プロフの「MY BEST MOVIE」に挙げています(奇を衒っているのは承知ですが)。ここをみたら若い人たちの評価があまりにも低いので、この映画がなぜすごいのかちょっと書いておかなければと思いました。
1984年に二十歳でした。当時多摩美芸術学科の一年生で、映像の授業でリュミエールとかメリエスの名前を覚えました。マルクス兄弟の『我輩はカモである』なんかも観ました。当時出たばかりのレーザーディスクをかけるだけで、楽な授業でしたね、先生にとっては。
そのころ佐藤忠男の『ヌーベルバーグ以後―自由をめざす映画』(中公新書、1971年初版)を読んでたいへん影響を受けました。ゴダールがいかに突出していたかを説明しているだけのような本です。古本がまだ安く手に入ります。
小林信彦の『世界の喜劇人』はいまでも版を重ねていますが、これにも影響を受けました。喜劇映画評論家の扱いで、ゴダールの名前が頻出します。
ゴダールは1959年の『勝手にしやがれ』でヌーベルバーグの旗手としてデビューしましたが、だんだん製作予算が減っていきました。この映画は1966年の作品ですが、「予算が少なくても、映画なんてナレーションと挿絵的な映像だけで成立する」ということを証明した、自主映画作家たちにとって記念碑のような映画です。喫茶店でコーヒーカップをかき混ぜて、その泡のアップを撮っていますが、それがまるで宇宙創生のようにみえます。舌っ足らずですがとりあえず。
追記・コーヒーカップのアップは、多摩美で教えを受けた美術評論家の峯村敏明先生が1977年ごろの『美術手帖』誌の座談会の中でピックアップされていました。それがきっかけでゴダールに興味を持ちました。