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悪い奴ほどよく眠る
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久しぶりの鑑賞。見応えのある傑作だが、演技の面で言うと当時49歳だった森雅之さんの変身ぶり、西村晃さんや志村喬さんの狂気ぶりが注目される。いわゆる黒澤組で多くの名作に出演してきている名優の凄まじい演技を目撃する。特に”悪い奴”の象徴として演じる森雅之さんがすごい。この人物だけに注目してもいい映画だ。 コッポラの「ゴッドファーザー」に影響したと言われる詩的な冒頭の結婚式シーン。待ち合いからエレベーターの前にスッと並ぶ関係者、そこにメディアが押しかけ、次に花嫁(香川京子さん)らが現れ、足をひきずる彼女をみつめるメディアの目線など、このシーンでどれだけ多くのドラマが凝縮されていることだろう。このシーンのラストに例のビルに花が刺さるケーキが運ばれ、森雅之さん演じる公団の副総裁の背後に置かれる。 サスペンスとしても際立った面白さだが、主人公の西(三船敏郎さん)の素性が語られるまで、ドラマは汚職の手先となって狂ってゆく西村晃さん演じる役人にフォーカスする。この人物がどんどん狂ってゆくまでの過程で、表情が著しく変化する。 森雅之さん演じる岩渕副総裁は、この映画の中で何度か見えない人物に電話で深々と頭を下げ、ラストシーンもまた印象的に頭を下げる。見えない人物に頭を下げる行為とは、その先にいる人物がどれほど神格化された存在かを示す。 西と親友の板倉(ふたりは戸籍を入れ替えている)が、廃墟で語り合うシーンに戦争の影が落とされる。黒澤作品で言うと「わが青春に悔いなし」「素晴らしき日曜日」「野良犬」などが思い起こされるが、この作品に至るまで、黒澤はシェイクスピアやドストエフスキーなどの古典を杭打ちしながら、戦後の荒廃をどこかでイメージしていたのではないかと思わせる。 戦後復興で汗を流した政治家や役人の立場を見せながら、その中でも悪い部分を露骨に見せつけることで、黒澤の正義を示そうという映画になっていると思う。加藤武さん演じる板倉が「これでいいのか!」と叫ぶが、この言葉は現代にも覆いかぶさってくる。西が愛した妻が狂っても、父親の岩渕が何かに操られ続けるという現実を憂う。
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