして離れる故郷

 1975年の映画。舞台は高知県の中村市といえば四万十川で知られていて、鯨やマグロの遠洋漁業の拠点でもある。小さい港町だと思ってたけど、バス1本で意外に大きな町に通じている。江藤潤はイメージ通り青くさい感じだけど、竹下景子が少し生意気な美少女ふうでちょっと意外。

この二人を除くと、この世界はまるで中上健次「千年の愉楽」だ。人間って他に何もすることがないとケンカと乱交しかしないんだろうか。(それが悪いと責めてるわけではない)でも、執着する母vs反発する息子はグザヴィエ・ドランと同じだ。人間って多分そういうものなんだな。

2020/10/22

92点

VOD/U-NEXT 


すべては新しい人生という祭りのための準備

ネタバレ

高知県のある海辺の村を舞台に繰り広げられる奔放な村人の群像劇。
楯男は村の信用金庫に勤めているが、東京に出てシナリオライターになるのが夢。身の回りのものから題材を探そうとするが、彼の周りには欲情した男と女の話しかない。
楯男の父親清馬は女遊びが激しい男で、母のときよはそんな夫に愛想をつかしており別居状態である。その反動からか楯男を異常なまでに溺愛しており、側から離したがらない。楯男の家には祖父の茂義も同居しており、東京へ行くという夢はなかなか叶えられそうもない。
そんな彼の夢を知っているのが彼が片想いをしている涼子だ。しかし「うたごえ運動」に夢中で、左翼的な思想に感化されつつある涼子に対してなかなか距離を詰めることが出来ないでいる。
ある夜隣家に住む中島家の長男貞一が窃盗容疑で捕まる。弟の利広もごろつきで楯男も良く彼に絡まれているが、貞一が不在となると兄に代わって兄嫁の美代子を抱くようなとんでもない男だ。
中島家にはタマミという娘がいたが、大阪でヒロポン中毒になり正気を失って戻ってきた。
誰彼構わず色目を使うタマミに、村の男たちはこぞって毎晩夜になるとタマミと浜辺で関係を持つ。
涼子との仲を発展させられない楯男は、たまらず浜辺へ向かいタマミを抱くが、何とそこに現れた祖父の茂義に寝取られてしまう。
素っ裸のまま叫びながら浜辺を走り回る楯男の姿が衝撃的だ。
やがてタマミは茂義の子供を孕む。清馬と同じく好色な茂義の姿に、村の人々もときよも呆れ果てる。しかしタマミの世話をしながら一緒に暮らす茂義の表情は何とも幸せそうだ。
だがタマミは出産すると正気を取り戻し、側に寄ろうとする茂義から逃れようとする。
赤ん坊を抱きながら逃げ回るタマミを追いかけ回す茂義の姿は完全に狂気だ。絶望のあまり茂義は首を吊って自殺する。
清馬は愛人のノシ子と同棲していたが、突如彼女は病死する。帰るところがなくなった清馬はときよの元へ戻ってくるが、ときよは彼と暮らすことを承知しない。
ここが東京へ出るチャンスとばかりに楯男は母親に、自分がこの家を出ていくから父親と仲良く暮らしてくれよと頼む。
結局ときよが選んだのは、もう一人の愛人市枝の元に清馬を引き取ってもらえないかと頼むことだった。自分の夫を愛人によろしく頼むというのは何とも滑稽なシーンだ。
楯男との間に距離が出来てしまった涼子だが、過去の過ちを謝罪した彼女は、初めて自ら楯男を強く求めてきた。ついに恋心が叶った楯男だが、ある宿直の夜に突如彼の寝床に現れた涼子に戸惑う。
彼は涼子を受け入れるが、気がつくと部屋に何故か火の手があがっていた。ボヤで済んだが、信用金庫の仮眠所に女性を連れ込んだとして彼は叱責を受ける。
気がつくと涼子への愛も薄れている。ときよは最初から楯男と涼子が一緒になることには反対していたが、彼が涼子とはもう二度と会うことはないと宣言するのを聞いて安心する。
しかしそれは楯男が東京へ出ることを決意をした証明でもあった。すっかり正気を取り戻し綺麗になったタマミに、赤ん坊が楯男に似ていると言われドキッとする楯男だが、それでも東京へ行く決意は変わらなかった。
彼は母親に何も言わずに出ていく。鳥籠の中からメジロを逃がすシーンは印象的だ。
彼が東京行きの列車を待っていると、強盗殺人の容疑で追われている利広が現れ、彼に金を要求する。
悪いところで会ったなと楯男に詰め寄る利広だが、楯男は潔く彼に金を渡す。そして自分が東京へ出る決意をした話を彼にすると、何故か利広は金を楯男に返す。東京へ行けば金が必要になる、受け取るわけにはいかないと。
楯男に励ましの言葉をかけた利広はバンザイをして彼を送り出す。
色々ととんでもない人物ばかり登場するし、楯男から漂う何とも言えない小物感にあまり好感を持てなかったのだが、観終わった後にはじんわりと心に響くものがあった。
愚かではあっても全力で生きている彼らの姿にいつの間にか心を動かされていたのだろう。
竹下景子の初々しさや、茂義役の浜村純の悲壮感がとても良かった。

