江戸は両国、泥棒横町を一座の本拠とする女座長の瀬川喜久之助には、大道芸人の元締めとして睨みをきかす竜運和尚、一座のお囃子をつとめる浪人鶴木勘十郎が首ったけ。ある日、スリの一味と間違えられた旅の男が、この一座に逃げ込んだ。役者くずれの流れ者芳之助だが、鶴木の機転で「弁天小僧」の一幕を見事にこなし、捕方の眼をくらますことができた。そこで、一座では喜久之助に邪恋を抱く楽之助の代役を頼もうとしたか、すでに芳之助の姿は見当らなかった。その芳之助は居酒屋たる平で鶴木に会い、初めて喜久之助に引き合わされた。喜久之助は百両という一座の借金を肩代りしてくれた但馬屋に、金で自由にされている身だが、芳之助に一目惚れ。鶴木と芳之助は喜久之助を但馬屋の金しばりから救おうと、イカサマ賭博をたくらむが、胴元の竜運和尚に看破きれて失敗に終った。しかも、芳之助は楽之助の挑戦を受け、誤って殺してしまった。二人の勝負に百両を賭けて竜運に勝った鶴木は、喜久之助に金をやった。あやまちとはいえ人を殺めた明日のない芳之助にとって、喜久之助の甘い囁きも所詮は無縁のものだった。その夜、たる平に現われた芳之助に、お光はすすんで身を任せた。喜久之助が但馬屋に返した金はニセ金と判り芳之助は奉行所にひかれた。が、鶴木の芝之助に対する友情に動かされた竜運が、自分こそニセ金つくりだと名乗り出て、芳之助は喜久之助と抱き合うことができた。ところが、嫉妬にもえるお光が、楽之助殺しの下手人は芳之助だと訴え出たので、またもや芳之助に追手が迫ったが、喜久之助のはからいで芳之助は逃げた。一方、鶴木は米の買い占めで暴利をむさぼっている但馬屋を斬り捨て、竜運和尚も破牢して自由の身となった。はるか両国の夜空を焦がす火の手を仰ぎながら、竜連は江戸でニセ金つくりを続けて世の中をぶちこわしてやると豪語し、鶴木は喜久之助が芳之助のあとを追って江戸を出るのを見守ってやろうと呟き、旅に出る芳之助を見送るのだった。