ベニスに死す

べにすにしす|Death in Venice|Death in Venice

ベニスに死す

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レビューの数

124

平均評点

75.5(568人)

観たひと

903

観たいひと

93

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 イタリア フランス
製作年 1971
公開年月日 1971/10/2
上映時間 131分
製作会社 アルファ・チネマトグラフィカ・プロ
配給 ワーナー・ブラザース
レイティング 一般映画
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

純粋な美の具現と思えるような美少年に、魅入られた芸術家の苦悶と恍惚を描いた作品。製作総指揮はマリオ・ガッロ、製作・監督はルキノ・ヴィスコンティ、脚色はルキノ・ヴィスコンティとニコラ・バダルッコ、原作はトーマス・マン、撮影はパスカリーノ・デ・サンティス、音楽はグスタフ・マーラー(第3・第5交響曲より)、衣装デザインはピエロ・トージが各々担当。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

1911年のヴェニス(ヴェネチア)。ドイツ有数の作曲家・指揮者であるグスタフ・アシェンバッハ(ダーク・ボガード)は休暇をとって、ひとりこの水の都へやってきた。蒸気船やゴンドラの上で、さんざん不愉快な思いをしたアシェンバッハは、避暑地リドに着くと、すぐさまホテルに部屋をとった。サロンには世界各国からの観光客があつまっていた。アシェンバッハは、ポーランド人の家族にふと目をやった。母親(シルヴァーナ・マンガーノ)と三人の娘と家庭教師。そしてアッシェンバッハは、母親の隣りに座った一人の少年タジオ(ビヨルン・アンデルセン)に目を奪われた。すき通るような美貌と、なよやかな肢体、まるでギリシャの彫像を思わせるタジオに、アシェンバッハの胸はふるえた。その時からアシェンバッハの魂は完全にタジオの虜になってしまった。北アフリカから吹きよせる砂まじりの熱風シロッロによってヴェニスの空は鉛色によどみ、避暑にきたはずのアシェンバッハの心は沈みがちで、しかも過去の忌わしい事を思い出し、一層憂鬱な気分に落ち込んでいった。ますます募るタジオへの異常な憧憬と、相変らず重苦しい天候に耐え切れなくなったアシェンバッハは、ホテルを引き払おうと決意するが、出発の朝、朝食のテーブルでタジオを見た彼の決意が鈍る。だが駅に着くと、自分の荷物が手違いでスイスに送られてしまったため、アッシェンバッハはすぐにホテルに引き返した。彼の心は、タジオと再会できる喜びでうちふるえていた。彼はもう、タジオへの思いを隠そうともしなかった。タジオの行く所には、常にアシェンバッハの熱い眼差しがあった。タジオもそのことに気づき始めているようだ。しかしこの頃、ヴェニスには悪い疫病が瀰漫しはじめていたのだ。街のいたる所に、消毒液の匂いが立ちこめ、病いに冒され、黒く痩せ衰えた人々が、行き倒れになっていた。しかし、観光の街ヴェニスにとって旅行者に疫病を知られることは死活問題であり、地元民はそれをひた隠しにした。そのことを何とか聞き出したアシェンバッハは、それが真性コレラであることを知った。それでも彼はヴェニスを去ろうとはしなかった。彼は身も心もタジオの姿を追い求めて彷徨っていた。タジオのために、化粧をほどこし、若づくりをするアッシェンハッハだったが、コレラに冒され、極度の精神的疲労も加わり、彼の肉体は急速に衰えていった。浜辺の椅子にうずもれたアシェンバッハの目に、タジオのあの美しい肢体が映った。海のきらめきに溶け込んでゆくかの如きタジオの姿に、アシェンバッハの胸ははりさけんばかりとなる。そうして最後の力をふり絞って差しのべた手も力尽き、アッシェンバッハは、タジオの姿を瞳に焼き付けながら、遂に息絶えるのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2018年7月下旬特別号

巻頭特集 キネマ旬報創刊100年特別企画 第1弾 1970年代外国映画ベスト・テン:ベスト19グラビア解説

2011年10月下旬特別号

特別寄稿:新字幕。もうひとつの「ベニスに死す」

2011年10月上旬号

UPCOMING 新作紹介:「ベニスに死す ニュープリント上映」

1972年2月上旬決算特別号

特別グラビア 外国映画ベスト・テン:ベニスに死す/ライアンの娘/小さな巨人/わが青春のフロレンス/バニシング・ポイント/屋根の上のバイオリン弾き/哀しみのトリスターナ/ファイブ・イージー・ピーセス/告白/ボクサー

1971年10月上旬秋の特別号

今号の問題作:「ベニスに死す」

外国映画紹介:ベニスに死す

1971年9月下旬号

特別グラビア:ベニスに死す/ルキノ・ビスコンティ

特集研究 「ベニスに死す」でビスコンティが描いた恍惚と死:

