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福地桃子扮する高校生が、受験勉強第一で、好きな太鼓を禁じる母親によって心を閉ざしていくという過程が、表現として、いまひとつ弱い。ただ、OriHimeという実在するロボットを使ったところに新味がある。確かに、対人関係に困難を抱える者にとって、相手がモノならば、心のバリアーを解くことができるかもしれない。ただし、それが船中で取り違えた袋に入っていたことに、なんの疑問も持たないようなのは、気になる。「洗骨」が沖縄の離島、こちらは屋久島と、救いは南方にありか?
最初の、葬儀のお清めの席から帰る男が、残った食べ物や果物を一つ一つ求める、その間合いがなんとも可笑しい。それに堪忍袋がキレたかのように怒鳴りつける大島蓉子の伯母がいい。彼女は、その後も、現実に目を背けて酒に逃げる主(奥田瑛二)に代わって、バラバラになりそうな一家をまとめていくのだが、その佇まいや物言いが、沖縄には、こんなおっかさんがいるなと思わせ、楽しい。妊娠した長女(水崎綾女)が歩く道や、洗骨する海辺に南島の空気が感じられるのも良い。
双葉町の盆唄から、ハワイはマウイ島のボンダンスへ。歌と踊りが、太平洋を越えて出会うが、それは、ほんの序の口。本作は、盆唄を軸に、〈別れの磯千鳥〉や〈浜辺の歌〉、さらには〈ホレホレ節〉といった歌を招き寄せるばかりではなく、時空を往還して、ハワイの移民から相馬移民まで、さまざまな移民の物語を紡ぎ出していくのだ。それにより、原発崩壊で故郷を追われた人たちはむろん、さしあたって現在地に安住しているわれわれもまた、移民の末裔にほかならぬことに思い到るのである。
見終わったとき、思わず、この監督、ヘタッピー、と呟いてしまった。だって、そうでしょ。話は一応、ちゃんと出来ているし、キャスト陣は豪華で金もかけているのに、サスペンスも緊張感もほとんど皆無で、間延びしているのだもの。それを端的に示しているのが、江戸からの刺客の一群を片付けたあと、森山未來や佐藤健たちが、危機が迫る城を目指して一団となって走るところを正面からのスローモーションで延々と繰り返す画面だ。まるで城に行きたくなくて足踏みしているみたいなのだ。
日本の伝統楽器和太鼓とロボット工学の組み合わせ。この奇想は抜群なのだが脚本が弱く、段取りになってしまった観。傷ついた子供が屋久島にたどり着くまでが重要なのに何かおざなり。ただし、島を流れる川の有名な水の溜まりに少女が浮かぶ画面などヴィジュアルは見事なものだ。親友の自殺を抑圧的な母親のせいで救えなかった、という挿話が重すぎたのか。もっとさりげなくていいのでは。間違えてロボットを持ち帰ったのに何のリアクションもないし。普通は警察に届けると思うのだ。
沖縄の不思議な風習については岡本太郎がらみで私も知っていたが、現代のドラマで扱われるのは初めて見た。岡本の件も最近記録映画になったと聞く。それにしても女は強い、とつくづく思わせるクライマックス。生と死が断絶するものでなく、むしろ誰かの死によってもう一つの生が始まるといった感触を上手く出した。だから裏の主役と言うべきはアクシデンタルな浜辺での出産を取り仕切る大島蓉子、ということになる。逆に言うと男達の無能ぶりの描出もまた見もの。清々しい仕上がりだ。
試写状に福島とハワイの交流、とちらっと記されており最初にその件が描かれてしまって「もつのか、これ?」と危惧したわけだがもった、どころか大満足である。原発被災のせいで離散した集落、その絆を、盆唄と踊りの復活で取り戻す試みにカメラが密着。集落の起源をたどって北陸に舞台が飛んだり紙芝居になったり、意外な広がりを持つ。クライマックス、集落ごとに違う盆唄が立て続けに歌われる展開を聴いていると、赤の他人の私にすら、様々な感慨がこみ上げてくるのを禁じ得ない。
大映の旧「まらそん侍」リメイクかと思ったら違った。本邦最初のマラソンという実話にインスパイアされた原作からの映画化で大作路線。地方の小藩と、それを潰し飲み込もうとする幕府の駆け引きが根底にあり、賢い藩主の権謀術策が効いている。ネタバレなので多くは書かないが、潜入している幕府のスパイをあぶりだす、という目的故のイヴェントと分かる。出発地点でのキャラクターが走っているうちに(良くも悪くも)変化していく、これが見どころ。小松菜奈のお姫様もキュート也。
テーマと設定が先行して、演技や描写にかなりの歪さが生じて違和感が漂い続ける。ヒロインが太鼓好きだと言ってしまえばそれで済むわけではなく、継続した描写の中で厚みを出してくれなければ困る。ヒロインが母から太鼓を禁じられたのを苦にするほど太鼓好きには見えず。それゆえドローンを用いたギターと太鼓の競演も盛り上がるよりも強烈な異物感。ヒロインのひたむきさは悪くないが周囲の配役や台詞には首を傾げることが多く、殊に男優は誰も彼もが胡散臭い雰囲気を醸し出す。
監督は誰かと思ったほど短篇を作り続けていたことを不勉強で知らず、手堅い作りに驚く。すっかり鳴りを潜めた吉本の芸人監督だが、品川ヒロシと照屋が出ただけでも意味があった。沖縄の風習を軸にした家族の物語という枠組みは良いが、男たちが総じて直情的で感情にウラがない。鈴木Q太郎が登場するとボケを全て背負わせてしまうので均衡を崩し、せめて出産シーンなりで彼に与えるべき見せ場を奥田瑛二に譲ってしまうのは如何なものか。大島蓉子のハツラツとした突っ込みが出色。
声高に叫ばないのがいい。悲惨な状況を殊更に強調したり、無理矢理希望を持たせる作りでは白けるが、避難住民たちの達観した姿に寄り添い、先の長い道のりに少しばかりの明りを灯す。中盤のアニメーションで語られる相馬移民の挿話が、戦前のハワイ移民と現在の避難民に重なりあい、今もまた長い歴史の只中にあることを実感させる。唄で躍動させてきた中江裕司が撮ると俄然盆唄が際立つ。最初は普段のひっそりとした声から抜け出せなかった唄い手が、やがて大きな歌声を響かせる。
空転・失笑・豪華キャストの無駄遣い。原作未読だが「超高速!参勤交代」の作者だけに軽妙な語り口が相応しいと思われる題材を「ラストサムライ」風に描き、ペリーが少し顔を出す以外は日本人しか出ない話を英国人監督に撮らせて脚本や演出面でも好き勝手にさせては、破綻するのは必然。監督がアドリブを奨励したらしく、てんでバラバラの演技が散乱しまくり、竹中直人の悪ノリがとどめを刺す。同時期に同じ庄内映画村で撮影したのが「斬、」だと思うと、映画ってコワイですねぇ。