恐怖映画の傑作「シャイニング」は、今までなぜか見るチャンスがなく今日に至っていました。聞くところによると残酷シーンや血生臭い場面が少なく、ホラー初心者向きということなので、早速見てみることにしたのでした。
とは言え、もう最初の「日付」を表示する画面からして、なんか尋常な雰囲気ではなく、しかも音楽がすごーく不気味です。というわけで、ホラーな苦手な私としては、見るのは午前中、しかも恐くなったらスイッチを消すというやり方で、全部見るのに3、4日もかかりました。
俗に、世の中で一番恐いのは幽霊でも化け物でもなく、「人間さま」だといいますが、まさにそれを映画にしたのがこの「シャイニング」だと思いました。主人公の「狂気してゆく心」の恐さは、新聞の3面記事を読めば日常茶飯事のごとく私たちの周辺にゴロゴロしています。特に私はあの宗教団体の狂気を思い出してしまい、とても絵空事とは思えませんでした。
この際、主人公の狂気の理由はどうでもいいような気がします。怨霊であれ、カルトであれ、精神病であれ、とにかく狂気する心にまともな理由があるはずもなく、それは「こちら側」に住んでいるフツーの人には理解できないものだと思うからです。
それよりも私を恐がらせたのは、「狂気してゆく心」に引きずられてゆく身近な者の恐怖です(この映画では妻)。あの奥さんを演じた女優さんのなんと恐いこと。ごく普通の人間なのに、恐い・・・。これってどうしてなんでしょう? 狂気は狂気を呼び、恐怖は恐怖を呼ぶ。見ている私たちの神経までなんだかおかしくなりそうです。
狂気と正常は紙一重と申します。ごく身近にいる人が突然ジャック・ニコルソンになってしまったら??そんなことを考えると恐くて、夜も眠れません(笑)。
(1995/9/15 記)