男性      女性

※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。

NEWS

KINENOTE公式Twitter

鑑賞日 2012/06/23  登録日 2025/04/16  評点 55点 

鑑賞方法 選択しない 
3D/字幕 -/-
いいね!レビューランキング -位

テレビ購入が一大イヹントだつた時代

 シリーズ第六弾、「サザエさんの新婚家庭」であります。「新婚家庭」は「スイートホーム」と読ませます。監督・青柳信雄、脚本・笠原良三と蓮池義雄、音楽は神津善行。総天然色シネマスコープ(東宝スコープ)、84分。

 愈々マスオさん(小泉博)との新婚生活をスタアトさせたサザエさん(江利チエミ)。フグ田家は磯野家の二階に同居する事になりました。しかしカツオ(白田肇)やワカメ(猿若久美恵)らに邪魔されて二人きりの時間がありません。しかも無理して月賦で買つたテレビを見に近所の皆がやつて来て、マスオは部屋の片隅で夕食を取らねばならない羽目に。

 マスオの妹タイ子(白川由美)がやつて来て、皆をキャンプに誘ひます。しかしキャンプ場では隣の貧乏学生辰野(江原達怡)と鈴木(加藤春哉)に集られて大損害。
 家に帰ると、父(藤原釜足)が一人で留守番、母フネ(清川虹子)が入院したと云ふ。磯野家の家事も総て引き受けるサザエは天手古舞ひ。

 一方マスオも亡くなつた同僚の未亡人・鮎子(北川町子)の就職の世話を頼まれ忙しい。鮎子はバアに勤めてゐますが、昼の仕事を望んでゐました。そのバアのマッチをマスオの背広から見つけたサザエは怪しむのでした。
 そしてバスの車窓から偶然、鮎子と並んで歩くマスオの姿を発見するサザエは、完全に誤解します。自棄酒を呑んで帰宅し、マスオに注意されると逆切れし、マスオの所為だと騒ぎます。結果喧嘩をしてしまふ二人です。

 サザエは仲人の山中老人(柳家金語楼)に相談に出かけると、山中家でも猛烈な夫婦喧嘩の最中でした。耳が遠い妻(森川信)の為に補聴器を買つてきたのが原因らしい。サザエは喧嘩を仲裁すると、我が身を振り返りマスオと仲直りすることを決めます。
 同じく塞いでゐたマスオに朗報が。社長秘書に異動と、予てより頼んでゐた社宅が当つたのであります。サザエも反省して謝り、終り良ければ総て良し......

 今回もエピソオドがテンコ盛り。フグ田家が磯野家と同居する事になり、以後このケースを「マスオさん形式」と呼ぶやうになります。母フネの入院騒ぎでサザエが大忙し、構つて貰へないマスオさんがムクれます。サザエを怒鳴るなど、感情的な面も見せます。
 カツオは悪戯と共に守銭奴ぶりがエスカレート。それには目的があり、ワカメと一緒に母フネにプレゼントする為でした。普段ガミガミ云ふフネも「みんな好い子だ」と甘くなります。

 マスオの妹タイ子は辰野くんと初顔合せ。初対面の印象は悪かつたけれど、いつの間にか仲良くなつてゐて、二人は後に夫婦となるのでした。未亡人鮎子さんはサザエさんに焼餅を焼かせる為のキャラ。演じた北川町子は児玉清夫人であります。雪村いづみは前回とは別人役で登場、映画的には不要な役ですが、スタアとしての顔見せ出演ですかな。サザエが「ますらを派出夫」と間違へるのが、蛭田課長役の沢村いき雄。

 マスオの上司に伊藤久哉、同僚には八波むと志・逗子とんぼ・藤村有弘。藤村は普通の話し方をする方が寧ろ違和感があります。電気冷蔵庫を始め「電気〇〇」に感心してゐます。家庭内インターホンも登場。反応の鈍い人を「蛍光灯」と呼んでゐました。スイッチを入れてから点灯するまでに間があつたからです。さう云へば昔のブラウン管テレビも、電源を入れてから映るまで少し時間がかかつてゐましたね。いづれにせよ、庶民の生活がどんどん豊かになつてゆく時代でした。

 映画としての纏まりとしてはイマイチ締まりがなく、芸達者たちの動きに頼るのは駅前シリーズと同じ。でもかういふプログラムピクチュアによる収益が、黒澤や成瀬の映画を撮る資金源になつてゐたのですねえ......