ミツバチのささやき

みつばちのささやき|El Espiritu de la Colmena|El Espiritu de la Colmena

ミツバチのささやき

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レビューの数

106

平均評点

77.7(579人)

観たひと

884

観たいひと

100

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 スペイン
製作年 1973
公開年月日 1985/2/9
上映時間 99分
製作会社 エリアス・ケレヘタ・プロ
配給 フランス映画社
レイティング 一般映画
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

スペイン内戦がフランコの勝利に終結した直後、1940年の中部カスティーリャ高地の小さな村を舞台に6歳の少女アナと彼女の家族たちの日常を描く。製作はエリアス・ケレヘタ、監督・原案は「エル・スール」のビクトル・エリセでエリセのデビュー作にあたる。脚色・脚本はアンヘル・フェルナンデス・サントスとビクトル・エリセ、撮影はルイス・カドラード、音楽はルイス・デ・パブロ、編集はパブロ・G・デル・アモが担当。出演はアナ・トレント、イサベル・テリェリアなど。1985年2月9日公開(初公開時配給:フランス映画社)。ミニシアターの傑作上映企画『theアートシアター』として、HDリマスター版が2017年3月25日より上映(配給:アイ・ヴィー・シー)。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

1940年頃、スペイン中部のカスティーリャ高原の小さな村オジュエロスに一台のトラックが入っていく。移動巡回映写のトラックで、映画は「フランケンシュタイン」。喜ぶ子供たちの中にアナ(アナ・トレント)と姉のイザベル(イザベル・テリェリア)がいた。その頃父のフェルナンド(フェルナンド・フェルナン・ゴメス)は、養蜂場で、ミツバチの巣箱を点検する作業をしている。母のテレサ(テレサ・ジンペラ)は、室内にこもって、内戦で荒れはてた家や人々の様子を手紙に書き綴っている。いったい誰に宛てている手紙なのか、毎週のように、駅に向かい、列車に投函する。公民館のスクリーンには、少女メアリーが怪物フランケンシュタインと水辺で出会う美しいシーンが展開している。そのシーンに魅入られたアナは姉からフランケンシュタインが怪物ではなく精霊で、村のはずれの一軒家に隠れていると聞いた。学校の帰りにアナはイサベルに村のはずれの一軒家に誘われた。そこに精霊が住んでいるというのだ。別な日に一人でそこを訪れるアナ。夕方、イサベルは黒猫と遊んでいる。アナは父母のアルバムを見る。父あての母のポートレートには、“私が愛する、人間ぎらいさんへ”とある。網の中のミツバチにささやきかけるアナ。夜ふけに一人起き上ったアナは外に出る。列車から兵士が飛び降り井戸のある家に入って行く。彼はアナに拳銃を向けるが、子供だと知るとやさしくなる。足をけがした兵士は動けない様子だ。大きなリンゴを差し出すアナ。二人はアナが持って来た父のオルゴール時計で遊ぶ。その夜、井戸のある一軒家に銃声が響いた。翌朝、フェルナンドが警察に呼ばれる。オルゴール時計のせいだ。公民館に横たえられた兵士の死骸。食事の席でオルゴール時計をならすフェルナンド。アナにはすべてが分かった。井戸のある家に行き血の跡を見つめるアナ。その日、夜になってもアナは帰らなかった。心配する家族。そのころ、森の中のアナの前に、映画で見た怪物そっくりの精霊が姿をあらわした。発見されたアナは昏睡状態に陥っていた。家族のみんなが見守る。深夜、一人起き上がったアナは、窓をあけ、夜空を見つめるのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2018年7月下旬特別号

巻頭特集 キネマ旬報創刊100年特別企画 第1弾 1970年代外国映画ベスト・テン:ベスト19グラビア解説

1985年4月下旬号

外国映画紹介:ミツバチのささやき

1985年3月下旬号

外国映画批評:ミツバチのささやき

1985年1月下旬号

グラビア:ミツバチのささやき

1985年1月上旬号 戦後復刊900号記念特別号

試写室:ミツバチのささやき

2025/07/13

2025/07/13

70点

テレビ 


天使たちの不吉な予感

1973年のスペイン映画。フランケンシュタインの怪物の存在を信じる姉妹を描いたヴィクトル・エリセ監督の作品。

とても難解。ただ、画の美しさは非常に素晴らしい。絵画のような村や家の中の風景、ミツバチを思わせる人々の動き、蜂の巣のようなガラス戸の文様など、おそらく何かを象徴しているのだろうけれど何かは分からない、けれど美しいという表現がたくさん出てくる。その美しさを楽しむだけでも幻想の世界に入り込むような奥深さはあると思う。冒頭、姉妹の観ている映画の中の話なのかよく分からないようにした始め方は巧いと思った。物語の真相は観る側の解釈に委ねられているようなタイプの映画だ。

アナとイザベルの姉妹は顔が似ていないが、天使のような可愛らしさ。全く愛し合っているようには見えない父と母。不吉な予感をたくさん感じさせながら、特段何も起きないことで非常に退屈にも感じてしまう。一つの場面を短めに作ってあるのはその対策か。

