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手で触れて、そこに残された思念を読み取って推理するというのは、ミステリーの新手と言うべきか。まあ、映画は小説と違って、物証による推理で見せるものじゃないから、これでOKなのでしょう。ただ、野村萬斎扮するスキャナー探偵を、失踪したピアノ教師捜しに引っ張り出すまでの導入部が、くだくだしくて長い。もっと歯切れ良くいかんものかね。話は捻ってあるから最後まで見せるが、養子というのが、何故か一人ならず出てくるのには、作者に格別な思いがあるからなのか?
アクション映画なのに、間延びしている。まず、テラフォーマーを殲滅するために火星に送り込まれているくせに、こっちから攻めずに、向こうが来るのを待っている。その待ちの姿勢がまだるっこしい。また、昆虫細胞活性剤でパワーアップするときに、元の昆虫の説明が出てくるのは、ご愛敬で悪くはないけど、彼ら隊員たちの出自というか、地球でどんな暮らしをしていたかを画にして見せるのは、なんともウザい。どうせ金目当ての喰い詰め者なんだからさ、そんな説明、いらないっての。
三上寛がパンティを飲み込もうとしたり、真理アンヌが吉澤健の股間を杖でつついたり、往年の俳優たちが楽しそうに(?!)演じているのに、大西信満だけは、生真面目な顔を崩さない。それは、黒ずくめの少女の謎に引き込まれたからだろうが、その謎が明かされるとき、彼は、映画愛ともいうべき、撮ることに憑かれた者の罪に目覚めるしかない。映画作りは罪作り? ここに監督の映画に対する批評を見るのは、読み過ぎか? とまれ大西がフィルムに巻かれて絶命するショットは秀逸。
ギャグからナンセンスへと飛躍する一九六〇年代後半の赤塚マンガは、本当に凄かったし、そこで開かれたアナーキーな地平は、他には見られぬものだった。それに対して、この映画、「マンガも面白いが本人はもっと面白い!」というのだが、どうかなと、ちょっと首を捻ってしまう。確かに、彼はマンガ以後、安吾の言う「娯楽奉仕」の精神で跳んで見せたのだろうが、その内実を解き明かすには到ってない。あと気になったのは録音。せっかくの証言が聞き取りにくい所が少なくなかった。
物体に秘められた残留思念を読み取る超能力、サイコメトリーを描いた場面がある映画といえばリチャード・フライシャー監督作「絞殺魔」。これは六十年代に米国で起きた、俗にいう〝ボストン絞殺魔事件〟を題材にしているが、この事件の捜査にピーター・フルコスなるサイコメトラーが協力したという史実もあった。映画「絞殺魔」のフルコスは奇人ふうであり、能力発揮のため手がかりを揉みしだく。「のぼうの城」ではウザかった野村萬斎の存在感は本作ではその線でいい感じを醸す。
もともと三池崇史は、なんとかマン、的な映画の監督かも。実際「ゼブラーマン」「ヤッターマン」がある(「FULLMETAL極道」も)。本作は様々な昆虫の能力を持つ改造人間らがバトる、〝仮面ライダー〟の変奏みたいなもの。重要そうなキャラが即死することもある三池セオリーがまた原作漫画設定にもフィットし、期待させるが、いまいち跳ねない。延々と虫能力対決をやること(新堂冬樹「虫皇帝」シリーズを参照)と、SF映画的なネタや伏線を孕むことが相殺したような。飽かさせず見せるが。
佐藤寿保は女を犯して殺して死姦してそれを映像に収め、見せ続けてきたが、個人的にはピンク四天王(佐野和宏、瀬々敬久、サトウトシキ、佐藤寿保)のなかで観る機会が少なかった監督(統計的証拠はないが九十年代自分がいた関西で上映少なかった?)。ずっと寿保作品を街場で不意に出くわす体感を伴って観る時期を逸した気がして残念だったが、本作の終盤はそれをもたらしてくれた。胡乱な部分もある。しかし今回の本欄のフィクション映画のなかで最も挑み、観る価値がある映画。
アニメ×ドキュが良く、楽しく観られた。監督冨永昌敬の過去のアーティストドキュメンタリー「庭にお願い」「アトムの足音が聞こえる」より格段に監督の存在が透明になり、かつ主人公となる人物の物語とエモーションは大きく濃密になっていて素晴らしい。ラスト、タモリがU-zhaanの演奏で歌う。ハナモゲラ語でインド風で題は『ラーガ・バカヴァット』。聖者の旋律、みたいな意味だが『天才バカボン』に仏語の、放浪者vagabondが重なるのと同様、バカの至高性が謳われた。泣ける。
元お笑いコンビによる〝スキャナー芸〟。野村萬斎と宮迫博之、二人が演じる対照的なキャラを軽妙な語り口で際立たせてゆく、「探偵はBARにいる」に通じる導入は心踊る。ピアノ教師の失踪事件を残留思念からいかに読み解いてゆくのか、興味を掻き立てられた。が、真実に近づくにつれ、次第に興が醒めていってしまった。病弱な少女と元気に遊ぶ子供たち、という昭和を思わせる設定も、真犯人の心情も、オリジナル脚本ならではの時代性に乏しく。唯一期待通りの萬斎節は堪能できたが。
強くて巨大な謎の生物と人間の死闘を描く本作、かの「進撃の巨人」と並び称される宿命を帯びているわけだが、こちらの方がより漫画的な思い切りがよく、細かなツッコミを入れる隙もない軽快すぎる展開と共に気楽な気分で堪能できた。歯が立たない敵に立ち向かう絶望と無力感こそ「進撃~」原作の肝でもあるが、本作の映画版はそのあたりをさらりとかわす。火星における人間のクズVSゴキブリの戦い。「ゴースト・オブ・マーズ」を撮ったカーペンターのリメイク版も観てみたい気が……。
人間のどうしようもない欲望を、閉館間近の映画館が醸す悲哀とつきせぬ映画愛に絡め描き出す、究極の〝裏「ニュー・シネマ・パラダイス」〟。閉館直前の古びた映画館に謎の人物(?)が棲息し、そこで働く者たちが惑わされてゆく。基本の構造は、広島の映画館を舞台にした「シネマの天使」と変わらないあたりもまた、興味深い。その意味では本作も、映画愛を基盤とした純然たるファンタジーと呼べるのかも。劇中劇「激愛」の、「気狂いピエロ」を思わせる煩悩弾け散るラストに戦慄。震えた!
赤塚不二夫がいかに偉大なる漫画家で、愛すべき人物だったか。盛り沢山な内容で余すところなく掬っているが、ややメリハリに乏しく、一ファンとしては食い足りない思いも。破天荒ながら根はピュアでシャイで真面目だったという核はわかるが、酒に溺れ、破廉恥の限りを尽くし、バカに染まろうと死に物狂いであがいた絶頂期を過ぎた後の人間・赤塚不二夫を、もう少しヒリヒリと感じたかった。映画を一分もはみださぬ至極真っ当なドキュメンタリー。いや、でも、これでいいのか?