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ドマーニ! 愛のことづて
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映画の冒頭、妻の「おはよう」に平手打ちで応えた夫の姿に度肝を抜かれる。 未だに連合国軍の残る戦後イタリアを舞台に描かれる保守的な社会を生き抜いた女性たちの物語。夫や舅に苦しめられ、外では「女だから」という理由で男よりも低い給金で働かされる。そんな姿を見ている娘には「母のような人生は絶対に嫌だ」と言われてしまう。裕福な彼氏と結婚して、幸せを掴もうとする娘だが、果たして女の幸せとは何だろう?好きな男と一緒になることか?少なくとも、こんな酷い男たちの許可がなければ何もできない不自由な暮らしの中に幸せなんてなさそうだ。 夫の暴力を歌と踊りでオペレッタ調に描いたり、直接的な描写は少なめとはいえ、現代の感覚で観ていると、あまりに酷い男たちと、それに耐えるのが当然とばかりの女性たちに若干、辟易させられる。ここで描かれるイタリア人の気質は、日本人のそれとは全く異なるが、どこか成瀬巳喜男らの映画で見たような夫婦のドラマのように見えてくる。妻はその苦しさすらも受け入れ、それこそが夫婦生活だと悟るのか、それとも好きな男と一緒になることが幸せだというのか。そんな気持ちで映画を観ていると、終盤になるにつれ、妻には酷い男たちから離れ幸せになって欲しいと思ってしまう。当然、夫に嘘をつき向かった先には好きな男がいるはずだ。 と、そんな風に映画を観ていたので驚かされた。その結末は想像してなかった。いや、想像の中にはあったものの、心情としてその結末になるとは思っていなかった、というのが正しいか。娘の婚約を衝撃的なやり方で破談にしたことも、娘の結婚衣装の為のへそくりの使い道も、思えばすべてこの結末に繋がっていた。娘が思う「絶対に嫌な母親の生き方」は、当然、母親の思う「絶対に嫌な娘の生き方」だったのだ。 そう思い返すと、あの掃除婦が妻に直接わたした手紙は恋文ではなく投票についてのもので、きっと掃除婦も妻と同じような苦しみを味わっていたからこその手渡しだったのかも。そして嘘をつかれた夫が鬼気迫る表情で妻を追うのも保守的、旧習的な「女が投票するなんて」という意識からの怒りで、娘が母親を追いかけるのも投票によって女性の立場を変えれると信じたからかも。とにかく、描かれなかった手紙だが、これは一種のヒッチコック的な言い方をすればマクガフィン。妻が夫に嘘をつき旧習から抜け出させるものならば何でもよく、別に恋文でもよかったのだ。結果、それが女性の投票権だったことで、酷い男たちの姿がより際立って見えてくる。いかに投票が、選挙に参加することが重要なのか。いかに参政権が尊いものなのか。となれば、現代に繋げて、実際、いまの選挙の実態はどうなのか。おそらくイタリアに住むイタリア人ならもっと深刻な受け取り方のできる映画なのだろう。本作がイタリアで大ヒットというのは、そんなところに理由があるのかも。 では、遠く離れた日本人のわたしにとってどうだったか。きっと日本の政治家たちは劇中の男と同じぐらい酷いだろうな、と。娯楽作のふりをした見事な社会派作品だった。日本映画でもこのようなものを観てみたいものだ。
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