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やくざ稼業から足を洗おうとしている井上幸太郎演じる鳴海と組織や弟分との関係、さらに鳴海の息子と弟分の娘との関係などを、時間軸を前後させると同時に、登場人物の出し入れに工夫を凝らした構成から、綴れ織りのように浮かび上がらせる手腕は、香港ノワールなどを思わせて、なかなかなもの。ただ、取引の失敗や弟分の死など、常に自分の思惑とは裏腹に終わった末、鳴海自身の死に到る物語の流れが、いまひとつ胸に響かないのは、凝り過ぎた構成によるのかもしれない。
時代劇が似合いそうな面構えのカトウシンスケ君が、行き暮れて入ったソープ嬢の優しさに救われるなんて男の都合の良い幻想じゃないかと、話のとば口では引いたのだが、ソープ嬢を演じた藤崎里菜クンの艶技はもとより、日常の佇まいや物言い、表情を見るうちに、この人なら、無償の愛で、バカな男をも優しく包み込んでくれるのではないかと思い、俄然身を乗り出すことになった。だから、暮らしに慣れた男が彼女に辛く当たるのにイラつきながらも、どうしようもないとはこれかと納得。
開巻間もなく、新人検察官たちが、広いフロアーの片隅で理想の検察官像を語り合う様子をカメラで一撫でするような切り取り方には、またかと苦笑するが、本筋の話は面白い(雫井脩介原作)。辣腕検事に扮する木村拓哉と、彼を尊敬する新人の二宮和也に事務官の吉高由里子という三者に、歌舞伎風の隈取りをしているわけではないが、隈取り鮮やかといいたくなるような松倉重生と大倉孝二の被疑者に、松重豊まで加わってのバトルは見物だが、罪人には、当の検察官もという含意もありか?
車狂の間では垂涎ものかもしれぬスポーツカーの走りは、確かにスピード満点だが、それに較べて物語の展開は、メリハリを欠いて緩い。そんな車を走らせる主人公を、やくざが弟を殺された恨みで追うというのが本筋だが、追われる者と追う者の距離感が曖昧なままなので、サスペンスを醸し出さない。主人公が路で出会った女に導かれて行った地方都市の、カラオケ以外何もなさそうな風景とか、その土地にへばりつく悪ガキグループとか、突っ込めば面白くなりそうな部分もあるのだが。
面白いのだが脚本が馬鹿な若者カップルに無駄に甘い。これが致命傷、星が減った。最後の仕事に失敗して人生設計が狂うヤクザの一日という映画的定型を、時制をシャッフルさせて、一年以上前からの因縁がらみで描く。主人公が意外といいヤクザなのは映画だから許せるとして、用意周到なのか無防備なのか、今一つはっきりしないのがヘン。普通、極悪な組長に対してこそ人は周到になるのではないかな。彼のつめの甘さと物語がシンクロしてるな。潜入捜査官のキャラクター設定も甘いね。
ピンク人脈的なエロ映画には時々傑作が出現する。見ていて私もしっかり泣かされた。人生を捨てて京成立石に迷い込んだ男の再生の物語。この地の有名な飲み屋街もちゃんと出てくるし(ただし人はいない)、昭和末期的な外景の佇まいも嬉しい。気のいい娼婦と敗残者というありがちな設定でも、男のあがきっぷりに妙味があり、観客もこの男を見捨てる気にはなれない。格安ソープ嬢(本人いわく)と隣室の高級キャバ嬢の対比もよく、わけ分からんうちに4Pになっちゃう場面も最上だ。
これだけ話がずさんだとさすがに厳しい評価となる。過去に囚われる人物像というのは映画的なものだが、この主人公には実際のところそうあらねばならない理由がない。彼の固執の意味をわざわざ太平洋戦争の傷跡にまで持ってこようとするのも、かえって言い訳めいた印象だ。また友人が冤罪がらみで自殺したことから正義派ジャーナリストになっちゃった、というヒトが出てくるのだが、こういう偽善にはついていけない。偽善者として描かれるならまだしも。最後もお粗末な仕掛けの対決。
主人公の二人組はルックスもキャラも抜群。なのだが、いかにも途中から途中まで、という作りの感じで(事実そうなのね)残念です。こういう趣向は波岡一喜の闇金業者(「闇金ドッグス」シリーズの常連)に関しては有効、さすがの貫祿。問題は兄の復讐のために主人公を追いつめるヤクザの存在であり、どう決着がついたのか説明不足なのだ。波岡の件は次作に持ち越される。これは自然。主人公が乗り回す車が一方の主役であり、ディテイルでお客さんを満足させてほしい。次に期待したい。
ロケ地からして東京というより〈横浜ノワール〉だ。「竜二」よろしく、やくざを辞めたいやくざの話だが、低予算で作る場合はリアルな生活のディテールなり、演技に新たな基軸を見つけなければ、やくざ映画もどきにしかならない。指を噛み切るのも「アウトレイジ ビヨンド」にあったことを思えば、自由に作っているからこそ出来る描写が見たい。章立てにしたり、時制も前後させているが低予算で大きなウソをつくための手法とはならず、因縁話を噛んで含めるような効果しか感じず。
たまたま入った風俗店の娘が優しくて性格も超イイ娘で、失意の底にあった男が彼女の家に転がり込んで始まる再起の物語だが、60年代のピンク映画みたいな古色蒼然とした話を戦略もなく繰り返す。この監督は前作の「チェリーボーイズ」といい時代錯誤な映画ばかり撮って良いのか? 案の定、ヒモの分際で増長して彼女へ八つ当たりを始め、それでも彼女は気丈に男を立てようとするいじらしさを見せたりと、カビの生えたテンプレ描写が延々と続き、付き合い続けるのに努力を要する。
原田眞人だけあって個々の俳優たちを存分に際立たせ、ダイナミックな演出が随所に用意されて見応えあり。いつもと違って尺が2時間強なのでタイトな展開で息をつかせない。少なくとも映画では全く良いと思ったことがなかった木村が見違えるような演技を見せ、実年齢に沿った中年男を悪目立ちせずに演じていて見惚れさせる。中盤に訪れる二宮の大きな変化やクライマックスが呆気なく処理され、もう終わりかと思わせる忙しなさに余韻が欲しくなるが、観ている間はひたすら乗せられる。
脇に配されたネチョネチョ生きることを選んだチンピラたちが良い。「893愚連隊」の現代版の如く、やくざにならずにリーダーを総理と仰いで組織されているあたりも目配せが効いている。同作の天知茂のように主人公が愚連隊へ合流する構成も手堅く、中島貞夫の教えを受けて監督になった中でも最もプログラムピクチャーに近い位置で量産する元木隆史の面目躍如な70分。気弱な役ばかりでなく変幻自在になってきた駒木根隆介の愚連隊リーダー役がカンロクと優しさを併せ持ち出色。