ダーリントンの屋敷が主な舞台となる.執事やメイドたちが屋敷で職に就き,また離れていく.若い女と男とが行き交うこの屋敷には,さすらう恋愛の放浪者たちがいて,特に恋愛を求めているのはメイド頭だと,ジム・スティーブンス(アンソニー・ホプキンス)はボヤいてもいる.そんな彼は75歳になる父「年長のスティーブンス」(ピーター・ボーガン)を職場のダーリントンに呼び寄せ,耄碌して失態が続く父を大目にみながら,老い先を見ている.父は父で母の浮気のために不幸に死にかけてもいる.
メイド頭となるのはケントンさん(エマ・トンプソン)で,彼女は案の定,スティーブンスと恋に落ちかけるが,淡い失恋があり,涙を流し,20年後にはベン夫人になって,孫が生まれようとしている.父は鼻先に汗をかいている.それも涙に見えなくもない.子スティーブンスは父にハンカチを渡している.スティーブンスには妙に管理をしたがっている.仕事柄,あらゆる雑事を把握しなけばならないからなのだろうか.鍵穴から覗き見る.政治の際どい話を聞かないふりをしながらしっかり聴いている.あるいは廊下から聞き耳をたてて室内をうかがっている.
父はつまずいて転び,銀器をひっくり返す.サーブをすることの限界がきているが,父はそれを敷石が浮いているせいにしようとしている.中国人形も見える.英国の秩序と伝統を父が体現しているというのだろうか.生命の神秘を教えることは堅物のスティーブンスには困難でもある.彼は照明の下を動き回り,時々,突然,振り返る.
自動車が庭先に集まってくると,要人たちが顔を並べ,ドイツの復興も問題にしている.父は座り込みうずくまっている.ダーリントン卿(ジェームズ・フォックス)は人がいいようであり,アメリカ人(クリストファー・リーヴ)とやや対立する場面もある.父が死んでいるが,スティーブンスはそれでも仕事を続ける.歌を歌う外国人女性がいる.レコードをかかり,葉巻を吸いスティーブンスは満足気である.一方で主人は,ユダヤ人で亡命者のメイドたちを解雇しようとしている.戦後,こうした卿の言動は,反逆罪ともなりかねない,ナチス贔屓として非難され,卿は狂ってしまったらしい.卿は新聞を読み,本を読む.
過ちを正す旅として,20年後のスティーブンスはケントンさんに逢おうとしている.海辺にやってくる.雨が降るバス停にバスがやってくる.鳩が卓球ホールに入り込んでしまうが,アメリカ人は掴んでその鳩を外へ飛ばしている.