パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
最初からアニメーションの企画として始まっているものを、だから良かったね、というのも妙なものだが、それが正直な感想。これが実写だったら、まともに付き合うのが辛かったろうと思う。架空の町に実在の場所を取り込んだ背景にしても、これをロケでやろうとしたら大変なことになるし、登場する7人の女の子にしても、生身の女優だったら、それぞれのキャラの違いを出せなかっただろう。話のポイントはミニFMにあるが、アニメならでは威力が発揮されたのは、寺での合唱シーンだ。
瀬長亀治郎の存在は知っていた。但し、1970年に沖縄初の衆議院議員となり、国会で佐藤首相などと渡りあっていた頃のことで、それ以前の、米軍統治下の沖縄での闘いについては、恥ずかしながら、本作で初めて知った。人民党事件で2年間投獄され、1956年、那覇市長になると、高等弁務官の布令で被選挙権を剥奪されて追放されること10年に及んだことも。映画は、そんな瀬長の「不屈」の精神は現在の沖縄にも生きていると告げるが、それを見るヤマトへの問いかけが些か弱い。
三島監督のこれまでの作品とは、面目を一新するような映画であると同時に、浅野忠信の従来のイメージを一変させる映画でもある。ということは、シナリオをベースにした両者のコラボレーションが、見事に結実したということでもある。血の繋がらぬ二人の娘のいる家庭に、新たに子どもが生まれる。そこで物心ついた長女のわだかまりが、改めて家族の繋がりとは何かを顕在化させる。原作由来のやや図式的な展開が、子役を含めた俳優陣の十分に肉化された演技でリアルな家庭劇になった。
山から湧き出る水の流れ。それが豆腐屋の水へとつながり、その店先を少女が駆け抜け、自転車に跨がり走り出す。そのリズムが心地よい。実際、彼女が自転車を駆る姿は、終始、躍動的でいいのだが、彼女に絡んで、酒造所が管理していた水の権利を一手に握って外国の資本に売ろうと画策する男の行動が、ひどく短絡的なのが問題。チンピラを使うよりアタマ使えよ、と言いたくなる分、物語としての緊密さが欠けてしまうのだ。青春映画らしく少女を走らせるためには、わかりやすいけれど。
いいんだけどね、何かそれ以上ではない、という印象が残る。テーマが言霊、と最初に分かった分、最後の流れ方とオチまでそれで分かってしまうというか。ただしコミュニティのFM放送というツールは面白い。またクライマックス、境内のコンサートで歌い手から次の歌い手への受け渡しを丹念にショットの連鎖で構成する絵コンテの手際の良さは認めたい。だが物語の展開は粗い。大事なことを知っていて、それを皆には知らせず、知られると逆ギレし開き直るキャラってどうなんでしょう。
原発は過疎地域に丸投げし、基地は沖縄に押しつけてこの半世紀空前の繁栄を享受した民主主義国家日本。カメジローさんの告発は自分じゃ血を流さずに民主主義に鞍替えした日本国民に向けられてもいるわけだ。それにしても誰もが起立して国家に忠誠を誓っている時に一人だけ座っていられる人は、それだけで尊敬に値する。次回紹介する「禅と骨」でも同じことを思った。冷戦構造が解消した今、米国の不安は、中国が沖縄を奪取にくるという強迫観念にある。この世に心配の種は尽きない。
悪い人ではないのだが内面にどろどろしたものを抱える前妻寺島しのぶと、一見底意地悪そうだが実は単に天然で、悪意が微塵もない現妻田中麗奈の対照が効果を発揮し、どこにでも転がっている状況ではないのに、夫なら誰にでも覚えがある感情が呼び覚まされる。つまり、夫になれても父親になれる気がしないという感じ方。妹が生まれたら自分は捨てられる、という長女の不安はこの偽の父親の心の底にある感覚に同調している。斜行エレベーターのロケーション・センスも抜群で感激!
監督の二人乗り自転車趣味が本作でも炸裂、入れ替わりがいいアクセントになっている。また弓矢に彼女の心情が乗り移るクライマックスも優秀な段取りと言える。水はみんなのもの、というのはいかにも富士山伏流水が自慢の山梨県映画らしくて正しいものの、話が凶悪的にデカくなり過ぎた。同じネタを暴力なしでやれたらその方がずっと楽しいに決まっている。それに書き直された遺書のありかが不明というコンセプトは現今さすがに成り立たない。子供じゃなくその道のプロに託しなさい。
これが今のアニメなのだから、どうこう言う方が野暮というものだろうが、いきなりクライマックスみたいに主題歌が流れっぱなしのアバンタイトルで独り合点な台詞を主人公が鐘の中に頭を突っ込んで叫んでいたりすると、もうどう観ていいのやら。全篇にわたって主人公の思慮がなさすぎて愛嬌のあるバカに思えず。コトダマの連呼といい、葛藤となるべき箇所を尽く台詞で済ませてしまう作劇といいLINEでライブ配信が出来る時代にミニFMを使う話を作る戦略も見えず疲弊困憊する。
映画に政治を持ち込むなと言い出す者が増え、過去と今が断絶した本土で暮らしていると、冒頭の米軍が水陸両用車で上陸する戦争映画の如き現代の光景からして過去との距離が一気に縮まる。引退後、95年の沖縄米兵少女暴行事件について亀次郎がどう反応したかを証言ではなく、妻が詠んだ詩で見せるのも良い。山崎貴は出光創業者の半生を描くなら、沖縄戦、収監、刑務所暴動、闘病を潜り抜けて国会に行った亀次郎を劇映画化すべきだろう。これこそVFXで再現する価値がある。
初潮を迎える少女が義父の存在と、両親の血を分けた新たな家族が加わる事実への嫌悪を抱き始めるという動物的な話を、困惑する父の視点から描いているのが良い。人工的な住宅街と無機質な職場の往復という無菌室的な世界が広がり、いっそう〈少女と血〉が際立つ。終盤の豪雨で物語を集約させる構成も素晴らしい。娘たちも良いが、浅野の新たな代表作だろう。田中にはもう少し嫌らしさも欲しかったが、それは男目線か。荒井晴彦の秀作シナリオに演出で拮抗した三島有紀子を見直す。
映画24区が量産する地域振興映画だが、冨樫森だけあって相米譲りの自転車のシーンはハツラツとする。主人公は「犬神家の一族」の島田陽子みたいな状況に突然置かれ、かなり強引な理由で水源所有権を相続することになるが、遺言状のくだりはごく簡単に紙を見せて説明するだけなので弱く、一族郎党に「なんであの小娘に!」と言わせるぐらいでないと以降の展開が厳しい。豆腐と水と弓道を強引に掛け合わせて成立させた感。豆腐屋の古めかしい自転車に2人乗りする場面が良い。