なんとなくあの男はああやって何度も女の前に姿を現すんじゃないかなーと、個人的にはそんな未来が見えた。人生長いから、もしかしたらその間に心が動くこともあるかもしれない。
ただ本編の大部分は何が良いのかさっぱり分からなかった。世の中のおじさんたちがこの映画を絶賛する意味が分からない。主人公のキャラクターが魅力的だとは思わないし、物語の謎も結局想像の域を出なかった。
主人公が愛or正義で葛藤するのは良いんだけど、そこに親友という要素が入ってきて複雑化してしまっている。結果焦点がぼやけてしまい、今ひとつ乗り切れない。
親友ならば説得して更生させるという選択肢は主人公の中に存在しないのだろうか。もしくは元恋人の愛の深さを説いて二人の仲を取り持つとか。
そもそもこの物語は「親友を訪ねてくる」という所から始まって、物語の大部分も「親友の死の謎を解く」というものであって、それがラブストーリーで締め括られるというのはなんだか妙な所に辿り着いたなという印象を受けてしまう。本来なら親友という要素をもっと大切にするべきなのだ。友情or正義の二律背反で主人公が苦悩するのであればまだ納得できた。
もしくは物語の大部分を主人公とヒロインの関係を深めるものに割くとか。人物評を見る限りではこちらの方が本来はやりたかったのだろうか(オーソンウェルズは三番手)。だがどうも二人で協力して事件の真相を追いかけている印象は薄い。大部分は主人公が一人で聞き込みをしているし、ヒロインはせいぜい翻訳係程度の仕事しかしていない。というかヒロインの動機が薄い。こいつは何をしたかったんだろう。恋人の死の真相を知りたかったとかそういうモチベーションはないの?
こういう世の中の評価に対して自分の評価がズレる作品はレビューを書くのが本当に難しい。識者の解説を求む。