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鑑賞日 2024/10/06  登録日 2025/04/09  評点 70点 

鑑賞方法 選択しない 
3D/字幕 -/-
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妄想の迷宮

 周囲からTV番組のオーディションに出てみたらとノせられた男が、その気になるも採用されない。でもこれは自分がテレビ局に試されているのに違いないと思い込み、生活が徐々に手につかなくなっていく様子が何だか滑稽、かつちょっとコワさも感じさせるなかなか面白いアプローチの映画でした。
 まずはこれから童話が始まりますよ的なワクワク感を感じさせる長回しの演出がユニークな開巻が良い。新婚カップルを乗せた優雅な馬車が軽快な音楽にのって式場へと向かうシーンでどうってことがないと言えばいえるのだが心地よい。そこから始まるパーティの陽気さ、売れっ子芸人の独壇場を憧れのまなざしで眺める男・・・。
 監督は冴えない魚屋の主人公ルチャーノをピノキオに見立てているらしい。周囲の誘惑に簡単にノせられ危うい旅に出てしまうピノキオ。そんな童話ベースのストーリーらしい導入部。監督は後に「ほんとうのピノッキオ」を撮っているぐらいだから相当この話に思い入れがあるのだろう。
 映画も中盤、自分は芸人になるものという根拠のない確信に満ちたルチャーノが部屋に迷い込んだコオロギをじっと見つめるシーンがあったけど、あれはピノキオからの引用だったか?
 確かにルチャーノの勘違いぶりは誇張されているかもしれないし傍から観ると滑稽で思わず吹いてしまうのだけど、その後、まてよという気分にさせられる。こういう勘違いは誰しも多少なりとも経験したことがあるのではないかと・・・。笑いのあとに苦い思いが残るのもそういう体験が自分にもあるからに違いない。
 思い込みが過ぎて家族や友人からどんどん遠ざかっていってしまうあたりはちょっとしたサイコホラーふうな趣さえ感じさせた。妄想の迷宮に入り込み、そこで満足の笑みを浮かべる主人公のラストショットなどホラー的結末だった。