シナリオ:ベニスに死す

1971年9月上旬号

旬報試写室:ベニスに死す

1971年5月上旬号

特別グラビア:ビスコンティの「ベニスに死す」

2024年

2024/02/04

65点

その他/図書館DVD貸出 
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あえてアンチ

一期一会。オーディションでアンドレセンを掘り当てれば、映画製作はあらかた片付いたようなもの。神に選ばれし少年と言い替えてもいい。トーマス・マンのフレーズを借りれば、「彼の姿は、形式の根源と神々の誕生を物語る詩人のことばのよう」に美しい。

 しかし、『ロリータ』のウラジーミル・ナボコフは、マンの『ベニスに死す』を下品なエセ文学だとこき下ろしている。マン自身、この小説は少年に恋する老年の芸術家のラブストーリーであると説明した。
 そして映画は、耽美的であるがやはり、巨星ヴィスコンティの権力と私欲の産物であることを疑わない。これは、老年男が禁断の白昼夢に身悶えするさまが、贅沢にもマーラーの甘美な旋律にのせて綴られたメロドラマなのである。タッジオとは、老いた作曲家の自尊と虚栄をあわれむ何者かである以前に、まさしく愛欲の対象として存在する生贄であるのだ。

 古典の名作に数多の賛否ある中、いまさら私ごとき映画シロウト風情が評価するのもおこがましいが、ここはあえて批判に一票を投じてみた。

2023/12/30

92点

選択しない 


芸術に見惚れる

マーラーの美しい曲が絵画の様な映像を、より格調を高くしており芸術的な香りが漂ってくる作品。
美少年の美しさに身惚れ、やがてコレラで息絶える老芸術家は美に殉死する巡礼者の如きだが、見ようによっては滑稽でもあるのが凄い。ビスコンティの傑作。

2023/07/14

2023/07/14

75点

その他/TSUTAYA DISCAS 
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憂鬱な映画

三度目です。その理由は、先日「Tar/ター」を見主人公のターがグスタフ・マーラーの5番を指揮・レコード制作するのが主題であった。
この交響曲5番の第4楽章(アダージェット)と言えば、「ベニスに死す」で一躍有名になった曲。
図書館でバーンスタイン指揮・ウイーンフィル版と小澤征爾指揮・ボストン版とを借りてきて聞き比べ、そしてもう一度DVDを見ることに。
映画は、トーマス・マンの自伝的な小説を元としているが、主人公のグスタフ・アッシェンバッハ(ダーク・ボガード)作曲家としてのマーラーがモデルとの解釈もある。限界を感じベニスのリドに避暑ではなく逃避した教授グスタフ。そこでポーランド一家の美青年タージオ(ビヨルン・アンデルセン)に心惹かれる。今の世の中LGBTが話題だが、この二人はまさにその世界ですね。リドからミュンヘンに帰る予定であったが、荷物の誤輸送で滞在が伸びたことが命取りに。コレラに犯され死す。なんとも憂鬱な映画だ。
kinenoteのあらすじでは、間違えて荷物が送られた先は、スイスとなっているが、「コモ」だったと思う。コモだと北イタリアのコモ湖があるやはり避暑地である。

2023/04/26

2023/04/26

70点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 


有名な作品だけど初鑑賞。タッジオ役のビョルン・アンドレセンの美少年ぶりと、グスタフ・マーラーの音楽がとても素晴らしかった。

2023/04/22

2023/04/22

77点

VOD/U-NEXT 
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芸術に殉じた男ひとり

ルキノ・ヴィスコンティ初見。美学を極めた作品だった。映像だけで一気に見せる求心力が本作の肝か。映画を純粋芸術の観点から語れば間違いなく100点に値する傑作だと思う。

タージオを何のメタファーと取るかで解釈が変わるだろう。若さや少年愛ととると見も蓋もないので、ここは素直に凡人が辿り着きえない領域に存在する芸術の具現化と解釈しておきたい。究極の美=芸術に殉じた作曲家はベニスに死すー。タイトルそのままと言えばその通りなのだが個人的には最も座りが良い。

数千人の候補者から選ばれたというタージオ役のビヨルン・アンデルセンが『ミッドサマー』の崖から飛び降りた老人と言われても俄かに信じ難い。既に亡くなったらしいが美の有限さと儚さを身を以て体現した正に砂時計のような人生だったと思う。

本作鑑賞のきっかけはnagaーkenさんのレビューだった。nagaーkenさん、ありがとうございました。そして寝落ちしていた不届きな妻をお許し下さい。

2023/04/19

2023/04/19

60点

選択しない 
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犯人はヤス

原作は読みましたので知ってはおりましたが。
「ベニスに死す」というタイトルなので主人公が亡くなるんだろうなと思っていたら、そのとおりになる。

遠景からズームで顔のアップに寄るシーンが数十回も出てきて、そのたびに不穏な印象を強めます。

絵も音楽も、衣装も調度品も美しくて素敵な一本ではありますが、空虚な言葉が飛び交う芸術論議はちょっと???でした。