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鑑賞日 2025/04/13  登録日 2025/04/14  評点 40点 

鑑賞方法 テレビ/無料放送/BS12 トゥエルビ 
3D/字幕 -/-
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金属が木を削る,狂気のありか

富山から平戸へ,立山が見える都市から,東シナ海を荒らす台風の通るとしへと旅をする男,倉島英二(高倉健)がいる.彼は旅の途中で,少しおかしな男たちと出会い,別れていく.それは旅なのか,それとも放浪なのか,微妙な問いを立てるキャンピングカーの男(ビートたけし)がいる.彼は種田山頭火に心酔しているのか,倉島の旅先で山頭火の詩集を手渡し,消えていく.また出会うのは,いかめしの実演販売のために全国を回っている主任(草なぎ剛)とある男(佐藤浩市)で,倉島の車や風体を見て,突然に話しかけてきて,故障した車から荷を載せ替え,京都での販売に倉島を使って,売り上げる.彼らも少し不気味であり,主任に付いている男は,のちに死んだと思われていた男と判明する.彼は本当は死んでいて,霊のように倉島を導いているようにも感じられる.また,阪神ファンの男(岡村隆史),平戸の漁協の男(石倉三郎)なども現れてくる.そして倉島の亡き妻(田中裕子)もところどころで画面に現れる.
妻は,倉島のフラッシュバックとして回想的に断想的に現れてくる.彼女は歌っている.時には,山城の石垣が残る廃墟で歌っている.海辺を歩く.大阪で焼きそばを食べている.風鈴を鳴らしている.旅を通して倉島は彼女に会う.彼女が残した「あなたへ」と記された葉書と彼女の遺骨を携え,彼は西へと進んでいく.その道行は,死後の世界への侵入でもある.西には強い風が吹き始め,雨の中,妻の故郷である漁師町に倉島はたどり着いている.
倉島は,終始,ふざけた様子もなく真面目に妻の死に向き合っているようである.彼は,刑務官をしており,木工の技術を受刑者に伝達する立場にもある.彼のその生真面目は,盲信的にも映り,その真面目の裏に垣間見える狂気が映画と物語を動かしているようにも感じる.