三輪重夫と岩淵とみ子は高校三年仲の良いクラスメイトである。重夫は小さい時に母親を亡くし、とみ子は父親を亡くして母親に育てられた。似たような境遇が、二人を一層親密にさせた。彼等には片親の子にあり勝ちな暗い影はみじんもなかった。或る日、とみ子の母親真知子が風邪をひいて寝こんだ。とみ子は三輪医院に電話した。それから毎日、重夫の父貞一が真知子の診察に来た。重夫ととみ子は、父と母がそれぞれ仲良くつきあっていけるようにいろいろと気を使った。そんな頃、とみ子の祖母おかねが上京して来た。真知子は貞一と語らっておかねを羽田空港へ連れてゆき、遊覧飛行機に乗せた。その時、真知子が捻挫したため、貞一が彼女を抱いているところを、真知子が校長をしているドレス・センターの生徒達が写真に撮った。その写真は家に送られて来た。ちょうど、重夫ととみ子が試験勉強をしている時だったので、とみ子はその写真をみた。スカートから白い足を露わに貞一に抱かれている写真なのでとみ子は、「汚らしいわ!」と言うと泣き出した。とみ子は親たちへのレジスタンスのために家出を決意した。重夫も不承不承同意した。重夫は、とみ子一人に家出させるのは危険と思ったのだ。真知子は二人の書き置きをみて仰天した。真知子は早速貞一の家にかけつけた。ちょうど、そこに旅館“柳家”のお内儀から電話がかかってきた。お内儀が三輪医院の患者で、偶然重夫の顔を見知っていたのであった。貞一と真知子がかつけると、二人は一室で寝ていた。部屋の隅と隅にフトンが敷かれ、真中には机が置かれてあった。安心した貞一と真知子も“柳家”で一泊することにした。翌朝、重夫、とみ子の二人は旅館に近い堤防で自然に抱きあうのだった。