新日本開発会長深沢義則は、戦後満洲浪人と称して、ある元子爵のもとに身を寄せその肩書を利用して、法の裏側を巧みに泳ぎまわり今は経済界裏街道の旗頭にのし上っていた。彼のあくどいやり口は、多くの犠牲者を出していた。その一人林商事の社長は、深沢の請負業者郷田から借りた高利の金を返済できず放火自殺をした。林哲也はその息子だ。また郷田にシマを潰され、親分を殺された近松組の多田健吉もその犠牲者であった。そして最後に、根来恭平は、元子爵であり深沢を親身に世話しながら遂に深沢に屈し、妻を奪われ、宝石など莫大な財産を取られ、発狂して病院送りとなった父を持つ、身であった。根来は大学で法律を学びながら深沢に強い復讐心を抱くと共に、穴だらけの法律に不信の念を抱いていた。そして父の仇深沢に復讐を決意すると、彼は同時に、大学時代の親友大崎にも対決することになった。彼は大学時代、根来と森知子を奪い合った仲であったが、今は検事となっていた。恭平は郷田が経営するナイトクラブに、サキソフォン奏者として乗りこみ、郷田にとりいって、深沢の周辺を探った。まず極東信用金庫の理事宇部泰助から、不正のある帳簿を奪い大崎に送った。深沢の悪さはそこからくずれるかに見えたが、せっかく逮捕した宇部を、郷田の計略にかかり、殺させてしまった。恭平の攻撃は更に、財務省小山課長に向けられた。深沢が計画する白雲山開発のためには、小山の認可が必要であった。ナイトクラブの踊り子や女給を動員して小山の汚職の一切を吐かした恭平は、そのテープと、葬送行進曲、を深沢に電話で流し、深沢を恐怖に陥し入れた。だが、その小山も、深沢の計に落ちて殺された。憤激した恭平は、大崎の手ぬるさにあきたらず、哲也、健吉をつれて、深沢の本拠地“かつら苑”にのりこんだ。いち早くこの情報を探知した深沢は、空中ケーブルに時限爆弾を仕掛けて、待ちかまえていた。だが勝利に酔った深沢は、空中ケーブルを見ながら、恭平が落した爆弾で車ごと焼け死んだ。ケーブルの中の恭平らは、折しも上空を飛ぶヘリコプターに救助された。そしてかけつけた大崎らの手に依って、郷田も、遂に手錠をかけられた。