パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
まあ木村拓哉も、隻眼、顔に刀傷をつけてのチャンバラ・アクション、よく頑張っている。その周りを、仔犬のように、といっちゃ可愛そうだが、赤い着物で走り回っている杉咲花も、柄にあっている。だが、わたしが一番感心したのは、虚無僧姿で登場する市川海老蔵の声だ。歌舞伎役者だから当然と言われるかもしれぬが、この役のために声を作っているのだ。それに較べると、敵役の代表に扮した福士蒼汰の声は、地声のままか、いかにも弱い。ただ、人の数をやたら多くするのはどうかね?
有森也実演じる、四十路とはいえ世間知らずの女教師が、そのナイーブさゆえに、神のお告げに誘われて、お宝探しの旅に出る。が、それは、煉獄巡りとでもいうべき苦と快があざなう縄のごとく絡まる旅であった。と、こちらも監督の力技に惹かれて、香具師めいた口上になるが、これが面白い。リアル政治のパワーゲームもあれば、犬に変身する王子との官能的な交合もあり、戦争もありと盛り沢山なのだが、わたしは、柄本明の最期に、由比忠之進さんのことを思い出し、しばし瞑目した。
喪失感を抱え、潔癖さのために世の中の当たり前が信じられず、その虚しさから身を守るために言葉を連ねる女と、他人に対しては間歇的に饒舌になりながら、自分のことに関わる言葉を発しない男。そんな二人が、喧噪に満ちた都会の底ですれ違う。それを緻密に設計された対位法と反復によって描くことで、事件らしい事件などないのにサスペンスを孕み、見ているわたしたち自身に、彼女と彼が正面から向き合うことを切望させる。新人・石橋静河と彼女を輝かせた池松壮亮に乾杯!
リセットとか記憶操作とか能力コピーといった、それ自体、画になりにくい話を一所懸命、映画にしようとしている点を買って、前篇の点を甘くしたが、後篇は、その弱点がもろに出て惹かれるところ皆無。話だけは、一応、前篇を引き継いでつながっていくのだが、画面としては、同じような絵柄の繰り返しで、前篇に巻き戻したかと思った。いっそ話を絞って1本にした方が退屈せずに見られただろう。まあ、このような話を映画にするには、よほどの工夫が必要という教訓にはなるけれど。
監督のノーテンキが良い方向に出た。冗談に近い大殺陣が痛快なのだ。丹下左膳というより無用ノ介みたいな隻眼の浪人木村が仇討ちに加勢する、というのが物語のメインで、この人「体内に仕込まれたヘンな虫のため絶対死なないはず」という設定。まあこの世に「絶対」はない。瀕死のボロボロ状態を何度も経験し、要するに浪人が意外と弱いのがミソ。最終対決相手福士の仕官話というサブストーリーが良く、罠と復讐の波状攻撃がごっちゃに混ざるややこしい作りをスマートに演出する。
人獣婚姻譚という意味、要するに「八犬伝」だね。全四部作、実質前後篇。長いが、前篇は壮大なる序章という感じで後篇ようやく面白くなる。齢とって良かった、と思うのは貧乳と熟女AVを許せるようになったこと。許せるというか好み。だから有森さんが出し惜しみなく脱いでくれて万々歳である。犬にはあれが正常位。神話的古層と虚構的現在、二つが戦争を軸に結合する構成なのは悪くないが、表現は舌たらず。ロケーションも凄いし、そうなると前篇田舎風景の弱さが露呈する感じか。
詩集が原作というのは十分セールスポイント、別に登場人物が詩人というわけではない。原作を活かした独白のせいで「妙にカラむ女だなあ」という第一印象になったのは失点だが、その骨太美女が「青春の門」の頃の杉田かおるに似ているのは気に入った。もう一方の言葉が空回りする若者と娘との恋以前の恋というコンセプト。というか、昨今のこの手の物語には珍しく肉体関係がないんだよね。労働現場のストレス、ワーキングプア、孤独死と暗い話題が多いが暗い映画じゃないのを評価する。
前篇を受け入れない人はこっちは見ないだろうが、こっちの方が面白い。最初から問題になっていた平祐奈の溺死の真相が明らかにされる。それがトリックと密接に関わっているので、観客はつじつまが合っているのか今一つ納得しないままカタルシスを得ることになるのだ。主人公を巡る美少女二人の確執も陰険じゃないのが嬉しい。超能力者と管理者の抗争が鍵で、及川ミッチーがその悪玉側の首領。青春SFミステリーというジャンルに不案内な私だが大いに満足。番外篇を期待して加点。
原作は未読。丹下左膳を黒澤時代劇風にやるのかと思ったが、残虐描写も「用心棒」同様の手首切断ぐらいでは物足りない。無国籍風だけに戸田恵梨香の衣裳以外の官能不足も含め、ジャンゴ的なノリが三池映画ならもっと欲しくなる。主人公が自然治癒能力を持つせいか、簡単にやられてしまうが絶対絶命に陥らないと分かっている話に140分は長い。「湯で沸かす~」で好演した杉咲は甲高い声で叫んでいるばかりで、木村の一本調子の声と共に久々に〈声が悪い〉と思わせる映画を観た。
長尺映画とはいえ四章からなる本作は演出力で突っ走るタイプの作品ではない。第一章のハイテンションな有森也実が日常を投げ打って猪突猛進してゆく姿は園子温的な力技が無い分、空回り。二章の島の選挙戦も同様だが、これが無人島に向かう三章から俄然、映画が熱を帯び始める。現実社会の中で虚構を描こうとすると引っかかっていたものが、自然の中では小手先の誤魔化しも効かず、俳優たちの力が存分に発揮され、獣姦も、PANTAと緑魔子のアングラ芝居も全てが成立してしまう。
現代の東京のディテールが丹念に描かれるが、20分経ってもどういう話なのか不鮮明。ようやく動き始めてもそこで提示される労働、貧困、独居老人、地震、原発、放射能と、まるで社会問題の全品総ざらいで、最終的に挨拶しましょう、いただきますを言いましょうと教育映画的なメッセージが残される。ストリートミュージシャンを野嵜好美に演らせたのは面白いが励まし系の単純な歌詞に苦笑。それでも本作が忘れ難いのは石橋静河の圧倒的な存在感にあり。今年の新人賞は総ナメだろう。
前後篇映画は余計な説明なしで突っ走ることができる前篇のみが快走することが多いが、本作は基本設定の周知に前篇を費やした分、後篇になって黒島と平の硬質な台詞も活かされ、ジュブナイルとしての魅力が発揮された感あり。最大の功労者は例によってこの人さえいれば困難な実写化もなんとかしてしまう及川光博。主人公らと対決する際もナメてかからず、拙い演技も全て受け止め、この徹底した虚構の世界を信じ切って演じてくれるので魅力に欠けるロケセットすらも輝かせてしまう。