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鑑賞日 2012/05/23  登録日 2025/04/01  評点 60点 

鑑賞方法 選択しない 
3D/字幕 -/-
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まさに大忍術のつるべ打ち

 1966年公開の「大忍術映画 ワタリ」。原作者は無論白土三平、忍者劇画の第一人者であります。監督は船床定男、脚本は伊上勝と西村俊介、音楽は「月光仮面」の小川寛興となつとります。

 忍者の里・伊賀の国。百地三太夫(内田朝雄)をカシラとする百地党と、藤林長門(瑳川哲郎)を首領とする藤林組が勢力争ひしてゐます。その争ひの渦中に、ひとり笛を吹く少年あり。ワタリ(金子吉延)と名乗つた彼は子供ながら大人顔負けの忍術使ひ、三太夫や大頭・音羽の城戸(大友柳太朗)も逃がしてしまひます。

 伊賀では下忍養成所があり、他国から幼児を攫つて来ては、そこで忍者として養成してゐました。だから下忍をいくら無駄遣ひしても次から次へと補充が利くので、若者たちの生命を軽んじてゐます。それを知つたワタリは義憤を感じ、友人になつた養成所のカズラ(伊藤敏孝)に、養成所なんかやめよと言ふ。

 カズラにはツユキ(本間千代子)と云ふくノ一の姉がゐて、やはり伊賀忍者の新次郎(村井国夫)と恋仲です。新次郎は伊賀を抜けてツユキと共に暮らす事を念じてゐますが、その話を百地三太夫に聞かれてしまひ、夫婦になる事を許す条件に、五月雨城の城主を消す事を命じます。しかしこれは罠で、五月雨城には武田勢の強力な伊賀崎六人衆が待ち構へてゐたのでした......

 「少年スタア」金子吉延がワタリを、爺を牧冬吉が演じ、この二人は後の「赤影」で夫々、青影・白影を演じる事になります。ワタリは年少ながら既に大人と互角以上の忍術を駆使し、主題歌「ワタリ」「ワタリまーち」に乗つて縦横無尽の大活躍です。知恵も廻り危機に陥つても他者からの助けなしで自力で活路を見出します。

 ワルのカシラは内田朝雄の筈でしたが、実権を握るのは大頭の大友柳太朗。顔を真白にして笑つてしまふメイク。この顔で高笑ひするから、もう漫画の世界です。しかも敵対する藤林党の楯岡の道順(天津敏)にも化けて、両党をも操る影の支配者。一人二役ならぬ二人一役と言ひますか。

 ヒロイン本間千代子は恋人村井国夫が死んだと思ひ込み、自爆してしまふ。弟カズラの伊藤敏孝も壮絶な最期を遂げます。自らの死と引換へにする大技。養成所の落ちこぼれはルーキー新一。お約束の「イヤーンイヤーン」「これはえらいことですよ」もあり。

 特撮監督は倉田準二。現在の眼でその出来の稚拙さを呵ふのは簡単ですが、本家東宝だつて低予算作品の特撮物は大したことはない事を考へたら、頑張つてゐるのでは。如何にも合成然とした画面が却つて微笑ましい。などと云ふ観客がゐるからダメなんだ、と非難されさうですが。幻影の蛾に襲撃される場面ではアニメーション合成を駆使してゐます。

 タイトル通り派手な大忍術の連続で、少年たちの心をグッと掴んだ娯楽作品となりました。尤も原作者白土三平は改変ぶりに激怒したさうで、続篇は叶はず、次の企画は横山光輝原作の「仮面の忍者赤影」となるのでした。