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マンガ的な面白さはあるんだけどな。たとえば、スレイブヘッドというヘルメットをかぶると、ナビゲーターの声が聞こえて、スキャニングカメラの作動法を指示したり、スキャニングされそうな相手が、それから逃れようと金槌で顔を隠したりするようなところ。バカバカしいといえば、バカバカしいのだが、それを大真面目(?)にやっているところは買える。ただ、主人公やヒロインの妄想が反転して、この世界が現出するという話の骨格は、ありがちで、もっとぶっ飛ぶ手はなかったか。
最近、この手の前後2篇に分ける作り方が増えているようだが、どうなのか? 物語の長さから必然的にそうなる場合を除いては、興行側の思惑からきたとしか思えない。本作にしても、話をきっちり詰めれば、二時間程度の映画に収まったのではないか? そう思うのは、回想シーンがやたら何度も繰り返されるからだ。そこまで念押ししなくても、事故で天涯孤独になった主人公には将棋しか頼るものはなかったというのは、わかるって。将棋だけでなく家族の問題もあると言いたいのだろうが。
三村順一監督が、『花と龍』を撮りたいというのは、よくわかる。本作の道臣は、『花と龍』の玉井金五郎の血脈を受け継いでいるように見えるからだ。この映画は、そこに到るまでの道筋を描いた私小説ならぬ私映画という趣がある。といって、いわゆる私映画的な独善はない。むしろ、ここで何か異変が起こると感じる所では、その通り人が死んだりするからで、それは往年の娯楽映画を思わせる。ただ、エンディングがややしつこい。ソニー・ロリンズでもあるまいに。といっても、通じないか。
二〇一五年に発生したネパール大地震の震源地といわれるラプラック村の震災後の人々の暮らしや、チベット古来のボン教の死者送りや祭を撮ったドキュメンタリーだが、まずは、アシュバドルという少年やその妹のプナム、彼らの家族、看護師のヤムクマリという人たちの顔や日々の行動が、生き生きと捉えられている。わけてもプナムの笑顔が素晴らしい。と同時に、空撮で捉えたこの村の遠景やヒマラヤの山並みが、彼らが生きる大地を、もう一つの視点から捉え返すようで印象深い。
ネタばれ厳禁で多くは書けないが、こういうスーパーヒーロー物の自己言及というコンセプトは昔の学生映研作品に時々あった。インテリ好みの難解なテーマで、話が入れ子的に解体再構築される趣向が今でも十分面白い。それと一時期話題になった『ドラえもん』幻の最終回に似たテイストもある。しかし物足りない。エピソードは多いものの基本アイデア一発だから途中で飽きる。実は主人公が二人なので、そこを利用してもっとややこしい謎解きのような構成にしてくれたら良かったのに。
岩松了が「キリヤマ君キリヤマ君」と言う度に『時効警察』を思い出し、笑ってしまったがこっちの桐山は天才棋士。大友監督、久々に肩ひじ張らない演出が快調だ。アニメっぽいキャラと素顔の俳優を活かしたキャラを混ぜ込んでいるのもお楽しみ。声に無頓着な観客だと染谷に気づかないのではないかな。天才の孤独というテーマは重いが、家族との確執と同時に自分で師匠、佐々木蔵之介を見つける成長物語が盛り込まれ、とても好印象。悪女有村架純に当方のM心もくすぐられてしまった。
悪くないのだが星が伸びないのは、監督を思わせる主人公と彼の帰郷とが何か、あまりに現実そのまんまな感じになっちゃったこと。ご当地映画というジャンルは好きなのだがむしろ観光名所映画に傾いている。景色も良く、気骨ある方々も多く登場し、それらを知る地元民はダイレクトに楽しめるものの、部外者には辛い面がある。もう一人の主人公である、監督の旧友の死のいきさつも今一つ弱い。これなら暴力に訴えた方がお互い良かったのでは。彼の非暴力の理由はちゃんとあるのだが。
ネパール大地震災害支援映画だが堅苦しさはない。首都から離れ、孤立した地域に歩を進める監督(本業は報道カメラマン)はむしろ思いがけずシャングリラに迷い込んだようなものだ。山岳地帯独特の、高低差がそのまま過酷な生存状況になっている集落を描くロングショットと、そこで風土に寄り添って暮らす人々のいわばクロースアップ。二つを同時に味わえる。こういう映画を見るとやっぱり子供は宝だねえと思う。ここまでドローンを駆使した撮影は世界映画史的にも貴重な成果である。
しまだゆきやすという主人公の名は自主映画団体を主催し、井口らのプロデューサーでもあった故人に因んでいる。監督自身の願望を映画の中でなら実現できるという井口映画の欲望開放空間の中で彼が生を取り戻したことを感慨深く眺める。御都合主義が活用されることで説明のための無駄な段取りを省き、描くべきものだけを抽出して次々に重ねていくアッパー感は、乗り損ねると形骸化して見えるかも知れないが、「東京战争戦後秘話」をヒーローもののスタイルでリメイクした感もあり。
昨年の監督作2本が凡作だったので期待薄だったが、ドラマと将棋盤を囲む動かないアクションを鮮やかに両立させている。秀作「聖の青春」が先行して分が悪いのだが、実際に増量した松ケンと特殊メイクの染谷が象徴するように映画化へのアプローチが尽く対照的なのが良い。漫画的な過剰さを活かし、盛り込みすぎると思うほどドラマを作りながら、演出は逆に抑え気味にすることで絶妙の調和を見せている。奇をてらわない対局描写、神木は当然、ビッチの有村、担任の高橋一生も出色。
故郷で不慮の死を遂げた親友の軌跡を追う映画監督という私小説風の作りに大杉漣の振る舞いも相応しく、風景も様々なロケに重用されるだけのことはあるので眺めていて飽きない。台詞ではフィルムを称賛しつつ、本作も劇中で上映される映画もデジタル上映なので興が冷めるのは兎も角、地方発映画なのでロケ地や地元の顔出しが優先されたと思しい停滞する場面が出てくる。その分、若き日の吉田栄作が鉄砲玉になるきっかけや、後年夜回りで若者に刺されても逃してやる心情が手薄に。
スマホの設定に写真の前後2秒ほどが音声付き動画として見る機能がある。それと比較するのは失礼というものだが、石川が普段撮る写真の前後の十数秒が動画になっているかのような豊かな表情、風景に魅了される。映像作品になったことで、カメラを挟んだ石川と被写体との関係性の距離が露わになったのを盗み見ている気分を味わう。今の日本にも通じる震災後の状況がいたましいが、「バンコクナイツ」の楽器を持った人々が連なる行列の様に、ここでも伝承された儀式に圧倒される。