2020/07/25

2020/08/01

80点

選択しない 


男の人生は祭りだ

ネタバレ

 昭和30年代の高知県中村市(現四万十市)が舞台となっている。主人公の楯男(江藤潤)は映画好きらしく地元の映画館によく出入りしている。「錆びたナイフ」「南国土佐をあとにして」といった日活アクションが好みか。上映中の映画が時代を感じさせるけれど、ここで描かれる土俗的雰囲気に明治大正時代の土佐を描いた宮尾登美子の作品群との同じ匂いを感じてしまう。
 本作のだいぶ後、80年代に入って五社英雄監督による宮尾原作による高知三部作が作られるけれど、あの映画の雰囲気を先取りしているといったらよいか。時代も違うし話の骨格も全く違うのだけど、方言をはじめとして高知人の熱い血を感じさせるところが共通している。
 自由奔放と言えば聞こえはいいが、身勝手な男連中とその男に負けず劣らず鉄火な女たちという登場人物たち。楯男の悪友らしいトシちゃんのアウトローぶりなど宮尾作品に出てくるヤクザを思わせる。演じた原田芳雄の無頼ぶりが主人公を食っている。同じ監督による「竜馬暗殺」に続いての土佐人を演じている。この人特有のアクの強さが新人の江藤潤を追い込む。対照的な二人の配置が効果的だ。
 性に関してあからさまなところもこの土地特有なものを感じさせる。女にふしだらな連中の中にあって奥手な楯男はだから一人目立つ。彼の男としての成長の物語でもある。母(馬渕晴子)の溺愛を鬱陶しく思いながらも中々殻を破れなかった青年が、その殻を破る物語。
 時代を感じさせるのは、楯男の恋人、涼子(竹下景子)の存在。彼女は当時の流行りでもあった共産主義思想にかぶれている、という設定。東京からきたインテリに夢中になってしまうが、やはり捨てられる。火照りを癒すためにウブな楯男に迫る。彼女が楯男をダンスに誘うシーンが印象的。密着する体。楯男の股間の高まりに驚く涼子。インテリかぶれだった涼子のその後の豹変もおもしろい。
 映画は楯男の成長譚でもあるけど、彼の視点を通して見た土佐人たちの群像劇でもある。愚かででも憎めない人々の存在感。それが都会と地方の間にまだあった大きな隔たり(まるで異国のような雰囲気)を浮かび上がらせていた。
 ラスト、東京に旅立つ楯男を駅で見送るトシちゃんの万歳シーンには、異国へと旅立つ若者を送るような感慨さえ沸き上がってきた。

2020/03/26

2020/03/26

75点

VOD/U-NEXT 


懐かしい風景

高度経済成長ど真ん中の時代の高知の漁村が舞台の作品です
田舎の閉塞した暮らしに嫌気がさして、
都会に出て行きたい主人公(江藤潤さん)
の妄想と葛藤を描いています
憧れのマドンナ(竹下景子さんが、めっちゃ、かわいい)は、都会から来た活動家に惚れてしまい、主人公には、目もくれてくれないし、都会に出て行った幼馴染たちは、傷を負って帰ってきています。そんな中で主人公は、半ば、追われるように都会に出て行きます。夢と希望を抱いて・・・
田舎育ちとしては、ちょっと時代が違いますが、
田舎で育った自分としては、主人公のもやもやした気持ちが、とっても判ってしまい、心に染みてしまいました。

2019/09/05

2019/09/06

75点

購入/DVD 


上京の準備。

黒木和雄 監督による、高知・風俗・青春・旅立ちドラマ。
高知の田舎町で、信用金庫に勤める楯男(江藤潤)は、脚本家を目指す内気な青年。
しかし、退廃的周囲と煩わしい故郷のしがらみに嫌気がさしていた・・・。

(昭和30年代の性に対する不道徳感を、全編に映し出す。不快感が著しいが、誇張しているわけでもない。
本作は、原作者が高知へ疎開した頃の自伝的体験が元になっているからです。)
(枯れ木に赤い布が絡まる映像が数回出てくるが、何を暗示しているのか解かりずらい。
調べてみるが・・・左翼思想、母親の溺愛、急進的、旅立ち・・・結局よくわからない~。)
(本作のメインディッシュとなるのは、狂女タマミとお爺の存在であろう。赤ん坊を生んで変身するタマミ、エネルギッシュなお爺、このユニークな二人がいて、物語をうごかす力となっている・・・。)