「あっしには関わりのねえことで」と楊枝を咥えて立ち去る
原題"Sans toit ni loi"で、屋根も法もなくの意。
モナというヒッピーの娘の死体が発見されるところから物語は始まる。彼女が村に現れたのは数週間前で、彼女と関わった人々の証言から、彼女が村祭りで酔っぱらって凍死するまでの行動を綴るという形式。
モナ(サンドリーヌ・ボネール)は18歳。ヒッチハイクをし、簡易テントで野宿し放浪するという屋根も法もない自由人。
彼女の信条は楽して生きることで、時に気儘なアルバイトで食費を稼ぎ、時に施しを受けて放浪を続ける。そんな彼女を自由だと思う娘もいれば、元学生運動活動家の農夫は自由とは孤独に生きることだと諭す。
そんな忠告も馬の耳に念仏で、不良グループに加わり、生活も心も荒んで力尽きる。
1980年代にはヒッピー文化も廃れていて、モナの楽して生きるという信条はそれとも違うが、浮浪者ともホームレスとも放浪者、風来坊、フーテンとも言い難く、単に放埓なだけの怠け者でしかない。
彼女が自由を求めていたというのも穿った見方で、自由とは何かという問いがこの作品にあるようにも思えない。
ただ孤独であったことは確かで、彼女が自由な生き方を求めていたとすれば、それは空想ないしは幻想でしかなく、人生、世の中はそんなに甘くはないとお説教するだけの作品に終わっていて、「あっしには関わりのねえことで」と真に自由人の木枯し紋次郎なら楊枝を咥えて立ち去る。