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女性納棺師の話といってもなあ、すでに「おくりびと」があるからね。どうしても、二番煎じという印象は拭えない。描く世界が狭いだけに、なおさら。そのぶん、高島礼子演じる納棺師も、文音扮する弟子も、それぞれ心に深い傷を負っているという設定にすることで陰影をつけようとしているのだが、それが弱い。残念ながら説明に流れてしまっているのだ。それを超えようとしたためか、二人のアップがやたら多い。アップは困ったときだけ、という吉村公三郎の教訓は、とうに忘れられたか。
明るい笑い声が、ひときわ印象深い。冤罪で、短い人でも17年6カ月、長い人は48年、獄中に閉じ込められていた人たちが、かくも明るく笑っている姿に、思わずこちらも微笑みたくなる。だが、それだけの時間を獄に繋がれている自分を想像したとき、慄然とする。差別意識と思い込みで自白を強要した警察と、それを追認した検察、裁判所に対し、沸々と怒りが湧いてくる。そんな怒りや絶望も、彼らは獄友を得ることで乗り越え、いまの笑いがあるのだろう。彼らには一日も長く生きてほしい。
これは、はじめのほうのサイモン(阪本一樹)が、ただボーッと立っているだけにしか見えないからかもしれないが、とにかく前半が緩い。それを救っているのが、須賀健太(タダタカシ)の動きだが、それでも、彼がやってくれるかもしれない女を捜しに行くところまで、ジリジリさせられた。面白くなったのは、チャリに乗ったヤンキーが登場してからだ。なぜか、田舎町にUFOが出てくるのも悪くない。それが、まるで肛門からひり出すようにヤンキー娘を吐き出す場面には、大いに笑った。
レイプ被害がいかに酷いものかを明確に示すために、主人公の主観にそった撮影を試みたということだが、これは、最初に高校生の主人公が集団強姦をされるシーンでは、効果をあげている。のしかかる男の顔も定かには見えないまま犯される恐怖や痛みが、リアルに迫ってくるのだ。ただ、それだけでは映画は出来ない。そこで、自分を見るもう一人の自分(高校生)を設定せざるを得なかったというのは、一つの工夫だろう。内容とは別に、それは改めて映画における視線の問題を浮上させた。
納棺師という職業はすっかりおなじみになった。こちらでは死化粧エキスパートとして描かれている。葬儀の式次第との関連が弱いのは意図的な処理なのかな。エピソードが七つと盛り沢山、かつ師匠と弟子にもそれぞれ死者をめぐる事情がある。監督はてきぱきとさばき飽きさせないが、かえって芯がない印象に。ただラストの挿話で分かるように、ヘヴィーになりがちなところを明るい旅立ちとして解釈する姿勢に救われる。表情のクロースアップが多すぎるものの、氷見の風光明媚さで相殺か。
タイトルは冤罪で長年月にわたって囚われながらも、何とか社会復帰を果たした五人の絆を指す。私の世代には狭山事件裁判への思い入れが特に強い。しかし本作で最も強烈なキャラクターは袴田氏である。この人の言語能力には独特なものがあり、ちらっと出てくる彼のノートに見られる造字が凄い。巖という漢字を基に新たな漢字が作られ、延々と綴られているのが見所。ただし彼は明らかに刑務所で神経を病んでおり、それが露呈する会見の場面は恐ろしい。ラストに引用される文言も良い。
男が男を好きになったり二人で旅に出たり、という物語は普通に面白い。どっちの俳優もいいし、片思いのシチュエーションが胸キュン感覚。出発点はね。ところが青春ロードムービーを存分に演出して下さい、というこちらの願いが途中から打ち砕かれ、結果評価不能の仕上がりに。よく考えたらトイレの落書きに電話しちゃう、しかもそれがつながるという初期設定自体そもそも妄想的なのだが、途中からいたずらに妄念が肥大して現実を侵食し、実写ですらなくなってしまう。ある意味凄い。
題名はレイプ被害者の心の叫びだが「レイプ犯は全員皆殺しだ」という復讐犯罪映画じゃない。凌辱される場面から彼女の自己分裂が始まり、主観ショット(による物語描写)と彼女を見下ろすもう一人の彼女(の独白)で画面が構成されていく。斬新なコンセプトであり、凝ったミラーショットも冴える。こういう珍品は多くの方に是非見ていただきたい。ただ物語は雑。実話だから許せるという線だね。まさに冬彦さん、としか言いようがない佐野史郎もいいが、隆大介の刺青者が絶品である。
極妻・高島で〈女おくりびと〉という発想は二匹目のドジョウ狙いとしては正しい。女賭博師などと同じ迫力で女納棺師(これだけで生計が立つのか)を屹立させる。単なる異業種モノに堕することなく、弟子入りした若い女が幼い頃に両親を事故で失くした記憶を引きずる核心部は、結婚を控えて同じ悩みを持つ弟も絡めた重層的なドラマを期待させるわりに弾けないのが残念。恩師の死にはしゃぎすぎる教え子たちの挿話以外は、死を深刻めかしすぎることもなく均衡の取れた描き方に好感。
フィクションなら冤罪で刑に服した男たちが集まって裁判官への復讐を企てるところだが、現実の彼らは旧交を温めて懐かしく獄中時代を語り合う。倒錯的な光景にも思えるが、生涯の大部分をそこで過ごしただけに出所した刑務所の矯正展に懐かしそうに出向くのも、無実だからこそ純粋に回顧の念を催させた行動なのだろう。「ショージとタカオ」のその後も描かれるが、袴田さんの顔の変化に代表される彼らの顔を正視する視点が際立つ。まるで顔を見れば分かると言っているかのようだ。
友情でも同性愛でもホモソーシャルでもない、男同士の同伴感覚がズレも含めて心地良い。アニメ、ジオラマの導入は珍しいとは言えないが、奇をてらうためではなく本篇の進行上に不可欠なパーツとして実写部分とフラットに接続されて、奇想を堂々と用いることが出来る。円盤を登場させたり、果てしなく逸脱しながら何でもありの収拾がつかなくなることもなく、自分の色と商業映画と折り合いをつけて見せる辺りはPFFスカラシップから園子温、矢口史靖以来の大物誕生を予感させる。
雪中で拉致暴行されたヒロインが逃走する冒頭からして往年の若松映画を想起させるが撮影も若松プロ出身の高間賢治。白川和子と美保純の母娘に吉澤健、川瀬陽太が脇を固めて新旧ピンク勢が揃うのは壮観だが監督に意図があったとも思えず、主観多用の撮影も手法ではなく手段が先走った感。旧家の娘が地方から都会への進学を機に転身を図って過去と向き合う古典的な劇の構造に演出が追いつかず。出色は隆大介。繊細かつ大胆に演じる姿はインディペンデント映画での活躍を期待させる。