2025/06/20

2025/06/20

84点

テレビ/有料放送/WOWOW 
字幕


こんなにも静かで、でも不安で、でも魅入ってしまう作品は、そうは出会えない

ネタバレ

備忘メモ:
大人(初老の夫と若い妻)は虚無感が漂うが、二人の姉妹イザベラとアナは元気。イザベラは現実的で、アナは夢想的。イザベラが死んだ真似してアナをからかってから、アナの行動が変わる。イザベラが他の子達と交じって焚火の上を飛び駆けるのをじっと眺めるアナ。夜、廃墟に出向き、そのまま行方不明になってしまう。アナの夢では、フランケンシュタインに出会う、彼の顔も寂しそう。フランケンシュタインは哀しい怪物(人間に造られた)だが、怪物よりも哀しみが強調されている。アナがそう感じたのだろう。そもそもの切っ掛けは、これもイザベラ。いい加減な感じで、あの廃墟にフランケンシュタインいるよ~、なんて言うから、アナは毎日通っちゃう。そこで、逃走中の兵士にあう。彼は妻の兄弟かも?あの死体は、彼を殺しに来て返り討ちに会った奴かな?
ラストの外へのドアの上が蜂の巣だった。ただ、右往左往するだけの存在を示唆しているのだろうか?

2025/03/16

2025/03/17

75点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


とにかく考察のネタが多過ぎて、あれこれ気にしながら観るよりは、一旦何も考えずにこの幻想的かつ美しい映像とアナの無垢な瞳に魅入ってしまう方がいいのかも。後から考えると姉のイザベルの行動が色々と気になった。あの片付けられたベッドは彼女の死を意味してるのかな。制作当時のスペインの情勢からあからさまな政府への批判など出来るはずもなく、こうして所々暗示を仕掛けていった結果、まさに映像で語る名画に仕上がったのは何とも皮肉な気がするけど。蜂の巣の様な模様のガラス窓から差し込む夕陽?に照らされたピアノが置かれた部屋のシーンは絵画の様な美しさで思わずうっとりした。

2012/03/28

2025/03/10

90点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


ヴィクトル・エリセ監督のメタファーのささやき。

フランコ総統の独裁政治は、彼が死ぬ1975まで続いた。本作の製作・公開年は、当局の検閲があったと
思われる。1973年には、フランコの腹心の部下が「バスク祖国と自由(ETA)」の爆破テロで殺害された
(Wiki)。独裁政権では、バスク語とカタルーニャ語は使用禁止となっていた(Wiki)。そのカスティーリャ地方
の小さな村が舞台。時は1940年で、世界中が戦火に包まれていたが、スペインでは長い内線が終わり、
フランコ独裁政権が確立していた頃。

村に巡回映画のトラックがやって来る。公民館で上映されたのが、1931年のボリス・カーロフ主演の
「フランケンシュタイン」。ラジオしかない時代、絵が動いて音が出れば驚異の世界が出現する。老若男女が
詰めかけて大盛況。イザベルとアナも映画に魅せられた。しかしアナは、少女と怪物が死んだ理由が判ら
ない。夜、ベッドをともにする姉のイザベルに尋ねるのだが、姉も判ったような判らない答え。
二人の父は養蜂家。蜜蜂の生態を観察し、働くばかりで死んでしまう蜂に、ある種の感慨を持つ。妻は内戦
で行方知れずの人に手紙を書き続ける。返信はあるのだろうか。夫との関係は冷え切っているようで、夫婦
の会話はない。可愛い姉妹がいるのだが、この家庭には温かさに欠ける。
姉妹も対照的。アナは素直で、姉のイタズラに引っかかる。イザベラは死んだふりをするが、度が過ぎた遊
びで、アナは怖がるだけ。家の近くには廃家があり、姉妹の遊び場ともなる。近くに鉄道線路があり、走る
列車から、一人の男が飛び降りる。男は廃屋へ逃げ込む。アナはフランケンシュタインを思い出したのか、
男に親切に接する。家から父親のコートを持ってきて、男に着させる。
ある日、廃屋に響く機関銃弾。男は警察に射殺される。男が着ていたコートから、アナの父親が呼ばれるが、
事態を理解できないだけ。母親は手紙を投函することなく燃やしてしまう。あの男宛のものだったのだろうか。

映画は説明的な描写は少ない。監督は検閲を嫌って、物語世界とは異なる暗喩の映画とした。観客は一つ
一つ暗喩のピースを当てはめる。蜜蜂の世界はフランコ独裁政治、冷え切った家庭は内戦で傷ついたスペ
イン社会、フランケンシュタインは制御できない内戦の象徴。アナの純粋さに、スペインの未来の明るさを
託したように感じる。メタファーの名作。

2025/03/08

2025/03/08

90点

テレビ/無料放送/NHK 
字幕


民衆が分断される内戦があり

その結果、
表現の自由が失われた国家が
たくさんあった。
そんな国の一つ、スペインでは、
子供たちを守るためにがんばったのは精霊だった。

フランコ独裁の終了まであと数年。
精霊たち、よろしくね。

一貫して胸が締め付けられるような映像。
検閲をのがれるために象徴を重ねる映像。
そして生まれたこの傑作。
アナ、forever !

2025/02/20

2025/03/08

80点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


列車ポスト

◎ セリフも少ないが、状況説明も少ない。作る側に勇気がいる作り方。そして、唐突と言っていいエンディング。
◎ 列車に郵便ポストの差し出し口がある。これは効率的だが、多分不便。