昭和十三年の春、京都嵯峨の料亭、蒔岡家の四姉妹と幸子の夫貞之助が花見に来ている。幸子は今度の雪子の縁談を本家の長姉鶴子から、家系に問題があるとの理由で断わるように言われ苛立っていた。五年前末娘の妙子が、船場の貴金属商奥畑の息子啓ぼんと駆け落し、その事件が新聞ダネになり、しかも雪子と間違って書かれ、本家の辰雄が奔走して取消し記事を出させたら、妙子の名をより大きく出す結果になったことがあった。妙子も雪子も本家の不手際から分家の幸子の家に居つくようになってしまったのである。人形作りに励む妙子は、啓ぼんとの仲も冷め、奥畑家にもと奉公していて、現在は写真家で立とうとしている板倉と親密な間柄になっていたが、板倉は中耳炎をこじらせて急逝してしまう。雪子は、鶴子が夫の筋から持ってきた銀行員、幸子の女学校時代の友人、陣場夫人の紹介の水産技官野村、幸子の行きつけの美容院のマダム井谷が持ってきた製薬会社の副社長橋寺と見合いするが、いずれも雪子が気にいらなかったりとうまくいかなかった。そんな折、本家では辰雄が会社からもって帰ってきた東京赴任の知らせに、鶴子が動転していた。井谷がまた雪子に見合い話を持ってきた。相手は華族の東谷子爵の孫である。板倉が死んでから酒場通いを続けていた妙子は、その酒場のバーテンダー・三好のところに押しかけ同棲してしまうが、貞之助が会いに行くと、三好はしっかりした青年で、妙子も地道な生活設計を立てているようで心配はなかった。鶴子は悩んだ末東京へ行くことを決心し、雪子も東谷との縁談がまとまる。そして、冬の大阪駅、雪子や貞之助らが見送るなか、鶴子たちを乗せた汽車は出発した。