1990年、イランの大地震で被害を受けたコケール村は、1987年製作の映画「友だちのうちはどこ?」のロケ地であり、その映画を撮影したキアロスタミ監督が、映画に主演していた少年の安否を確認するため、息子と共にコケール村に向かうといった、ドキュメンタリー”風”の作品である。”風”というのは、完全なノンフィクションじゃないからである。地震から半年後に実際の被災地で撮影されており、出演者は、プロの俳優さんではないので、結構なリアリティーが感じられる。
ただ、なぜか違和感が多く感じられる作品でもある。ほぼ手ぶらの状態で被災地に入ろうとする主人公たち。言葉がつまる子供たちに執拗に地震の話を聞こうとしたり、言葉の端々に思いやりを感じられないことを感じてしまい、残念ながら「何しに来たんだコイツは?」という気分に私はなってしまった。都市部の人間である主人公たちと、現地の被災者たちの温度差というべきものだろうか。最後までよくわからずに終わっていったストーリーだった。
しかし被災地の現状がよくわかる映像だったので、その点に関しては評価できるものだと思う。