EECが出来たのが1958年、ルビッチは鬼籍に入っていた。
ネタバレ
エルンスト・ルビッチは1892年ベルリン生まれ(Wiki)。ドイツ帝国を熟知していたはず。アメリカに招かれ
ソフィスティケートされたコメディで一時代を築いた。当然、第一次世界大戦の悲惨さは心の奥底に沈殿して
いたのだろう。仏独の兵士の悲劇に心を痛める家族の物語を映画化した。原作は戯曲で、互いに敵国語を
学び、音楽の道に進んだ二人の兵士の設定なっていたが、ハリウッド映画として英語劇となり、音楽家という
設定のみ引き継いだ形になった。
1919年のフランスの大戦勝利記念パレードが写されるが、片足を失った兵士の股抜きショット、という
シニカルなオープニング。戦前はオーケストラでバイオリンを弾いていたポールは、神父のところへ罪を犯
した、と告解に行く。塹壕戦でポールはドイツ軍兵士を殺す。兵士は息を引き取るまで手帳に日記を書き
続けていた。兵士はパリに留学経験があり、フランスを愛していた。なぜ殺し合うのか、という疑問が綴られ、
署名で終った。ウォルター・ヘルダーリン、そして住所だった。
神父はポールの戦争の話を聞いても、ありきたりのことしか言わない。ただお茶を濁すだけ。
ついにポールはドイツのヘルダーリンの住んでいた町に向う。ウォルターの両親に許しを請うのだ。跪くのだ。
ウォルターの残した住所には、父親が医院を構えていた。妻と娘がいたが、戦後となり、その美貌の娘エルサ
をねらう輩もやって来る。ヘルダーリン医師は断固とそういう輩を排除した。
ポールはウォルターの墓参りを続けた。その姿をエルサが見ていると、近くの墓守が彼は何度も墓参りに
来ていると告げる。ポールはとうとうヘルダーリン医師と面会することができた。しかし医師はフランス人と
聞くと態度を急変させ、ポールを追い出す。エルサとポールが一足早く恋仲になるが、ポールがウォルター
を殺したという話には激しく動揺する。エルサはすべてを飲み込み、ポールの戦争で心を痛めた人だ、
と両親に語り、ヘルダーリン家に新しい息子を迎え入れることになった。
ともかくポールとヘルダーリンとの対話は息詰まるもの。掛け時計のチクタクだけが背後で響く。ウォルター
が亡くなって音楽は封印されていたのだ。しかしついにポールの気持ちがヘルダーリン家を解かした。
ポールのバイオリンの演奏とエルザのピアノの共演が感動を盛り上げる。悲痛な話だが、ユーモアも
交えたルビッチの語り口は絶妙。感動篇でした。