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鑑賞日 2012/06/07  登録日 2025/04/10  評点 65点 

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3D/字幕 -/-
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江利チエミの当り役登場

 江利チエミの当り役となつた「サザエさん(1956)」であります。原作は勿論長谷川町子の人気四コマ漫画。「サザエさん」の映画化はこれが初ではなくて、1948年には東屋トン子主演で製作され、1950年には続篇も作られてゐました。監督は青柳信雄、脚本は笠原良三、音楽は「お祭りマンボ」の原六朗。白黒スタンダード、86分。

 サザエさん(江利チエミ)は高校を卒業して、当時の言葉で云へば「花嫁修業中」の「家事手伝ひ」。磯野家は父(藤原釜足)、母(清川虹子)、弟カツオ(小畑やすし)、妹ワカメ(松島トモ子)と五人暮らしです。

 家族に内緒で入社試験を受けた雑誌社「女性クラブ」から合格通知が届いたサザエ。勇んで初出社しますが(背中にカツオが悪戯で「おてんば」の紙を貼り、サザエは気付かぬまゝ半日過す)、間違へて山高商事に行つてしまふ。ここには運命の人フグ田君(小泉博)がゐて、親切に女性クラブの事務所を教へてくれました。フグ田君にときめくサザエです。

 女性クラブの初仕事は、作家神田大六(花菱アチャコ)の原稿取り。しかし神田は、サザエが以前失礼な態度を取つて怒らせた人物でした。慌てて神田宅を逃げ出し大失敗。編集長(丘寵児)は激怒しサザエは即刻クビに。紹介者キミ子(若山セツ子)の面目も丸つぶれです。

 しよんぼりしてゐる所でフグ田君と再会し、彼の紹介で探偵事務所への就職が決まります。早速舞込んだ素行調査の依頼対象は、何と磯野家に下宿してゐるいとこのノリスケ君(仲代達矢)。彼に見合話があるらしい。張り切るサザエさん、老婆に扮装してノリスケを尾行します。すると、彼はサザエの親友ミチコ(青山京子)と恋仲である事が判明しました......

 お馴染みサザエさん一家の登場ですが、現在も続くアニメ作品は可也マイルドな味付けがされてゐるのに対し、劇場版は原作寄りのテイストであります。サザエは相当お転婆。叱られると不貞腐れるし、初対面の紳士にも失礼な物言ひをして常識も欠如してゐるやうです。底抜けに明るい江利チエミの演技が救ひ。
 彼女が出るからにはやはり歌ひ踊るシーンはファンサアヸスとして必須。妄想中のミュージカルシーンが愉しい。松島トモ子も歌ふし、ダークダックスの四人も数か所で不自然に登場、主題歌も歌ひます。

 両親はまだ「波平」「フネ」の名は付されてなくて、単に「父親」「母親」となつてゐます。表札には「磯野松太郎」となつてゐて、まだ設定が固つてゐないやうです。父は藤原釜足で、イマイチ威厳の無いお父さんです。母は清川虹子、サザエには何かとガミガミ叱つてゐます。しかし自分も同じやうなポカミスを連発するところがイメエヂと違ひます。

 カツオの小畑やすし、ワカメの松島トモ子は共に名子役。一見しつかりしてゐるやうですが、お使ひを頼まれても、途中で何か興味を引くものがあればあつさり忘れます。下宿人ノリスケ君は何と仲代達矢。青山京子のミチコさんと早々と結婚します。そしてフグ田マスオさんはイケメンの小泉博。親切で仕事が出来てハンサムとくればサザエならずとも心奪はれる事でせう。

 その他花菱アチャコ、柳家金語楼、森川信らを無駄に起用し、この年デビュしたばかりの白川由美が「およしチャン」として顔を見せてゐます。この人、シリーズ後半ではマスオさんの妹タイ子さんとしてレギュラー入りします。

 他愛の無いお話ですが、破綻なく無難に演出した青柳信雄と、四コマ漫画を強引に脚本化した笠原良三のコムビは以後もシリーズを支へ、江利チエミの魅力を引き出しながらも、しつかりサザエさんの世界を再現した娯楽作と申せませう。