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とにかく、千原ジュニアが素晴らしい。それにヨヨ子に扮した平尾菜々花! 相手を見つめるときの彼女の目ヂカラもそうだが、子ども同士で遊んでいるときは、いとも無邪気な表情をみせる、その振幅に感心する。さらに、ぶっきらぼうな物言いの裏に愛を感じさせる婦人警官の優香。話としては、引きこもりに児童虐待に年金不正取得と、いかにも現代らしい問題が詰め込まれているのだが、それらを説明的にではなく、ジュニアと菜々花の血の繋がらぬ親子の結びつきの背後に抑えた演出がよい。
猫連れのロードムービーなら、のんびりしたお話かと思って見たら、イヤイヤ、あちこちにドラマが目一杯仕込まれているのに、ビックリした。猫が車に跳ねられるなんてのは序の口で、もっと深刻な交通事故もありの、悟という主人公の身の上に関わるドラマもありのと、ドラマのてんこ盛り。そのためか、最初にナナを預ける相手になる山本涼介と福士蒼汰の会話など、妙にボルテージが高くて鼻につくし、目の演技がやたら目立つ福士クンのアップも長~い。ともあれ、主役猫はご苦労さん!
上手になったね、三島監督。ミステリーとして凄いわけではない。だって、太宰の『晩年』の希少本を狙う男が誰かというのは、すぐ察しがつくのだから、謎解きにドキドキするというわけではない。主人公の祖母の秘めたる恋の話も、1964年当時の風俗を知っている者からすれば、衣裳を含め古風過ぎる(まるで大正時代みたい)とは思うものの、それらを重ねて話を運ぶ手際が、いとも鮮やかなのだ。野村周平のイノセントな青年と眼鏡をかけた黒木華の思慮深い女性の組み合わせもよい。
人は、老いたときに、持って生まれた資質や、それまでの暮らしの中で培ってきたものが、はっきりと現れるのではないかと改めて思う。認知症の母は、ヘルパーが風呂場の掃除を始めると、自分も手を出そうとする。そこに、それまで家事の一切をやってきた彼女の矜持がある。そのことに胸をうたれる。また、そのような妻の姿を自然に受け止め、自分で買い物をし、食事の支度をする夫の姿に、果たして自分はどうかと問われる思いがする。なんとも素敵な老夫婦と、それを捉えたカメラに脱帽!
良い話が嫌な話に変わり、また良い話に戻る。基幹は、誘拐犯と少女のつかの間の楽園暮らし。面白いのだがどう考えても設定に辻つまの合わない感じがあり、星を減らした。要するに「少女が実の親から虐待されている」と主人公が考える根拠のことだが、詳しくは書けない。各自ちゃんと見て考えてね。もう一人の少女がすうっと闇の中から現れるあたりの演出が凄いのだが。物語が終局、さっと十数年飛ぶ感じもいい。黙秘を続ける主人公に、成長した少女が会いに行く場面に涙があふれた。
猫好き必見。特に主人公猫がいわゆる美猫でなく、数年前から人気が出てきた「へちゃむくれ系」が微妙に入っていてポイント高し。猫の演技も自然。などとほめても本人には届くまい。声担当の高畑さんもキュートでいいんだが、他にも犬猫二匹が人間の声で出てくるのでやかましい、という感じも。主人公(人間の方)のパーソナリティにも嫌味がない。物語はネタバレ厳禁だが、普通に見てれば事情はすぐに分かる。友人たちはどうして彼の事情を知らなかったのだろう、と不思議なほどだ。
古書好き必見、とは書けないので星をつけられない。原作が好評らしいが、どこがいいのか分からない。魅力を捕まえ損なっているのか、ミステリーとして話が薄く、古書のうんちくも弱い。配役のゴージャスなのが救い。説話的には現代篇と過去篇が交互に展開され、共通する一人の女の秘密が暴かれる構成。夏帆は美しく撮れているが時代の雰囲気がヘン。東京オリンピックの頃とは思えないのだ。昭和初期っぽい。作ってる人、誰もそう思わなかったのかな。続篇を是非見てみたいシリーズ。
アルツハイマー型認知症になった母親と介護を支えるその夫を娘の映像作家が撮る。良さは身内が取材することで家族史になっているところ。三人家族それぞれの生き方や趣味が、過去に撮影された映像を交えて語られ、その中には乳癌治療の放射線で毛が抜けてしまう真っ最中の作家自らの映像も含まれる。セルフ・ドキュメンタリーは苦手な私だが、これくらい理性的、自制的な作りだと感服する。タイトルから分かるように、家族には未来がある。病者、介護者、地域医療のあり方が見える。
長らくオクラになっていたのが不当に思えるのは、映画俳優として正当に評価されているとは言い難い千原の魅力が映し出されているからだ。同じ疑似家族映画でも年金不正受給描写も含めて他人の子どもを連れ去って育てることに真摯に向き合っている点で「万引き家族」より良い。現代版『じゃりン子チエ』的な前半は、もっとハチャメチャでいいし、後半の展開は重いというよりも、設定が先立って描写として消化しきれているとは言い難く、映画の方向性を迷わせた感があるのが惜しい。
動物さえ出せば事足りると思っているような映画以前のシロモノが増えた上に、この原作者と監督なら覚悟して観ねばと思っていたら、意外や拾い物。平松恵美子の脚本が功績大と思われるが、設定は催涙映画そのものながら、新藤兼人が「ハチ公物語」で大船調の家庭劇を意図したように、本作も両親の死別から叔母の基で育てられてきた主人公の半生を松竹らしい家庭劇として描いたのが良い。回想場面に重みを置いた各挿話も充実。竹内と広瀬が出色だが、擬人化された猫の喋りは不要。
かつての角川映画が赤川次郎で作っていたような作品は監督の技倆がなければ成立しないが、前作でホンに恵まれて演出力を飛躍させた三島有紀子だけあって、ライトミステリーの理想的な形を見せた。鎌倉ロケと古書堂セットも巧みに接合させ、黒木の化粧っ気なく線の細いヒロイン像も繊細な演技で成立させている。チープになりそうな過去パートを東出によって重しにしているのも良い。ただし、危機の度に本が犠牲になることへ古書マニアのヒロインが悩む気配も見せないのは気になる。
TVディレクターの娘が両親を撮っただけに距離が近く、内外での表情の違いを含め老いと共生する姿を露悪的にならずに映し出す。洗濯物の上に寝転がる母の上を乗り越えてトイレに行く父といったカットは撮影者との距離が近くないと撮れまい。温厚な父がある瞬間に母を叱責する際の「仁義なき戦い」的な方言の活用が実に映画的な魅力を増すが、覚束ない足取りで生活する両親を引いて撮り続ける娘が思わずカメラを置いたり、フレームの外から手を貸したくなる瞬間も観てみたかった。