大阪府八尾市の生まれ。関西学院大学文学部在学中は演劇部に所属し、やがて本格的に俳優を志して大学を中退。上京し、演劇集団円の研究生を経て、1983年に渡辺えり子(現・えり)主宰の劇団3○○(さんじゅうまる)に入団する。同年、渡辺の作・演出による『瞼の母』で初舞台を踏み、89年に退団するまでの7年間の在籍期間で数々の舞台に出演する。退団後は、渡邊孝好監督「君は僕をスキになる」89で加藤雅也の同僚役で映画初出演。翌90年の北野武監督「3−4X10月」では沖縄やくざの若き組長役で、少ない出番ながらも印象を残した。次いで、劇団東京サンシャインボーイズの三谷幸喜による同名戯曲を中原俊監督が映画化した「12人の優しい日本人」91で、自称弁護士の陪審員11号をユニークな存在感で演じ一躍脚光を浴びる。92年は松岡錠司監督「きらきらひかる」でヒロイン・薬師丸ひろ子の夫で実はゲイの恋人がいたという岸田睦月役を好演。同年の根岸吉太郎監督「課長島耕作」では田原俊彦演じる主人公・島耕作を苦境に追いやるライバルに扮し、こちらも実は同性愛者という役柄だった。この年の活躍で日本アカデミー賞、ヨコハマ映画祭などの新人賞を多数受賞し、エランドール賞新人賞も獲得する。この間、テレビドラマでは、90年のフジテレビ『あいつがトラブル』の最終回にゲスト出演したのを皮切りに、NHK『赤頭巾快刀乱麻』91などいくつかに顔を見せていたが、92年のフジテレビの深夜ドラマ『NIGHT HEAD』に、生まれながらにテレキネシスがつかえる超能力者・霧原直人役で主演し、俄然注目を集めた。武田真治演じるやはり超能力者の弟とともに過酷な運命に翻弄される姿が熱狂的な支持を呼び、深夜枠にもかかわらずカルト的な人気を博す。94年にはテレビ版と同じ飯田譲治監督の手で映画化もされ、豊川にとっての最初の代表作となった。以後も、NHK『炎(ほむら)立つ』93、TBS『RUN』、フジテレビ『この世の果て』『この愛に生きて』94などドラマ中心に活躍。陰のある二枚目ぶりが評判を呼んで、より広範な支持を獲得していく。95年、常盤貴子を相手役に迎えた北川悦吏子脚本のTBS『愛していると言ってくれ』では聴覚障害者の画家という難役に挑み、ラブストーリーの主役ながらモノローグのみで台詞はなく、表情と身ぶりだけで感情を表現する圧巻の芝居を見せる。186cmの長身と野性味の中にも繊細さを感じさせる甘いマスクとで、女性週刊誌などでは“抱かれたい男No.1”などの称号を獲得。“トヨエツ”の愛称も定着し、スターの座についた。映画は、石井聰亙監督「エンジェル・ダスト」94、岩井俊二監督「undo」94などに出演し、前述の「NIGHT HEAD」と併せて、日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞を受賞。翌95年には「undo」に続いて岩井監督と組んだ「Love Letter」で、中山美穂演じるヒロインを愛し、亡き恋人の影を今も追い続ける彼女を優しく見守る秋葉茂役を好演し、報知映画賞助演男優賞、ヨコハマ映画祭主演男優賞に輝く。96年の市川崑監督「八つ墓村」では石坂浩二が当たり役としていた名探偵・金田一耕助を装い新たに演じ、70年代の人気ドラマをリニューアルした阪本順治監督「傷だらけの天使」97では真木蔵人とドジな探偵コンビに扮して、コミカルな芝居にも裾野を広げる。阪本とは続いて「顔」「新・仁義なき戦い。」00でも組み、ほかにも、山中貞雄の名作のリメイク「丹下左膳・百万両の壺」04、吉永小百合主演、行定勲監督の大作「北の零年」05、黒澤明の娯楽時代劇のリメイクで、オリジナルでは仲代達矢が演じた凄腕の用心棒に扮した森田芳光監督「椿三十郎」07など、多彩な作品群でその実力を見せつける。2010年、行定監督「今度は愛妻家」、平山秀幸監督「必死剣鳥刺し」の2作での演技が高く評価され、キネマ旬報賞、ヨコハマ映画祭の主演男優賞を受賞。テレビドラマでも活躍が続き、野沢尚脚本のTBS「青い鳥」97で、運命的な出会いをした女性とその娘を連れて逃避行に出る駅長・柴田理森を好演する。以後も、フジテレビ『危険な関係』99、TBS『Love Story』01、『エ・アロール』03、『弁護士のくず』06などに主演。11年のNHK大河ドラマ『江・姫たちの戦国』では織田信長を演じている。また、98年のテレビ東京の深夜ドラマ『つげ義春ワールド』では『退屈な部屋』『懐かしいひと』の2エピソードで演出を手がけ、監督業にも進出。以後もフジテレビ『美少女H』の第18話『父、帰る…』98、『世にも奇妙な物語・春の特別編』00の『冷やす女』、TBS『LOVERS』03の一篇『聖セバスティアヌスの掌』を脚本・演出、長篇第1作となるTBSの単発ドラマ『夫婦漫才』01では中山美穂を主演に、原案・脚本・演出をつとめた。